3.1.4 曲型、箱型
曲面上の型当て位置での形状を与える型である。
折れ角度型は、特に精度を必要とするときに作成する。[図3.1.9 折れ型]に、その例を示す。面と面の角:つまり型当てが垂直のときは、角部が図のように両当り面が段になってよいが、線と線の角:当て位置があるときは、角部は当板をして面一(つらいち)でないといけない。さきに木型は、一般に鎧(斜め重ね:クリンカー)張りにしないとしたが、それはマーキン用の場合であって、曲型補強のためのタスキ(筋交い)などは、鎧になってもよい。
図3.1.9 折れ型
外板三次元曲げでは見透型[写真3.1.1 外板見透型]を、曲面成型に必要で十分な最小限の位置を選んで作成する。3枚では、縦(シーム)方向が3点曲線で不足、5〜7枚を標準とする。もっとも一般的な木型なので、[図3.1.10 外板見透型の作成手順]を掲げておこう。
写真3.1.1 外板見透型
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図3.1.10 外板見透型の作成手順
縦曲が端部(バット寄り)で急にキツクなる板では、部分的に縦曲型を作って支給する。[図3.1.11 タテ曲型]に示すように、当縁を削り合せとせず、断続した「角出し(つのだし)」とすると作成が簡単になる。角出し型は、マーキン型の「当り付け」に相当し、Fc.PLなどの緩やかで撓みやすい部材の面外曲げにも適用している。
図3.1.11 タテ曲型
Fc.PLやFB.では、両端の取り合いから、平捩となる部材がある。特にダブルハルのサイドロンジでは、ランディング如何によっては、インナーとアウターのフランジトップを結ぶFB.に軒並みに発生する。この曲型には[図3.1.12 まな板型]に示すような台所の「まな板」に似た型が使われる。その両方の歯に相当する端部の捩じれが精度上大事だからである。この歯を対称に差し替えるようにすれば、P/S部材に兼用できる。
図3.1.12 まな板型
外板肋骨の曲げがキツイ場合に、撓鉄定盤にジャッキ止めして、焼きながら水圧シリンダーで押して曲げる工作法がある。このとき定盤に曲げ形状をあらかじめマーキンしておくが、この定盤マーキン用に[図3.1.13 バッテン型]が作られる。枝節のない木目の通った杉板引き割りを、バッテンのように現図床に止め、木型に組み込むので、この名がある。型は、床から外したときのバッテンの反発力に耐えるように、充分に筋交いをいれて固めておく。
図3.1.13 バッテン型
船首尾端外板のように、複雑で急激な曲面部分の曲げ加工には、箱型を立体的に組み立てる。[図3.1.14 箱型作成要領]に示すように、型の当り縁に倣い開先のような板削り作業が発生しないよう計画的に型板逃しに留意し、粗曲型作成も織り込んで、両舷を作成する。[写真3.1.2 箱型]は、その一例である。
図3.1.14 箱型作成要領
写真3.1.2 箱型
演習題:−
木型の作り方で、鎧張りは、マーキン用には困るが、曲型ならよい。なぜか?
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3.1.5 鋳物型、現場型取り
鋳物部品の完成形状を与える鋳物型は、[図3.1.15 鋳物板図]に例を示すように、製品検査や現品計測する断面位置を詳細に明示する。
鋳造は誤差を伴うので、鋳物尺といった延尺など適用して、鋳型は変形させて作られるが、特に要請がないかぎり、板図にそれを反映させることはない。
板図といっても、かつての慣用語で、フイルム原寸図が取り扱いに便利である。
図3.1.15 鋳物板図
現場型取りは、大型鋳物や焼鈍構造物の完成最終誤差を、現図を修正して現品に合せるため行う。
現尺現図手作業の場合を、船尾骨材断面を例にして、[図3.1.16 現場型]に、その要領を示す。
対象物の基準面(この例では 面)を水平に据え、「水盛」と「下げ振り」で、空間関係を押さえて、「当り」または「差越し位置」を拾うのであるが、この現場合せ型は、事前に作製しておき、現場では墨を付けるだけにする。
これもあらかじめ準備した定規を使って、計測断面位置を定盤(地)面上に描く作業から始め、戸外では陽光による昇温時の作業を避けて、手早く短時間に完了させるのが要点である。対象物の据付や所要の足場などは、前日に完了しておくのである。
当然に、トランシットによる計測と数値計算で、このめんどうな型取りに代えることができるが、これまでは光学機器の操作に慣れないためか、実施例は少ない。
図3.1.16 現場型
現場型取りによる現尺線図の修正については、本書の範囲外とし、別冊にて説明する。修理船での、凹損外板取換えなどの現物合せも同じ手法である。
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