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2.1.9 開先および差越
 溶接取り合いとなる部材端の仕様を「開先」と呼ぶ。開先は、その取り合い目的から、板継:突合せ溶接と、T取合:隅肉溶接とに大別される。
図2.1.16 開先の種類]参照。
 
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図2.1.16 開先の種類
 
 突合せ溶接開先は、溶接方法と板厚から基本形状が決まり、その形を英文字になぞらえて、I、V、Y、Xと4区分している。
 X開先には、突合せ端にI部:ルートを持つダブルY(Y2つの1つをひっくり返して足元で繋いだ形の)開先を含む。
 これに板厚差の逃し方:裏逃げ、表逃げ、振分け・・・により、サーピンが組み合わされ、4×3=12の形状パターンとなる。
 
 隅肉溶接開先は、取り合い角度から溶接脚長の相当開先が決められ、裏当金わかし込みを加えて、5パターンとなる。
 
 開先角度の指示には[図2.1.17 開先角定義]に示すように2通り:−
●開先内角:θ
●板端内角:η
があり、切断機器の火口角度目盛ゲージは、このどちらかになっている。統一しようとすれば、どちらかのゲージを取り替えなければならない。
 設計図示は、溶接所要角:突合せ溶接は2θ、隅肉溶接ではθであり、θの方が一般的のようなので、本書もこれに倣うことにする。
 
図2.1.17 開先角定義
 
 こうすると全ての開先形状は、[図2.1.18 開先形状指示]にて規定できる。
 部材内に示されたTi深さだけ、部材外に記された角度θiの開先を取れ・・・その積み重ねで開先全形状を指定するのである。
 
図2.1.18 開先形状指示
 
 この規定の[上面=マーキン面]としての表示例を、[図2.1.19 開先表示]に示す。
 順次説明すると:−
#1:さきに例示したように直切、板継ではI開先である。指示量が多いので、コの字型とせず、外として機械加工の[仕上げマーク」を援用した。
#2:上面V開先。
 マーキンを意味する頭文字:Mを、マーキン面位置に記入、上面を明示する。
 このサーピンなしV開先のみ、角度指示がなければ、30度と解釈する。
 (一般的で量が多いので、デホルト:指示省略とするのである。)
 したがって突合せ手溶接開先角Vが50度の造船所なら、25度と読み替える。
 
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図2.1.19 開先表示
 
#3:下面V開先。要領は#2に同じ。
#4:ルート3の上面Y開先。
 θ=0は角表示ナシとする。
 #2で記したように、サーピンなしV開先以外は所要角は必ず表示する。
 よしんば一般的な30度(または25度)でも省略しないのに注意。
 また、板厚=20、ルート=3、ゆえに開先深さ=20−3=17・・・と判るが、これも省略せず確認のため表示する。
#5:#4と開先面が逆の表示。
#6:上面サーピン付I開先。
 サーピンは、頭文字Sで所要部に示し、標準テーパー角(例、1対4=72度)でよければ、どの場合もデホルト。
#7:#6の逆、下面がS。
#8〜21:以上の説明の応用で判る各種V、Y、XダブルY開先。
#22:最も複雑なケース、両面S付ダブルY(厚板ユニオンメルト)開先。
#23:開先ではない。伸しのところで説明した「荒切り」符号。
 
 開先切断後の精度確認に用いるためとして、切断線に平行に「差越」が設けられることがある。[図2.1.20 差越]参照。
 差越寸法は、一律に50とされる。
 この目的は、あまり明確ではない。切った後は「あとの祭り」で、どうするのだろう。むしろ開先切断するときの参照(レファレンス/ガイド)線としてなら意味があるが・・・。
 
図2.1.20 差越
 
演習題:−
●どのような場合に差越が必要か。例えば、S付X開先(#17、18)の火入れ順とX先端の精度は?
●必要な場所に差越線を記入するのは現図(型定規)か、それとも(切断場に隣接する)マーキン職か?
  







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