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2.1.7 切残し:ブリッジ、タブ
 「伸し」ではないが、部材の一部を次工程の必要のため切り残すことがある。この切り残しは、用済み後「予定線」位置で仕上げ切りされる。
 型定規への表示は「荒切り」に準ずる。
 その一つ、ブリッジの例を[図2.1.11 スロット補強ブリッジ]に示す。
 
図2.1.11 スロット補強ブリッジ
 
 比較的浅いウェブに深いスロットを切り開けてしまうと、
1)切断熱でウェブが平面的に変形する
2)切り出したウェブが弱く、吊り上げ運搬時に空間的に変形する恐れがある。これらの変形を防止するために、スロットの一部を「橋」状に切り残すことがある。「ブリッジ」の語源である。このブリッジは、小組立でウェブがFc.PLと組付けられて強くなった時点で、切り捨てられる。
 この場面も、ブリッジなど残さず、
1)の平面変形に対しては切断完了後に補正、
2)の立体変形は、起こらないように吊り治具を用いてパレットに載せる・・・など配慮する方法もある。
 このような補強ブリッジの要否判断は、現図工程では明確にしがたく、所要後工程からの図面事前検討に基づく、都度の具体的要請に委ねるのがよい。
 
 なお、ブリッジの用語は、切断の中断、つまり部材を・・・ではなく、切断線の一部を切残す方法にも拡張されている。この意味の方は、NC切断でトーチ保護のため開孔を切り離さない時などに使われる。この問題には、本書では範囲外として立ち入らない。
 
 もう一つの切残しは、タブである。板継溶接の始終点は定常条件にないので、取り除くのがプラクティスとされる。その取り除き部を指す。
1)ユニオンメルトに代表されるような自動溶接の適用では、一定量の始終点の延長は不可欠の条件である。このため[図2.1.12 板継自動溶接のタブ]に示すように、
 
タブピース取付
 
荒切端タブ兼用
 
タブ残し仕上
図2.1.12 板継自動溶接のタブ
 
●タブピース取付:−
 別途に溶接専用の補助金物を準備しておき、始終点に取付
●荒切端タブ兼用:−
 部材端が荒切で、伸し寸法内に所要タブ長が収まれば、更なるタブは不要
●タブ残し仕上げ:
 部材形状をタブ付にして、仕上げが適用される。
2)手溶接では、タブは必須条件ではない。始終点はビードを上手く盛り上げられれば、問題はない。ただ、タブがあればあったで溶接は容易、安心ではある。
 したがって、タブ残し仕上げが適用される部分があれば、それは他の目的と抱き合わせのようである。例を[図2.1.13 切口合せタブ]に示す。
 
図2.1.13 切口合せタブ
 
 この例では、別部材に半裁されたMH相互の接続が目的であろうが、狭い囲閉された中にあり「タブなし」としたい。切口が僅か食い違ったとしても、いずれグラインダー掛けの時、軽く削り合わせれば済むことである。MH形状には、普通さほど厳密な精度は要求されない。
 
 以上、切断の位置:トーチ経路、伸し、仕上げ・・・などの工作法と表現につき述べた。
 次は、その位置での切断(端)面の詳細に入ろう。
 
2.1.8 サーピンとルートギャップ
 厚さの異なる板継では、
●突き合わせ溶接の施工のためと
●強度上連続した緩やかな断面変化を与えるため
 段差部に[図2.1.14 板厚差テーパー]のように傾斜を設け、これを「サーピン」と称している。
 
テーパー要領例
 
板継位置から
 
開先肩から
図2.1.14 板厚差テーパー
 
●テーパー要領例:−
目的からは、なだらかな方がいいが、切断ガス炎の能力から図のような1対4程度の傾斜が実用上は限度で、板厚差:δ>3mmくらいで押さえている。この例は板継がI開先なので、サーピンは:−
●板継位置から
 取るが、開先があると、この要領では溶接中心に対称にならず、サーピン側の開先の肩が上がる。そこで位置を:−
●開先肩から
 に移動している。この方が開先形状指示も判りやすいが、サーピン取りは開先取りの前に板厚面から火をいれるので、板厚差より若干深いところから切り込むことになる。
どちらの位置からでも実用上は同じとしてよい。
 
 同じく板継で、溶接方法の必要上ルートギャップがある場合、[図2.1.15 現図のルートギャップ量]だけ開先部切断位置をひかえる。この量は、溶接指示ギャップ量の半分である。一般の突き合わせ手溶接V開先では、3mmギャップが標準とされるが、手作業現図では半分のギャップ量1.5mmは精度誤差範囲として無視している。裏掘裏溶接のできない突き合わせでは、裏当金を設けてわかし込むが、このギャップは逆に広めに取っておく必要がある。
 
図2.1.15 現図のルートギャップ







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