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ISO/TC 8/SC 1及び同WG
国際標準化機構/船舶及び海洋技術専門委員会/救命及び防火分科委員会
第8回 東京会議出席報告
 
財団法人 日本船舶標準協会
 
まえがき
 ISO/TC 8/SC 1の第8回会議が、傘下の作業委員会(WG)とともに2002年4月17日(水)〜19日(金)に、東京都三鷹市の独立行政法人 海上技術安全研究所において開催された。
 同会議では、これまで審議してきたISO/CD 24408(位置表示灯の製造時試験)、ISO/CD 24432(袖付保温具)、ISO/CDAM 7061(乗下船用はしご装置)ISO/CD 22488(消防員装具)、ISO/CD 23269 −1、−2 & −4(呼吸具)等のとりまとめ、及びエアロゾル消火装置等の新たな規格作成作業など、盛りだくさんの項目について審議が行われた。
 そこで、これらの国際規格案等に日本の意見をできるだけ反映させるべく、本会救命部会長の長田 修氏、防火専門分科会長の吉田公一氏(海上技術安全研究所)、救命部会委員の太田 進氏(海上技術安全研究所)の他、救命部会委員、防火専門分科会委員及び船上消防員装具専門分科会委員、並びに関連製造業者の多数の方々に同会議に御出席いただき、また日本船舶標準協会からも参加したので、ここにその結果を報告する。
 
1 開催日程
 SC1及び同WG会議は次の日程により開催した。
 
4月17日(水) 4月18日(木) 4月19日(金)
WG1 (09:00−18:00)
WG3 (09:00−18:00)
SC1(09:00−10:30) WG1 & 2 (09:00−12:30)
WG3 (09:00−12:30)
WG1 & 2(11:00−17:30)
WG3 (11:00−17:30)
SC1 (14:00−17:00)
 
2 開催場所
独立行政法人 海上技術安全研究所 会議室
〒181−0004 東京都三鷹市新川6−38−1
 
3 開会
 SC1議長Claudio Abbate(伊)が、第8回SC1会議の開会を宣言した。また、会議開催のための事務を担当した(財)日本船舶標準協会及び会議場を提供した独立行政法人 海上技術安全研究所に対し謝辞が述べられた。また、開会に当たって、SC1会議を主催した(財)日本船舶標準協会有川専務理事より挨拶があった。
 
4  出席者
 今回のSC1及びWG会議には、イタリア、アメリカ、デンマーク、イギリス、スウェーデン及び日本の6ヶ国、又SC1の連携機関としてIMPA(国際パイロット協会)、IACS(国際船級協会)、ISO/TC145/SC2(図記号専門委員会/安全認識・図記号・記号及び文字分科委員会)の代表、合計42人が出席した。(詳細は添付資料2及び3参照
 
5 決議起草委員会委員の設立
 Mr. C. Abbate及びMr. K. Heinz (SC1事務局)を今回の決議起草委員会委員に選出した。また、決議は英語のみとする旨に合意した。決議36参照
 
6 議題の承認
 議題案について審議し、6としてリエゾンの検討を(文書SC 1 N 138:添付資料1の議題6以下の議題番号を順次繰り下げる)、8.9としてエアロゾル消火設備の審議を、8.10として火災制御図の審議を追加した。その他の議題はN138のとおり承認した。
 
7 SC1事務局からの報告(添付資料4参照
 SC1事務局のMr. Kurt Heinz(米USCG)から、前回のコパンハーゲン会議以降の作業状況について、以下の報告があった。
 
7.1 ISO規格の発行状況
 SC1事務局から、次のとおりISO規格が発行された旨報告があった。
・ISO 15738(膨張式救命筏のガス膨張設備)
・ISO 17631(船上の火災制御図、救命設備配置図及び脱出経路図)*
注*:ISO 17631は、CD−ROMによる電子版が入手可能である。
 この規格についてはIMO−FP 46でMSC/Circular案が作成され、さらにIMO−DE45にて救命設備に関する事項が追加された。
 なお、このMSC/Circ案は後日、IMO−MSC75にてMSC/Circ.1050として発行された。
・ISO 17339(生存艇及び救助艇のシーアンカー)はISO中央事務局により発行準備中。
・その他、編集上・図表上の最終調整を残すのみで近々ISO/CSに提出予定のものが数件ある。IMO/MSCで改正が提案されていたため審議が中断していたAmendment to ISO 799 Pilot laddersは提案が拒否されたので、ISO規格審議再開が可能となった。ISO 799の技術課題が解決されたので、これに関連するAmendment to ISO 5489もCDとして回章される。
・ISO 16848 Pilot accommodation laddersは、図の若干の修正を残すのみで事実上出来上がっている。
 
7.2 ISO規格作成・改正作業の採択状況
 以下の5件をSC1の新たな作業項目に加えて作業を進めることを承認した。
(1)船上安全表示記号の一般原則(ISO/AWI24409)
(2)位置表示灯の製造時試験(ISO/AWI24408)
(3)ISO 7061(乗下船用はしご装置)の改正
(4)船上の呼吸具(ISO/AWI23269−1〜−4)
(5)保温具(ISO/AWI24432)
 
7.3 エアロゾル消火設備
 前回会議ではCEN/TC 191がISO/TC 21(消防器具)と協力して、エアロゾル消火設備の規格を作成中である旨が紹介され、ISO/TC 8議長のCapt. Piersallより、IMO−MSC/Circ.を補完するものとして、こうしたISOの規格の要否の検討が依頼された。また、Capt. Piersallは、ISO規格が必要な場合、IMOと繋がるISOの委員会であるTC 8が用意すべきとの考えであった。この件については、専門家の出席が無かったためコペンハーゲン会議では進展がなかった。そのため、Capt. Piersallは、Mr. Don Murray of Ansul/Tyco(主要な製造事業者)に、規格策定の要否の検討を助けるため東京会議へ出席するよう依頼した。
 
8 リエゾンの検討
 吉田公一氏が提案したTC 92(火災安全)とのリエゾン(添付資料5参照)については、TC 8/SC 1側は仮にSC 1事務局の Heinz氏をリエゾンオフィサーとし、ISO/TC92とISO/TC 8/SC 1の間のリエゾンを取ることになった(TC 8の承認を前提として)。
 なお、TC 92側は、同SC 1議長のスンドストルーム氏(Dr. Sundtröm、スウェーデン火災試験所)がリエゾンオフィサーとなるであろうと考えられる。
 Mr. John Creak(TC 145/SC 2のリエゾンオフィサー)から、ISOでは、図示シンボル(Graphical Symbols)は如何なる場合でもTC/145が作成することになっている旨が指摘され、暫定的にMr. Giovanni Delise(伊)をリエゾンオフィサーとして、TC 8の承認の後、TC 145/SC 2と今後リエゾンを取ることにした(TC 8の承認を前提として)。
 リエゾンについては決議37を参照のこと。
 
9 WGの報告(SC 1事務局からの報告を含む)
9.1 WG 1救命設備及びはしご作業委員会
(1)乗下船用はしご装置(添付資料69参照
 この規格については、我が国はJIS F 2621(船側はしご)をベースに、ステップの最大幅を350 mmにすること及び鋼製のものを含めることを提案し、日本意見は採用されてCD 7061が作成された。DISにするための投票の段階では、鋼製の装置を含めるための規格の修正案を示す必要がある。
 
(2)位置表示灯の製造時試験(添付資料1012参照
 ISO/WD 24408(位置表示灯の製造時試験)を検討し、CD 24408 を作成した。
 原案については独から多くの詳細なコメントがあったが、大半は採用されなかった。今後、試験の際の電線の取り付け位置等で、議論が紛糾することも予想される。規定が詳細に過ぎるようにも感じられるため、もっと大まかな規定にすることも含め、試験時の電線の取り付け方法等について、我が国でさらに検討することも考えられる。
 
(3)保温具(添付資料1315参照
 保温具については、まず、我が国の投票結果が正しく報告されていなかった(我が国はNWIPに反対した)旨を指摘し、「袖付きだけを扱っており、袋型が扱われていないこと」及び「LSA Codeにない事項を多く取り入れていること」を反対理由として述べた。
 これに対して米国及びデンマークは、LSA Codeにない機能を有するものを標準にしたいとの意志を述べた。その結果、以下の修正を行うことで合意した。
・表題を単なる「保温具」とせず、「袖付き保温具」とする。
・Scopeを修正して、いわゆる「袋型保温具」の規格では無いことを明記する。
・LSA Code以上のことを要求している旨を明確にする。
 こうしたより多くの機能を要求する保温具の搭載を求めるか否かはIMOで決定すべき問題であることが確認され、この規格が作成されてもISOとしてIMOに保温具の要件の改正を求めるものではないことを確認した。即ち、LSA CodeやMSC 81(70)の改正はISOとしては要求しないことを確認した。
 WDが詳細に見直され、CDが作成された。CDをDISにするための投票の時点でコメントを求められている事項及び指摘すべきと考えられる事項の案は以下の通りである。
・縫い目については、さらに適当な規格を捜した方が良い。
・4.5項の色
・4.8項の再帰反射材
 その他IMO基準やISO規格との関係がさらに論じられる予定である。
 
(4)生存艇等の生存用具(survival equipment:添付資料16参照
 LSA Codeとの関係が分かり難いため、規格にある品名とLSA Codeで要求する物の名称の関係の表を設けることとなった(LSA Codeにも、名称にブレがある)。その後、各用具について、何を規定すべきかを中心として検討した。
 WGでは、各用具の検査(間隔等)にも言及していたが、ISO規格に検査に関する事項を盛り込むことは適当でない旨を我が国が指摘し、検査に関する事項(検査指針)は単なる情報としての付録(Informative annex)とすることになった。
 本件については、SC1事務局がWDとともにNWIPを回章することとなった。
 コメントを求められている事項及び指摘すべきと考えられる事項の案は以下の通りである。
・ボートフック:重量も大切であり、我が国も検討する必要がある。
・缶切り:布を傷めない要件をどうするか?
・コンパスについては、現在の規格にも問題がありそうなので、検討を要する。
・部分閉囲型救命艇のカバーは、不要とも思われ、検討を要する。
・飲料容器:最低容量を決めるかどうか検討中。適宜コメントを要する。
・消火器:サイズや数については、注意を要する旨を指摘した。さらに検討を要する。
・釣り具:釣り具としてのナイフの追加。魚釣りのインストラクションの追加が検討されている。我が国でも検討を要する。
・Heaving line:投げ易さ、引き易さ、強さの検討を要する。用途も明確にする必要がある。
 
(5)火工品(添付資料17及び18参照
 ISO/DIS 15736(火工品の製品試験)は、英国の修正提案を全て受け入れた。
 
(6)LSA Code 等の不具合
 DE 43/WP.6は、LSA Codeや関係試験法において、さらに検討すべき詳細をまとめたものである。この文書がIMO−DE小委員会で審議されないことについて、何人かの代表は遺憾の意を表明した。
 WG1は、この問題は至急検討されるべきとの認識であったが、ISOはIMOに議題を提案する権利が無いこと等が確認され、何ができるかの検討に時間を費やした。ISOではこうした議論があったこと、ISOは検討する用意があることについて、DE 46にInformation Paperを提出してはどうかとの議論があった。関心のありそうなIMO−DEのメンバーに、本件を議題にするのに必要な提案を行うことについて打診してみる旨、事務局から申し入れがあった。
 
(7)その他
 MESの通信手段(シューター等の使用の際の船上とプラットホーム間の通信手段)については、WG1としては作業をする予定ではあったが、主体となる者が決まっていなかった。今後は、MESの灯火と、信号設備(音声だけの通信では問題があると考えられているため)について、NWIPの候補として、引き続き検討することとなった。
 
9.2 WG 3 防火設備作業委員会
(1)議題の承認
 コンベナーが以下の議題について検討することを提案し、一同了承した。
・消防員装具(CD 22488)
・船舶配置図面用防火構造記号(CD 17338)
・呼吸具(WD 23269)
・救命防火機器の表示
・エアロゾル式消火装置
・火災制御図(ISO 17631)
・次回WG3会議
 
(2)消防員装具
 CD 22488の投票(SC 1/N 133:添付資料19参照)に対して各国から出されたコメント(添付資料20参照)について、逐次検討した。
 特に、ドイツ及びオランダから、陸上消防隊用の消防員装具に関する欧州標準(EN standards)がすでに出来上がっているため、TC 8/SC 1にて本件ISO規格作成の必要はないというコメントに対しては、CD 22488ではEN Standardに対して相当の技術的な変更が加えられた要件が導入されているため、TC 8/SC 1にて規格作成が必要であると結論された。
 規格の中身について日本案を基にEN規格も視野に入れて審議し、規格案を修正した。
 検討の結果、次の投票は2次CD投票(2nd CD 22488)とするよう、SC1事務局に提案することとなった。
 
(3)船舶配置図面用防火構造記号
 前回会議にて作成したCD 17338 の内容を調査・確認し、タスク・グループが早急にDIS投票を行うための原案を用意することとなった。
 
(4)呼吸具(添付資料2125参照
 日本が準備してきた以下のパートの23269 原案について、検討した。
 
(a)WD 23269−1 非常脱出用呼吸具
 SOLAS条約の第II−2章の改正(2002年7月1日発効)によって船舶に搭載が義務付けられる非常用呼吸具の当規格案については、循環方式の米国のものと空気ボンベ式の日本のもの2通りの製品がある。船上における環境及び緊急使用時の乱雑な扱いにも耐える仕様とすることが原則合意され、その上に立って強度要件(落下試験を含む)及び性能要件が検討された。プロジェクト・リーダーはCD案を用意し、CD 23269−1として投票にかけることとなった。
 
(b)WD 23269−2 消防用呼吸具
 火災時の消火作業に従事する船員のための消防用呼吸具の規格案では、周囲のガスを吸引しないよう最大の配慮を払う方向で検討された。また使用する材料についても火災時を考慮した耐火性を持つべく、規格案が検討された。プロジェクト・リーダーはCD案を用意し、CD 23269−2として投票にかけることとなった。
 
(c)WD 23269−3 IBC及びIGCコード対応の消防用呼吸具
 本件については審議時間が無く、次回会議に検討が延期された。
 
(d)WD 23269−4 IBC及びIGCコード対応の非常脱出用呼吸具
 基本的にWD 23269−1と変わらないことから、プロジェクト・リーダーはWD 23269−1に関する審議経過を踏まえてCD案を用意し、CD 23269−4として投票にかけることとなった。なお、IBC及びIGCコードの要件を入れて、呼吸可能時間は15分間とすることとした。







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