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4.2.4.2.2 物理オブジェクトのクラス
 プロセスプラント、建造物および装置のような設備を詳細に設計したり、それを運転もしくは保全する上では、それらプラントや装置のライフサイクルを通して使用される対象となる全ての物理オブジェクトを識別することが、先ず必要になる。
 Classes of physical objects は、物理法則に従うオブジェクトである。物理オブジェクトはそのものが何であるかを、オブジェクトの物理的なアスペクトを考慮して定義しなければならない。Artefactに対して、そのアスペクトは意図されたロールを満たすようにする必要がある。
 どのクラスも1ケもしくはそれ以上の、そのクラスのメンバーが共通であるアスペクトに則って定義がなされなければならない。物理オブジェクトの正しいクラスのクライテリアというものは、もしその様なオブジェクトが意図したロールに使われてないとしても、そのアスペクトからそのクラスのメンバーであると結論することが出来る。
 例えば、扁心リデューサは、”リデューサ”を特殊化した物理オブジェクトのクラスであって、形状アスペクトの立場から定義されている。
 物理オブジェクトのクラスを区分けするのによく使われるアスペクトのタイプには次のものがある:
1. Intended role or function - e.g. heat exchanger
 これは、オブジェクトは意図されたアクティビティに適していることが意図されていて、オブジェクトの物理アスペクトに対する結果を意味している。
2. Characteristic −e.g. vertical submergible pump
3. Material of construction −e.g. stainless steel pipe
 しかしながら、作られる材料に応じて特殊化される物理オブジェクトは含まれないという事は(グラスファイバーの様な特殊なものは除いて)STEPlibに関する一般的なルールである。製造材料と物質のクラスは、原子配列構造と呼ばれるエンティティのインスタンスを詳細化する異なった階層構造によって定義されたアスペクトクラスである。
4. Shape −e.g. sphere (spherical vessel) , tree
5. Composition −e.g. shell and tube heat exchanger
6. Principle −e.g. pitot tube (which implies shape)
 物理オブジェクトではなく、ロールを示すアスペクト型の例は:
1. Location −e.g. driven end bearing
2. Condition −e.g. waste
 出来上がるクラスは、通常自分の名前を1ケまたはそれ以上のアスペクトから受取る。しかしながら、通常では、クラスは1ケ以上のアスペクトの定義を持っている。1ケのクラスは、1ケのアスペクトからその名前を導くこともできる、しかし、その定義には、通常その親クラスから分類された1ケ以上のアスペクトがある。さらに、それはその名前を意図したロールまたは機能から引き出すことが可能である。しかし実際にその分類をしている物理アスペクトは、その設計の結果である。
例1:
 
‘sphere’(球状の容器の意味)クラスは、その名前はそれが持つ形状に起因する。また一方では、‘storage’という意図されたアクティビティをも意味している。
例2:
 
‘heat exchanger’クラスは、その名前はアクティビティでの意図されたロールに起因している、ただ、そのアクティビティを実行する為には、その形状とプロパティは面領域と熱伝導が必要になる。
例3:
 
‘shell and tube heat exchanger’クラスの名前の由来は、意図されたロールと構造アスペクトの組み合せである。
 物理オブジェクトの名前が、特定のアスペクトに由来するという事実は、そのクラスが何であるかについて必ずしもインパクトを与えない。クラスの名前が由来しているアスペクトは、言語依存の可能性がある。例えば、英語の‘gear’は歯車を意図するが、ドイツ語では‘tandwiel’と呼ばれる。つまり形状または構成(凹みのある輪)による分類である。
 物理オブジェクトの多くのクラスは、ある種のロールに適するように設計もしくは製作される。従ってそれらのクラスは意図されたロールに則って命名されている。そのロールに適するように、この意図されたロールは、例えば形状のような物理オブジェクトの結果を意味するという事を認識する必要がある。例えば、プロセスユニットの様な組立装置では、通常、特定のロールの設計に専念している。このことは、‘process unit’クラスがアクティビティあるいは機能アスペクトを定義するだけで済むことを意味している訳ではない、というのも、そのロールを満たす形状を持っているから。
 物理オブジェクトは、しばしば、意図されたロールに由来する名前を持つ。例えば、ポンプという名前は、その意図するところのポンプ(汲み上げ、“pumper”というロールに対する名前)から来ている。それにも関わらず、ポンプは物理オブジェクトクラスである事は明確である。ブローワについても同じである。これはコンプレッサー型である。
 しかしながら、“pure”ロールは、アクティビティを成す物理オブジェクト型から独立している。もし、英語が“pumper”の意味が分かれば、人間もそのロールが果たせるので、それはロールクラスになり得る。
 自然言語での問題点は、物理オブジェクトクラスとロールクラスに対して、しばしば同じ名前を使うことである。Blowerという名前が良い例である。ここでは、(例えば人間を)blowするのではなく、blowする為の特定の機械である。
 物理オブジェクトとして‘blower’と定義するのが、この様なケースの一般的なルールである、もしそれ以外の型の装置がその役目ロールを果たせる明らかな例が産業界にあれば、ロールクラスとして“blower”を定義してもよい。
 物理オブジェクトクラスは、オブジェクトが明らかに該当するロールを基準にして定義されてはならない。かかるクラスは典型的にロールクラスである。簡単にチェックするには、 オブジェクトが、通常の使われる姿ではなく、倉庫の中にあるものと考えるのがよい。そうすると、物理オブジェクトクラスとして分類できるかの結論を出すことができて、ロールクラスに従って、分類の結論を出すことは出来ない。
 次のようなクラスがこのカテゴリに属するものである:
components、一般的に‘component’で終わる名前を持つクラス。それらは通常、アイテムが装置の一部であることを示すロールクラスである。
例えば、装置要素equipment component、制御システム要素 control system component. 名前にある‘component’という言葉が‘item’で置換えられるクラスは含まない。空気要素pneumatic componentは、空気アイテムpneumatic itemと同義語である。他のアイテムの部品ではなく、アイテムがpneumaticであるところが、アスペクトを共有している。
material、一般的に‘material’で終わる名前を持つクラス。例えば、接合材料connection material、保温材insulation material、溶接材welding materialなど。それらは、またロールクラスでもあり、目的型で通常使われるものである。
アスペクトを共用するクラスは例外である。通常、その名前で材料名は、その集まりを指している。STEPlibは信号のみを定義するので、その名前での材料名は不必要である。
例えば、板材は板と同義語である。
‘material’クラスそのものは、また該当しない、何故ならそれは、成分が特定の量を持つ物理オブジェクトクラスを定義するものであるから。
equipment、一般的に、‘equipment’という名前で終わるクラス。もしequipmentという言葉がequipmentのアスペクトによって見当たらなかったら、そのクラスは大抵、ロールクラスである。
例えば、接合機器connection equipment、安全機器protection equipment、消火機器fire fighting equipmentなどである。
そのメンバーの共通アスペクトに基づいて定義される物理オブジェクトクラスのよい例は、回転機器や電気機器である。
物理オブジェクトが影響するロールの数には限りがある。例えば、ネジ回しはハンマーのロールも果たせる。(アクティブな)オブジェクトのこの様なロールの可能性‘possible roles’は、ものが何であるかを定義する‘fit for purpose’による分類とは区別しなければならない。
物理オブジェクトクラスは、設計の結果が共通の意図するロールを持つオブジェクトを分類するのであり、共通の付帯的なロールや実際のロールを持つオブジェクトを分類するのではない。
 
4.2.4.2.3 ロール(役割)のクラスClasses of Roles
 ある種のクラスには単にロールというのがある。もし、オブジェクトがある時点でロールを持たなければ、それは該当するクラスのメンバーとしてクラス分けすることは出来ない。
 例えば、’driven end bearing’は、通常の軸受けで、その場所で分類されている。しかしながら、その場所は’non-permanent’である。それは、軸受けの恒久的なアスペクトとは言えない。軸受けが倉庫にある場合には、軸受けのアスペクトを基準にこの手のクラスを決めることは出来ない。反対に、”thrust bearing”は、適確な物理オブジェクトのクラスである。というのも径荷重と同様に軸荷重を受けるように特別に設計されているからである。
 これは、それらのロールは、ロールクラスの名前とは違う名前のオブジェクトによって作用されることを意味する。そういったケースでは、特に特定の目的で設計もしくは製造されたオブジェクトはない。
 かかるクラスは、他のオブジェクトクラスとの’can be a role of’関連を伴い、それらはまた’role’に分類される。
例えば、
   
- driven end bearing
can be a role of abearing
- driven end bearing
is a specialization of role (of a bearing when located at a driven end of a shaft)
注意1:
 
‘fire fighting pump’はロールのみしか表わさない。この‘intended use’が実際には機械的な要因を持っていて、このクラス名は、機械的なアスペクトと同じように機能的なアスペクトを示唆していて、結果的に物理オブジェクトクラスになっている事は興味深い事柄である。
注意2:
 
物理オブジェクトクラスは、同じ名前を持つロールクラスから分離されなければならないという例外がある。例えば、前輪は、車の観点では輪のロールを果たすが、前輪とはトラクターの観点から輪を詳細化したものである。
その目的の為に特別に設計している訳なので、温度発信機は、同様にものを詳細化したものである。しかし、温度発信機のロールを果たす多目的発信機は存在する。
これは、次のように記録される:
   
− class of physical object
  
temperature transmitter (item) is a specialization of transmitter
− class of role
 
temperature transmitter (role) can be a role of a transmitter
   
ものが設計されたロール(目的)を果たすのはよくあることである。だから、例えば、温度発信機(アイテム)が温度発信機のロールになるとは記録されない。
その様な可能性のあるロールは、事前に予知されている。
 
4.2.4.2.4 Identification of new classes and their Hierarchy
 対象となるクラスを決定する易しい方法は、プラント、システム、装置、あるいは他の物理オブジェクトをあらゆる型(クラス)の要素に分解する事である。
 例えば、ポンプは、bearing、shaft などに分解できる。これはbearing、shaftなどのクラスを識別して、共通の構成物の全体(クラス)とその部品のとの関連を識別する。
 それは、次のように記録される:
− bearing   can be part of a   pump.
 次のステップは、その要素のサブタイプとスーパータイプを識別することである。例えば、サブタイプの例はball bearing、 roller bearingなどで、スーパータイプは、rotating equipment component.である。記録されるべき詳細化の関連は以下の通りである:
− ball bearing      is a specialization of      bearing,
− roller bearing   is a specialization of   bearing,
− bearing   is a specialization of   rotating equipment component
 だから、オブジェクトは分類されて、オブジェクトクラスは上位のクラスに分類される。(図1のentity:’specialisation of class of object’を参照のこと)。
 例えば、オブジェクトクラス’axial centrifugal pump’は、centrifugal pumpのクラスであって、それぞれ、ポンプを詳細化したもので、また装置を詳細化したものである。
 この様なクラスの詳細化は、階層構造の詳細化になる。全ての型のポンプに当てはまるデータを特定のポンプ、例えば軸流渦巻ポンプ、に固有のデータと区別する為にこの階層構造の詳細化が必要になる。
 詳細化の階層構造は、特に類似の機器や機器の要素の性能面の選択や比較には重要である。
ISO 10303-221のデータ構造とSTEPlibクラスライブラリは、どのクラスも必要な場合には、沢山の上位のクラスに分類することを許している。







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