日本財団 図書館


3.シンガポールの造船
シンガポール造船業の概況(2001年)
【1】概況
(1)造船業全体
 シンガポール海事産業の2001年は極めて好調であった。2001年の海事産業全体の総売上げは、40億3,000万Sドルであった。これは、前年の27億6,000万Sドルに対して46%の大幅増加であり、過去最高となった。これまでの最高は98年の38億6,000千万Sドル。
 この原動力の中心となったのは、船舶修繕・改造部門であった。船舶修繕・改造部門は、ここ数年同様シンガポール造船業の主力部門であり、2001年も全売上げの63.5%を占めている。2001年の売上げは対前年比52%増の25億5,900万Sドルであった。
 新造船部門の売上げは、5億4,400万Sドルと、2000年の4億5,400万Sドルに対して19.8%の増となり、全体の13.5%を占めた。
 オフショア部門売上げも、9億2,700万Sドルと2000年の6億2,600万Sドルに対して48%の大幅増となり、全売上げの23%を占めた。
 シンガポール造船業は、競争力を強化するため、合理化、コストダウンを図っているが、2001年は造船業界の活況を反映し、大幅な増加となった。2001年の労働者数は、前年比16%増の34,871人であった。2001年の労働者一人当たり付加価値額は、前年比34.2%増、額にして13,000Sドルアップの51,000Sドルとなり新たな水準に達した。
 造船所における労働安全の確保についての指標である事故件数(Accident Rate)、事故発生率(Accident Frequency Rate)及び事故重大性指標(Accident Severity Rate)は、それぞれ46.0%、7.8%及び31.2%増加した。2001年の事故発生率は、百万人・時間当たり4.1回と2000年までの長期減少傾向(2000年は3.8回)から反転し、事故重大性指標も、百万人・時間あたり724人・時間の喪失で2000年の552人・時間から反転した。
 
表1 海事産業の総売上げ額の推移(1997-2001年)
1997 1998 1999 2000 2001
総売上げ額(百万S$) 3,400 3,864 3,120 2,760 4,030
出所) 経済開発庁(Economic Development Board)
 
図1 シンガポール造船業の分野別売上げ
 
図2 労働者数の推移
 
図3 労働者一人当たり付加価値額の推移
 
(2)船舶修繕部門
 2001年の船舶修繕・改造部門は、好況であった。
 2001年の船舶修繕・改造部門の売上げは、25億5,900万Sドルと、前年の16億8,100万Sドルに対して率にして52%増、額にして8億7,800万Sドルの大幅増を記録した。海事産業総売上げに占める割合も2000年の60.9%から63.5%に増加した。
 修繕のためシンガポールに入港した船舶の隻数はほぼ横ばいであった。シンガポール海事港湾庁(Maritime and Port Authority of Singapore, MPA)の統計によれば、2001年にシンガポールに修繕のため訪れた船舶(沖修理を含む)は、隻数は6,760隻で2000年の4,596隻より率にして47%、隻数では2,164隻の大幅増となり、総トン数でも4,116万総トンと2000年の3,602万総トン14.3%の増加となった。
 改造工事は、ここ10年間で技術力を確立しており、修繕部門での主要な部門である。オフショアサプライ船からケーブル敷設船への延長・改造工事、浚渫船のジャンボ・改造工事等を実施した。特に、シンガポールは81年に最初のEPSOへの改造工事を手がけて以来、2001年末までに68隻のFPSO、FSO、FSUやFPUへの修繕、改造工事・改良工事を行っており、この分野における世界の主要基地のひとつである。2001年に改造が完了し、引き渡されたものだけでも5プロジェクトあり、4プロジェクトが進行中であった。
 
表2 修理入港隻数(1997-2001年)
1997 1998 1999 2000 2001
入渠船舶数 4,618 4,505 4,552 4,596 6,760
出所) Singapore Port Statistics:海事港湾庁(Maritime&Port Authority of Singapore)
 
(3)新造船部門
 2001年は新造船部門も、徐々に好転しつつある。
 新造船部門の売上げは、2000年の4億5,300万Sドルから5億4,400万Sドルヘと19.8%増加し、ようやく97年のほぼ半分を超える状態にまで回復した(97年;10億260万Sドル)。ただし、船舶修繕・改造部門、オフショア部門の好調の影響を受け、海事産業総売上げに占める割合は2000年の16.4%から13.5%に減少した。進水した船舶の隻数は、2000年の64隻から88隻へと率にして37.5%、隻数で24隻の増となった。総トン数ベースは、2000年の66,414総トンから134,396総トンとなった。
 新造船の大部分はバージやタグボートなどの作業船で新造船全体の45.5%、40隻を占め、一サプライベッセル14隻、プレジャーボート等12隻、旅客船11隻がこれに続いた。この他にはコンテナ船3隻、ケーブル敷設船3隻、タンカー1隻。2002、2003年に引き渡し予定の船舶には、ケーブル敷設船、アンカーハンドリングベッセル、多目的サプライ船、旅客船等がある。
 
(4)オフショア部門
 リグ建造分野は、数年来の弱い建造需要の状態が2000年前半まで続いた。しかしながら、2000年後半からの建造需要の回復を受けた新規契約等により2001年のオフショア部門の売上げは2000年の6億2,600万Sドルから9億2,700万Sドルと対前年比48%の大幅増となった。海事産業の総売上げに占める割合は2000年とほぼ同じの23%(2000年;22.7%)となった。深海掘削用セミサブ型オイルリグ、テンションレグ等の改良・改造工事に対応できる能力を持つシンガポール造船業界は、オフショア部門で競争力を維持しており、2001年にはセミサブ型オイルリグの引渡しは1隻であったが、8隻が2002〜2003年に引き渡すべく建造中である。また、ジャッキアップリグ、掘削船、セミサブ等25隻の修理・改造工事が行われた(2000年;22隻)。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION