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ASEAN主要海運国の商船隊の推移
(単位;万GT)
 
 この2〜3年は少し停滞しているとはいえ、このようなシンガポール籍船の急激な増加の要因としては、以下のようなものが考えられる。また、シンガポール海事港湾庁(MPA)は、シンガポール船籍の取得促進のため船主等に積極的に働きかけている。
(1)AIS(Approved International Shipping Enterprise)スキームの導入
 1991年に導入されたAISスキームの下で承認された企業は、海運業による所得に対する課税の免除を受けられる。シンガポール籍船を10%以上保有していれば同国籍船以外の船舶による収入に対する課税の免除も受けられる。
 
<AIS企業としての承認の要件>
a) 世界的なネットワークを持つ国際航海船舶を所有又は運航する企業
b) シンガポール籍船を10%以上保有する企業
c) シンガポールで年間400万S$以上(人件費・修繕費・施設費等)を支出する企業
 
(2)リージョナル・ハブとしての役割の増加
 東南アジア諸国エリア内の海上物流の増加に伴い、多くの海運企業が地域統括本部等地域全体を管轄する事務所・機能を当地に移すなどリージョナル・ハブとしてのシンガポールの重要性が増している。
 
(3)その他のメリット
 「魅力的な登録料金体系」、「安全性の高さ(国際基準への適合性)」、「船員の雇用が容易(船員の国籍を問われない・外国の船員資格証明を認める等)」などシンガポール籍を取ることによるメリットが多い。
 
【3】シンガポール船主協会
 シンガポールの海運業者の多くは、シンガポール船主協会SSA(Singapore Shipping Association)のメンバーとなっており、正会員175社、準会員58社(2002年4月1日現在)が加入している。SSAは、97年5月、名称をそれまでのSNSA(Singapore National Shipping Association, 1985年設立)からSSAに変更するとともに、海運業に関連する準会員(造船所、修繕業者、シップブローカー、船級協会、船舶金融業者、海上保険業者等)の加入を容易にするための会則・組織の改正等を行った。これにより準会員数が、改正前は8社であったのが、58社にまで増加した。
 また、SSAは、海運業を取り巻く環境の変化に迅速に対応できる体制を整備するため、現在7つの常設委員会をもち、うち2つが管理委員会、5つが業務委員会としている。
 
SSAの組織図
 
【4】主要海運企業の概要
(1)Neptune Orient Lines Limited(NOL)
 定航、タンカー、バルク・キャリアーサービスを提供するシンガポールを代表する海運会社である。1997年11月に米国第2のコテナ船社American President Lines(APL)を傘下に収めたことにより、買収前は世界第16位だったNOLグループは、運航船隊、売上で世界の5本の指に入る海運会社となった。
 NOLグループ全体の2001年の売上は47.4億US$で対前年比2.6%増となった。売上のうち76%をコンテナ輸送部門が占め、その他、ロジスティックスが15%、チャーター・サービス部門が8%となっている。また、税引き後利益は、前年の1億7800万US$の黒字から、5,700万US$の赤字に転落した。なお、97,98年はそれぞれ1億4,300万US$、2億5,400万US$の赤字、99年、2000年はそれぞれ9,400万US$、1億7,900万の黒字であった。2000年後半から始まった世界的な景気の後退とそれに追い討ちをかけた2001年9月の同時多発テロの影響や業界全体でサービス供給が過剰となったことによる荷動きの停滞をまともに受けた形となった。
 定期コンテナサービス部門では、傘下のAPLのブランド名の下に、NOLのコンテナ輸送ネットワークはさらに広がり、北米、中・南米、欧州、アジア、中東、豪州の各航路でサービスを行っているが、2001年は苦戦した。
 チャーター・サービス部門では、原油タンカーをAmerican Eagle Tanker(AET)が、プロダクト・タンカーをNeptank(現在はNeptune Associated Shipping)が長期またはスポット傭船しているが、新たにアフラマックスタンカーの建造を行うなど2001年は堅調であった。
 同グループの支配船は2002年3月末現在、128隻で内訳はコンテナ船が80隻(324万DWT, 233,745TEU)、原油タンカーが26隻(284万DWT)、プロダクト・タンカーが22隻(20万DWT)、建造中のコンテナ船が9隻(42,000TEU)、原油タンカーが6隻(85万DWT)となっている。
 
(2)Pacific Carriers Limited(PCL)
 海運(船舶保有・マネジメント、チャーター)、貨物貿易、船舶ブローカー業務等を行っており、海運業ではドライバルクが中心であるが、液体貨物市場にも手を広げ、タンカー部門(プロダクト及びケミカルタンカー)の強化を進めている他、97年からはアジア域内でのコンテナフィーダーサービス(現在、シンガポールとマレーシア・インドネシアを結ぶ7ルート)及び倉庫業務にも手を広げ、さらに99年からはブレークバルクライナーサービスを手掛けている。同社はシンガポールでの上場廃止のため、2001年の年次報告書を作成しておらず、またホームページ等での公表を行っていないため、2001年4月現在の情報を掲載した。
 グループ全体の2000年の売上は1.96億S$で対前年比51%増であった。このうち海運事業の売上げは51%(うちフィーダー及びブレークバルクライナーサービスが43%)を占めている。税引き前利益は5,637万S$で対前年比27%増であった。
 同グループの支配船は子会社の所有船を含め42隻(バルクキャリア31隻、タンカー5隻、コンテナ船6隻)、1,260,480DWTとなっている。
 
(3)Pacific International Lines(PIL)
 海運(船舶の保有・オペレーション等)を主要業務としており、アジア、中東、東アフリカ、豪州・ニュージーランドヘのコンテナ・サービス及び域内フィーダー・サービス等を行っている。
 グループ全体の2001年の売上は海運事業の売上増加(7億1,000万US$;対前年10%増)に支えられ8.90億US$(前年比6.9%増)であった。このうち海運事業の売上げは80%(前年は77%)を占めている。税引き後利益は3,360万S$で対前年比14%増であった。
 同グループは、2001年5月現在、前年より6隻増えて、コンテナ船81隻(内24隻は傭船、85,000TEU(2000年:74,000TEU))を運航している。また、コンテナ船14隻(17,100TEU)が2003年6月に就航予定である。
 COSCOコンテナライン上海と華中〜シンガポール/タイ、華北〜シンガポール/マレーシアの共同運航を行っている。
 
(4)Singapore Shipping Corporation Limited
 同グループはHai Sun Hup Group Ltdが、Stamford Land Corporation Ltdに名称変更後、同グループの海運(船舶保有・マネジメント、船舶運航)及びロジスティックス部門を、Singapore Shipping Corporation Limitedに再編されたものである。
 同グルーブの2000年4月―2001年3月の売上げは2.75億S$で、税引き後利益は1,800万S$であった。
 同社の支配船は、14隻の船舶を長期傭船しており、その船齢は11.2〜25年と高齢である。なお、ドック周期は2〜3年。
 2000年当時の同グループの支配船は14隻(自動車運搬船3隻、コンテナ船3隻、VLCC1隻、バンカータンカー4隻、重量物運搬船1隻、コンテナバルカー2隻)、459,962DWTであった。
 
(5)Cosco Investment(Singapore)Limited
 中国のCOSCOグループのシンガポール企業で、海運、船舶修繕業等、コンテナ貨物取扱い、不動産等を主な業務としている。
 グループ全体の2001年の売上は一昨年の対前年比38%、前年の対前年比20%減に続き本年も対前年比6%減となり、1.52億S$となった。このうち、海運業務の売上は0.9386億S$(対前年比8%増)で、全体の61%を占めている。取扱量自体が過去の水準に戻るにはなお1年以上かかると見ている。上期にドライバルク運賃が値上がりし、海運関連部門の売上が増えたため、グループの税引き後利益は41.5%増となった(税引き後利益は1,324万S$、2000年は935万S$)。
 同社の海運・修繕業務は100%子会社のCosco(Singapore)Pte Ltd、Coa Star Shipping Pte Ltd、Cosco Marine Engineering(Singapore)Pte Ltdが行っており、グループで保有する11隻のバルク・キャリア(598,678DWT)及びチャーター船を用いて、東南アジア、太平洋、大西洋地域の主要港間のサービスを行っている。
 
(6)IMC Holdings Limited
 世界各国に設立された海運企業の株式保有会社で、香港及びシンガポール株式市場に上場されている。グループの主な業務は、船舶保有・運航、船舶売買であるが、船舶管理、船員エージェント業務等も行っている。グループ企業は、2001年末現在全世界に131社、そのうちシンガポールのグループ企業としてはIMC Shipping Co. Pte. Ltd.等26社がある。
 2001年の売上は4-61億HK$(前年比0.6%減)、税引き後利益は1.73億HK$(対前年比16%増)であった。
 同グループの支配船は前年よりケミカルタンカーが1隻増え、20隻(パナマックス×5、ハンディマックス×5、ハンディサイズログ/バルカー×9、ケミカルタンカー×1)、848,111DWT(2000年:803,693DWT)である。また、同社のジョイントベンチャーの支配船舶として、バルクキャリア6隻、ケミカルタンカー6隻、パナマックスタンカー3隻がある。







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