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2.シンガポールの海運
シンガポール海運業の概況(2001年)
【1】シンガポール港の貨物取扱量
 2000年に一旦回復基調に乗ったかに見えたシンガポールの貿易は、2001年に入ると世界的なエレクトロニクス不況、米国経済の低迷、さらに追い討ちをかけた同時多発テロの発生を背景に大幅な落込みを示した。2001年の輸出は前年比8.5%減の2,194億4,600万Sドル、輸入は同10.6%減の1,963億8,300万Sドルとなった。ただし、貿易規模の縮小下で、260億6,400万Sドルの黒字となった。
 貿易の落込みにより、海上貨物やコンテナ貨物の取扱量が減少し、シンガポールにおける海上貨物取扱量は、前年比3.8%減の3.13億MFT(Million Freight Tonnes)、コンテナ貨物取扱量はさらに大きく減少し前年比8.9%減の1,557万TEUにとどまった。ただし、シンガポールヘの寄港船腹量は対前年比5.5%増の9億6,000万総トンと総トンベースでは世界第一の座を維持した。
 また、航空貨物取扱量も大幅に減少し、対前年比10.5%減の151万トンとなった。シンガポールにおける国際貿易は、その殆どが海上貨物の輸送により行われており、海上貨物やコンテナの取扱量の大幅に減少したことでもその低迷がわかる。
 これらの貨物は、国内外約320の船社により世界約740港との間で輸送されている。
 
【2】シンガポールの商船隊
 2001年末現在、3,353隻、2,317万GTの船舶がシンガポール籍船として登録されている。これは前年末と比べ、それぞれ18隻増(0.5%増)、13万GT増(0.5%増)となり、ここ2〜3年続いていた減少傾向に歯止めがかかった。
 シンガポール籍船は、92年に1,000万GTを超えて以来、毎年100万GT台のペースで増加を続けてきたが、96年に入って増加のピッチを急速に早め、一挙に1,600万GT、1,700万GT、1,800万GTを超え、さらに97年8月に1,900万GT、そして、シンガポールの海事港湾庁(MPA;Maritime and Port Authority)の"2,000年までに2,000万GTを超える"という当初の目標を遥かに早回り、97年10月には2,000万GTの大台に達し、98年は2,200万GT、99年には2,300万GTを超えた。しかしながら、2000年は2,304万GTと前年を3%下回り、2001年に2,317万GTと増加したが、1999年の2,375万GTまでは回復していない。一方、隻数は98年から毎年減少していたが、2001年に歯止めがかかったが、隻数自体は2000年に引き続き97年を下回った。
 
シンガポールの籍船の推移
(単位;隻、万GT)
  1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
隻数 1,823 2,087 2,394 2,647 2,910 3,157 3,380 3,412 3,360 3,335 3,353
総トン数 956 1,074 1,216 1,320 1,496 1,824 2,077 2,203 2,375 2,304 2,317
 
 
 2001年のデータでシンガポール籍船(3,353隻、2,317万GT)を船種別にみると、隻数では非自航船の1,397隻が最も多く、次いでタグ・ボート744隻、オイル・タンカー431隻、コンテナ船182隻、バルク・キャリアー120隻、一般貨物船100隻の順となっている。前年(2000年)と比較して、タグ・ボートの19隻増が目立っている。
 また、総トン数では、オイル・タンカーが907万GTで全体の39.1%を占め、次いでバルク・キャリア444万GT(同19.2%)、コンテナ船354万GT(同15.3%)の順となっている。前年と比較すると、オイル・タンカーが58万GT減となり、バルク・キャリアーが50万GT増、コンテナ船18万GT増となった。
 
シンガポール籍船の船種別隻数及び総トン数
(単位;隻、万GT)
船種 2000年末  2001年末 
隻数
(%)
総トン数
(%)
隻数
(%)
総トン数
(%)
タンカー オイル・タンカー 425(12.7) 965(41.9) 431(12.9) 907(39.1)
ケミカル・タンカー 38(1.1) 17(0.7) 46(1.4) 23(1.0)
液化ガス・キャリア 28(0.8) 38(1.6) 34(1.0) 60(2.6)
兼用船 12(0.4) 66(2.9) 13(0.4) 66(2.8)
貨物船 バルク・キャリアー 114(3.4) 394(17.1) 120(3.6) 444(19.2)
貨自動車運搬船 47(1.4) 149(6.5) 35(1.0) 118(5.1)
コンテナ船 183(5.5) 336(14.6) 182(5.4) 354(15.3)
一般貨物船  114(3.4) 118(5.1) 100(3.0) 105(4.5)
その他 8(0.2) 3(0.1) 8(0.2) 3(0.1)
その他 旅客船・フェリー 86(2.6) 3(0.1) 88(2.6) 3(0.1)
タグ・ボート 725(21.7) 17(0.7) 744(22.2) 19(0.8)
オフショア・サプライ船 66(2.0) 4(0.2) 54(1.6) 3(0.1)
非自航船・バージ 1,411(42.3) 186(8.1) 1,397(41.6) 199(8.6)
その他 78(2.39) (0.4) 101(3.0) 16(0.7)
合計 3,335(100) 2,305(100) 3,353(100) 2,317(100)
 
隻数
総トン数
 
 一方、ロイド統計によると、2001年末現在シンガポールは世界第7位の商船隊(船籍)を保有する海運国となっている。
 
商船隊(船籍)の世界ランキング(2001年)
(単位;万GT、隻)
  1.パナマ 2.リベリア 3.バハマ 4.ギリシャ 5.マルタ 6.ギプロス 7.シンガポール 8.ノルウェー 9.中国 10.日本
総トン数 12,352 5,178 3,339 2,868 2,705 2,276 2,102 1,900 1,665 1,456
隻数 6,245 1,566 1,312 1,529 1,421 1,407 1,729 762 3,280 7,924
出典: "World Fleet Statistics 2000"(Lloyd'S Register)
注) ロイド統計では、非自航船及び100GT未満の船舶を除いているため、前述のシンガポール籍船の統計数値(2,203万GT)と異なる。
 
 ロイド統計を用いてASEAN10カ国の商船隊を総トン数ベースで比較すると、2001年末現在ASEAN10カ国で世界の総船腹量(55,713万GT)の7.4%に相当する4,145万GTを保有しているが、フィリピン、ミャンマー、シンガポールの船腹量減少を受け2000年に比べ、ASEAN10カ国の船腹量は、総トン数ベースで2.2%減少した。
 シンガポールがASEAN10ケ国全体の50.7%の船隊規模を誇っており、次いでフィリピン14.5%、マレーシア12.6%、インドネシア8.7%、カンボジア4.8%の順となっている。
 
ASEAN10カ国の商船隊(2001年)
(単位;万GT、隻)
  シンガポール フィリピン マレーシア インドネシア カンボジア タイ ヴェトナム ミャンマー ブルネィ ラオス ASEAN計
総トン数 2,102 603 521 361 200 177 107 38 36 0.2 4,145
隻数 1,729 1,697 882 2,528 564 568 700 124 62 1 8,855
 
 ASEAN上位5カ国の1993年末以降の推移をみると、7年前に比べて保有船腹量の増加量ではシンガポールが全増加量の約75%と大半を占めているが、増加率ではマレーシアの2.5倍、シンガポールの1.9倍、タイの1.7倍の順となっている。
 マレーシア、タイ等では、増加する自国の輸出入貨物の輸送を自国の商船隊で行おうという動きが強まっており、このための海運育成策にも力を入れるなど、ASEAN域内諸国におけるシンガポール商船隊の優位を脅かす動きも出てきている。







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