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(b)共同体産業で(21の協力EU造船所)
 
共同体産業の生産量と稼働率
表5
生産量、キャパシティ、稼働率(1997年を100とする)
 
 生産は作業中の工事を指すため、売上げ量は契約日をベースとした。
 
 キャパシティにはほとんど変化がない一方で、生産量は2000年から2001年の間にわずかに5%の増加を見せた。全体(1997年から2001年)では、生産量は約6.5%減少し、その結果、稼働率も同様に低下している。
 
共同体産業の売上げ量(Sales Volume)
 先に言及したように、損害分析の目的で、売上げは新規受注、この場合、協力EU造船所21社が受注した契約、をべースとした。そのため、各船舶の売上げ量は、契約日にあたる期間に帰属する。本調査期間中に受注した契約の大多数は、2000年12月に締結されたものであることに留意する必要がある。これは2001年1月1日に国家助成が廃止された結果である。
 
表6
新受注ベースの売上げ量(CGT、1997年を100とする)
 
 2000年1月から11月の期間と、本調査期間の間に、総売上げ量は約7%増加した。全年と比較すると、本調査期間の新受注の絶対レベルは比較的高いように見える。この全体のトレンドは、旅客/ROROフェリー部門における新規受注量が大幅に増加した結果である。しかし、このトレンドは、先に報告したEU全体の造船事業者に関する統計と一致しない。新規受注は、旅客/ROROフェリー及びプロダクト/ケミカル・タンカーでは増加した一方、コンテナ船部門とLNG部門において、それぞれ15%と33%減少した。
 
共同体産業の船価(Sales Price)
表7
船価(1997年を100とする)
 
 2000年1月から11月の期間と比べて、本調査期間における全体の平均船価は、比較的安定していた。船種別では、プロダクト/ケミカル・タンカー部門の船価は、2000年1月から11月の期間よりも大幅に高かった。それでも、1997年、1998年の船価レベルよりは低い。コンテナ船部門では、平均船価は本調査期間に約13%上昇した。共同体産業が売上げ量を2倍以上に伸ばした旅客/ROROフェリー部門では、2000年1月から11月期から本調査期間に船価は大幅に低下した、同船種の過去5年間最低レベルに落ち込んだ。LNG船については、平均舶価は2000年1月から11月までの期間と比べ、本調査期間に8%上昇した。
 
 さらに、共同体産業は本調査期間に、特定の船種(石油タンカー、プロダクト/ケミカル・タンカー)を一件も受注していないため、当該船種に関する船価トレンドを確立するためのデータが入手できなかった。
 
共同体産業の収益性
 最初の報告書と同様に、収益性は運営助成を含んだ場合と、除外した場合の収入(売上げ価格)を考慮した2つの個別の表にまとめられた。収益性の数字はそれぞれの期間に完結した契約を指している。それゆえに、受注済みではあるが引き渡されていない船舶については、最新の推定収益性の数字を使用した。収益性は、船価(運営助成を含んだものと、除外したもの)の利益/損失のパーセンテージで表される。企業秘密上の理由から、全体の利益性のトレンドのみを示す。
 
表8a
助成を差し引いた利益率
 
 助成を差し引いた全体の利益率は、最後の期間には改善の徴候が見られるものの、検討の対象となった期間全体を通じてマイナスとなっている。コンテナ船とプロダクト/ケミカル・タンカーは、他の船種と共に、本調査期間に高い損失を被った部門である。先に説明した理由から、LNG部門については正確な収益性の数字を出すことはできなかった。
 
表8b
助成を含んだ収益性
 
共同体産業の雇月
表9
雇用(1997年を100とする)
 
 共同体産業の直接雇用は2000年から2001年の間に3%減少、1997年から2001年の期間を通して10%減少した。
 
共同体産業の投資
表10
投資(1997年を100とする)
 
 商船に関連した投資は、2000年から2001年の間に21%増加した。これらの投資はキャパシティ拡大に関連したものではなく、技術機器の近代化に関連したものである。期間全体では、約8%減少している。
 
廉売(Price Undercutting)
 廉売を計算するために、委員会部局は第1次調査と同じ方法論を採用した。委員会の月刊市場モニター報告書で報告された、本調査期間中の韓国の船価データを、共同体産業が同じ期間に販売した、船種、及び大きさの点で匹敵する船舶の船価と比較した。(たとえば、60,000CGTコンテナ船の韓国船価は、同じ期間に共同体産業が販売した60,000CGTコンテナ船の船価と比較された。)。船価の格差は韓国船価に対するパーセンテージとして算出された。
 
 韓国造船所が販売したプロダクト/ケミカル・タンカー9隻、コンテナ船13隻、LNG船12隻の船価と、共同体産業が販売した匹敵する船種及びサイズの船舶の船価との比較に基いて、廉売率は7〜35%と判定された。
 
 今回立証された廉売率は、第1次調査の際に立証されたものと一貫している。
 
 深刻な権利の侵害に関して、ASCM第6条(3)は深刻な権利の侵害が発生しえる条件のリストを提示している。これらのなかで、第1次調査は、第6条のc)として言及された条件が、本調査において問題とされる条項であることを示した。すなわち、「助成の影響が、助成を受けた産品により、同一の市場における他の加盟国の同様の産品の価格と比較して大幅な廉売である、または大幅な価格の抑制,船価の下落、または同一の市場における販売の損失(lost sales)である」場合にあたる。この点は追加調査により立証されており、それゆえに、本報告書の目的で同じ要素が使用された。
 
(a)廉売(Price Undercutting)
 
 廉売(price undercutting)及び船価の引き下げ(price depression)に関しての分析は、先の損害評価のコンテクストにおいて行われている。先の分析は、世界造船市場について行われたことから、その評価の結果は、「深刻な権利の侵害」のコンテクストにおいても有効である。
 
(b)販売の損失(Lost Sales)
 
 韓国造船所に奪われた受注数は、本調査期間についてはそれほど目立ったものではなかった。これは、第一に当該期間の市場の展開に関連している。韓国が手持ち工事が比較的飽和状態であったため、前年のように多くの新規受注を獲得する態勢にはなかった。そのため、共同体造船所は、道理に適った量の新受注を獲得する立場にあった。(これはまた、2000年12月の最後の国家助成に助けられた。)
 
 第二に、特定のケースにおいては、共同体造船所は入札について知らされてもいなければ、招かれてもいない場合があった。それゆえに、多くの場合、受注を失った物的証拠が存在しなかった。
 
 それにもかかわらず、調査により、本調査期間において共同体生産者は船主にオファーを出しながらも、韓国造船所の提示した船価が大幅に低かったため、韓国造船所に契約を奪われている。次の表に示すように、コンテナ船6隻(船価格差は6〜24%)、プロダクト・タンカー2隻(16%〜21%)、LPGタンカー1隻(10%)、そしてLNG船5隻(10〜15%)で、この状況が見られた。LNG船部門の受注は、通常2〜4隻の連続建造受注であることを指摘しておかねばなるまい。
 
表11
本調査期間において韓国造船所に奪われた契約
 
 先に説明したように、LNG船市場は2000年と2001年に急成長し、1998年には4隻の発注であったのが、2000年には18隻、2001年には32隻が発注されている。このように市場の規模が途方もなく拡大したにもかかわらず、共同体造船所は、2000年に3隻、2001年に2隻しか受注していない。これらの契約はすべて1社が獲得したものである。1993年までLNGの受注実績があった別の造船所2社もまた、2000年及び2001年にLNG市場が拡大したため、受注に関心を持っていたが、受注することはできなかった。市場分析によれば、韓国造船所は、非常に低い船価を提示してこの分野に食い込んだと示唆されている。韓国が早い時期に多数の船舶を引き渡す能力を有していることも重要であった。韓国がLNG市場参入を図る理由は、2000年以来クルーズ市場が低迷していることに関連している。調査により、過去にこの種の船舶の建造実績がある、または現在建造能力を有しているが、今のところこの市場に(再)参入する積極的な努力をしていない造船所も他にいくつかあることが判明した。
 
 先に言及した2社により、彼らが出したオファーを詳しく説明し、共同体造船所の提示船価よりも10〜15%低い船価を提示した韓国造船所に契約が奪われたことを示す証拠書類が提供された。韓国造船所が提示した船価は、共同体造船所の損益分岐コストに相当した。証拠書類により立証された5件のうち、3件は、具体的な制裁措置を講じることのできる助成(因果関係を参照)の主受益者のひとつである大字に奪われたものであり、1件は、リストラ助成を受けていない韓国造船所である現代に、1件は日本の造船所に奪われたものであった。
 
 第1次調査期間以前に、EU造船所はLNG市場で強力な存在であったことを指摘する必要がある。さらに、現時点で世界中に存在するLNGの様々な技術は、関連特許を保有するEU企業により開発されたものである。
 
(c)その他の要素
 
 ASCM第6条3に列挙された深刻な権利の侵害の存在を断定するその他の具体的な基準についても検討が行われた。すなわち、助成を行っている国の市場への同様の産品の輸入の押しのけ(displacement)または妨害(impediment)、または第三者国市場への輸出の押しのけ(displacement)または妨害(impediment)である。
 
 先に立証したように、市場の相対的シェアおいて、EU造船所に不利となる変化があった。表4で示したように、プロダクト/ケミカル・タンカー及びコンテナ船部門がこれに該当する。当該船種では、1997年から2001年の期間に韓国が急激に市場シェアを伸ばし、EU造船所は劣勢となった。
 
 共同体産業の状況は、前年にくらべて本調査期間にわずかに改善しているが、依然として不利である。加えて、1997年から本調査期間までの期間中の新たな情勢の展開を考慮した場合、共同体産業の状況は大幅に悪化したとも考えられる。それゆえに、本調査期間に共同体産業が経験したわずかな改善は、先の報告書の結論を変える種類の物ではない。これを根拠として、共同体産業はASCM第5条、TBR第2条(3)、第2条(4)に照らして、不利な影響を被ったことが立証される。
 
 上記の議論に照らして、追加調査は
 
(1) 共同体産業は実質的損害及び深刻な権利の侵害を以下の部門で被ったことを立証する。
  −コンテナ船
  −プロダクト/ケミカル・タンカー
(2) LNG部門における2000年及び2001年の新たな情勢に関して、長期的に一貫したトレンドが出現するかどうかを判断するために、さらに調査検討が必要であると結論した。
(3) また、共同体産業は、程度は低いものの、次の部門において、損害及び深刻な権利の侵害を被ったことを確認した。
  −バルク・キャリア、石油タンカー
  −旅客/ROROフェリー
(4) これ以外の部門においては、損害及び深刻な権利の侵害は発見されなかったことを確認した。







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