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第2編 企業レポート
舶用機関メーカー等による排出ガス削減対策に対する取組み
 欧州を代表する舶用ディーゼル機関メーカーのMAN B&W Diesel及びWrtsilの2社並びにSCR装置メーカーHaldor Topsoe社における排出ガス削減対策の取組み状況等に関するヒアリング調査結果は以下のとおり。
 
1−0 Haldor Topsoe A/S社
 
1−1 会社プロフィール
 
英語名称:Haldor Topsoe A/S
所在国:デンマーク
本社住所:Nymollevej 55, DK−2800 Lyngby, Denmark
連絡先:T:+45 45 27 20 00 F:+45 45 27 29 99 www.haldortopsoe.com
 
 欧州における大手化学機器メーカーの一つで主にSCR装置を製造しているデンマークの企業。2001年におけるHaldor Topsoe社の総売上高は237億デンマーククローネ(約2億ポンド)で、従業員数約1,600人の殆んどはコペンハーゲン近くのLygbyの本社に勤務している。本社には中央調査研究所と技術事務所が併設されているが、触媒等の特殊装置はデンマークのフレデリックスサンド(本社事務所から北へ約40km)及び米国のテキサス州ヒューストンで製造されている。同社は米国のほか、日本、ロシア、インド及び中国にも海外事務所を置いている。
 
 Haldor Topsoe社には技術部、触媒部及び研究開発部の主要三部門がある。触媒部は売上高及び従業員数とも三部門中で最大である。現在までにHaldor Topsoe社は700kWから23,000kWまでの2ストローク及び4ストロークのディーゼルエンジンで作動するSCR装置を92基生産している。このうち、陸上用ディーゼルエンジン仕様が65基、船舶用ディーゼルエンジン仕様が19基及び陸上用ガスエンジン仕様が8基となっている。
 
 Topsoeグループは、1940年Haldor Topsoe博士によって設立されたことから社名も同博士の名前に由来する。会社の所有権の50%を同博士が所有しており、他の半分をイタリア国営の石油・ガス会社/EMIのグループであるSnamprogetti International SAが所有している。
 
 1989年Haldor Topsoe社は7.9MW/2ストロークMAN B&Wディーゼルに排気ガスを洗浄する初めての舶用のSCR装置を開発した。この装置は最初の舶用SCRであるばかりでなく、エンジンの排気マニフォールドと過給機の間に設置された最初の触媒装置でもあった。初めてこの装置が搭載された船舶は、韓国とカリフォルニア間を航行する船舶で、厳しいカリフオルニアのNOx排出規制をクリアするためにも、同社のSCR装置が搭載される必要があった。
 
 また、1993年、同社は最初にバルト海で定期航路に就航している船に、2台のSRCを設置した。その装置は二隻のSilja Line社のフェリーに各一基づつ設置され、補機の排気ガス清浄に使用された。この船への設置で、舶用SCRが主要な海事産業市場になり得ることが立証された。
 
 さらに、1997年にはHaldor Tposoe社は初めて一隻の船(M/S Stena Jutlandica)の主機、補機の全内燃機関(8台)にSRC装置を設置することを経験した。
 
1−2 触媒技術等
 Haldor Topsoe社が取り扱う主要分野は、重工産業向けの化学品、石油化学とその精製技術、排気ガスによる汚染浄化技術(液体や固体の浄化技術でなく)であり、特に、触媒に関する技術を得意とする。触媒自体の生産以外に、触媒を利用するための各種特殊製品の製造も行っている。長年培ってきたこれら触媒に関する専門知識が顧客ニーズに対してきめ細かい対応となって結実している。また、浄化システムの機種等に応じた最適な触媒の選択、触媒装置の船舶への搭載作業、使用中の触媒状態の最適化などにも同社の技術ノウハウが活かされている。例えば、船舶への触媒装置の搭載一つを例にとっても、推進システム全体を分析し、どこにどのような触媒技術を使用すれば最適な浄化が可能となるかについての判断を行っている。
 
 現時、同社のSCR装置ではNOxの削減のみならず、特殊な酸化触媒法により二酸化炭素を95%、未燃焼の炭化水素を90%それぞれ削減することができ、また、低周波共振装置を併置することにより騒音レベルも大幅に減少させることが可能となる。
 これまで、一般的な顧客ニーズはNOxを12−16g/kWh以下に減らすことにあったが、今後、特に北米、北海、バルト海を航行する船舶に対しては2グラム/kWh以下と、さらなる削減が要求されることとなると同社は見ている。
 
1−3 研究開発活動
 Haldor Topsoe社は、研究と開発に力を注ぐことは事業繁栄の基本と考えており、売上額の15%に相当する金額(約3千万ポンド)を毎年研究と開発のために投資している。また、同様に全従業員の15%(約240人)に相当する人々が研究と開発に従事している。
 
 同社はMAN B&W社と非常に緊密な関係を持っており、また、Wrtsil社ともあまり広範囲ではないが4ストロークエンジンに関しては共同開発も行っており、大学との共同研究も実施している。この大部分は2ストロークエンジンに関する技術開発に係わるものである。
 
1−4 今後の動向
 Haldor Topsoe社では、顧客がSCRの技術を採用したのは、法律によって規制される以前にNOx排出削減問題を自主的に解決しようという意欲と環境問題に対する企業イメージの向上を図りたいという意識が背景にあると信じている。顧客の中には、(特にクルーズ船の会社と思われるが)環境保護に貢献することを望みながらもこれら環境対策に伴うコストに対して懐疑的な見方をする声もあるとしながらも、近い将来、カリブ海のクルーズ船や米国東岸で運航する船主、運航者等はNOx削減技術を採用し、あるいはせざるを得ない状況になると見ており、今後のSCRに対する需要拡大に期待している。このため同社では、SCR装置によるNOx削減水準をさらに向上させていくとともに、装置の設置・運転コストの削減及びよりコンパクトな装置の開発に向けた企業努力を推進していくとしている。
 
 今後、陸上、海上を問わずSCR装置に対する需要は関連規制の法制化に拘わらず、ここ3−5年以内に大きく拡大するだろうとHaldor Topsoe社は予測している。特に、舶用部門にあっては、北海〜バルト海、次に地中海、さらに米国及び米国向けに航行する船舶においてその需要動向が顕著になってくると考えられている。







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