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第6章 排ガス削減及び製品開発の動向
6−0 【概要】
 窒素酸化物(NOx)は、エンジンのシリンダ内での燃焼プロセスにおいて生成され、本来エンジン性能の機能の一つである。窒素酸化物(NOx)排出量を削減する場合、一番の問題となるのは、シリンダ内での生成を防ぐ(第一方式)か、あるいは後処理装置で排気ガスから窒素酸化物(NOx)を除去する(第二方式)かの選択である。
 
 第一方式の主な例は次の通り。
 
水噴射及び水エマルジョン−燃焼チャンバに水を噴射するか又は燃料と混合することによって、窒素酸化物(NOx)を約50%削減できるが、燃費が増える。
加湿式エアモーター(Humid Air Motor)−燃焼空気に水蒸気を加えることによって燃焼中に窒素酸化物(NOx)が発生するのを防止する。この方式では、窒素酸化物(NOx)を約70−80%削減すると言われているが、実際のNOx削減値は40%近くのはずだという懐疑的な見方もある。
 
 第二方式の主な例は次の通り。
 
選択還元触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)−燃焼排気ガス流が触媒コンバータを通過する前に、尿素又はアンモニアをこれに噴霧することによって窒素酸化物(NOx)を窒素ガスに変化させる。これは、4ストロークエンジンのEnd−of−Pipe処理として使うか、また2ストロークエンジンの場合はエンジンそのものの内部に組み込まれる。SCRは、窒素酸化物(NOx)排出量を90%以上削減することが可能で、大半の意見では、窒素酸化物(NOx)削減を高レベルで実現できる唯一の技術であるとされている。また、排ガス消音器(サイレンサー)が必要なくなるという利点もある。
 
6−1 【NOx以外の船舶排出物の課題】
 その他の環境問題は以下に関連する点である。すなわち、
硫黄酸化物 排ガス量が燃料の硫黄含有率に正比例する
二酸化炭素 排ガス量が燃料と関連する点
煤煙
揮発性有機化合物
 
6−2 【ディーゼルエンジン駆動による主な排出物】
 従来、ディーゼルエンジン駆動の発電装置に関する主な排ガス問題は、NOx、SOx及び微粒子物質であった。今日、微粉子物質の排出は、特にガスエンジンの場合、総炭化水素量(THC)と同様に注目が集まっている。船舶からの硫黄および窒素酸化物の排出量をコスト効率良く削減する技術は、以下に示す通り既に存在する。
 
排気プロセス
 
6−3 【窒素酸化物】
 船舶からのNOx排出は、酸の堆積、地上のオゾン層と大気汚染の原因となる微粒子群の生成、異常気象、海の富栄養化の原因となる。NOx排出は、本質的には燃料の品質ではなく、エンジン性能で決まる。港湾内でのエンジン使用で多量のNOxを排出するフェリーは、近隣地域の環境に影響を与える。一方、航海中に排出されるNOxは、分散して無害となる。
 
 NOxは燃焼プロセスにおいてエンジンシリンダ内で生成される。NOxの主な源は、大気中に含まれる窒素の酸化で、燃料に含まれる窒素から生成されるNOxはごく少量である。
 NOxの生成は局部的な高温域と、その燃焼中における持続で生じる。NOx排出を削減するためには、シリンダ内での生成を防ぐ(第一方式)か、事後処理的方法で排気ガスからNOxを取り除く(第二方式)かの何れかを選択しなければならない。
 
6−4 【第一方式(Primary Methods)】
 NOx排出削減には、コストと効率において異なる多くの方法がある。
 
6−4−1 【水の注入と水エマルジョン】
 燃焼室の中に水を噴射するか、あるいは燃料に水を混ぜると、燃焼温度が下がり、これによってNOx排出量も減少する。排出削減は潜在的に約50%程度であるが、燃費が増える。ただし設備費用は他より安価である。
 
(拡大画面:33KB)
水の注入/エマルジョン技術の仕組み
 
6−4−2 【加湿式エアモーター(Humid Air Motor)】
 燃焼空気に水蒸気を加えることによって燃焼中に窒素酸化物(NOx)が発生するのを防止する。その効果は、バンカー油の品質やエンジン負荷によって影響を受けることはない。この方式は、燃料と潤滑油の消費が減少することで、むしろコストが増えるSCR(次項参照)よりも有利である。
 
 この方式では、SCRと同じようなコストで窒素酸化物(NOx)を約70−80%削減できるといわれるが、実際のNOx削減値は40%近くのはずだという懐疑的な見方もある。







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