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3−17−2 【附属書VIに先立つEUによるNOx規制の提案】
 2006年末までにIMOがMARPOL条約附属書VIの修正によってすべての船舶用推進エンジンにより厳格な国際的窒素酸化物(NOx)基準を適用することを提案しなかった場合、欧州委員会は、外航船舶からの窒素酸化物(NOx)排出量を削減するためにみずから提案した措置の実施について検討することとなる。この行動は、2003年1月後半に米国環境保護庁が進める第2段階基準(Tier 2 Standards)の後を受けて起こされると思われる。
 
3−17−3 【オゾン層破壊物質に関する規則の強化】
 また欧州委員会は、EU域内において運航されている貨物船上で現在使用されているハロンも含めたオゾン層破壊物質について、2010年までに規則EC2037/00に基づき適用除外を取り消すことも考えている。欧州委員会では、この禁止措置を実施するための最も効率的で公平な方法は、1994年7月1日以前に建造された古い船舶に関するIMOのSOLAS条約を改正することであると見ている。
 
3−18 【経済上の方策に関するEU規則】
 経済上の方策は、効率的な環境保護パフォーマンスを推進する上でも最良の方法の1つとしてますます関心が高まっている。但し、これが可能なのは、現在の規制要件を凌ぐために最適な利用可能技術を産業界が確実に利用できる場合に限られる。
 
 欧州委員会は、交通インフラ税の導入をより広く検討する一環として、大気汚染防止及び気候変動に関わる外部費用も含めた社会的限界費用を考慮に入れながら、すべての移動形態に対してそれぞれ個別に賦課するEU方式の開発を提案するつもりである。大気への二酸化硫黄(S02)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)及び二酸化炭素(C02)の排出も含めた船舶の環境パフォーマンスに基づいて開発された海上航行税徴収制度は、そのような枠組みの一部を成すであろう。造船業界及び港湾業界の代表者との協議も含め、この提案を通知するために詳細な調査に取りかかっている。
 将来、欧州委員会は、特に窒素酸化物(NOx)について、EU域内海域における船舶からの大気汚染物質の排出削減の促進を達成するために、排出物取引制度を開発する可能性を探るであろう。しかし欧州委員会は、提案を行う前にまず、船舶からの排出物の取引の実施可能性を実証しなければならない。
 
3−19 【企業等による自主的な排出ガス削減対策措置】
 欧州委員会では、船主、船舶傭船者及び港湾当局が現行のあるいは現在検討されているEU規制提案とは別に、船舶からの大気汚染物質の排出削減に向けた独自の対策措置についても検討を始めていることを認識している。このような行動は、環境問題に取り組む企業というイメージアップにつながり、企業自身の宣伝効果につながる。また、環境保護対策に役立つ技術とは何かという問題意識も芽生え、関連する技術開発の需要を喚起、促進することにもなり、このような傾向は歓迎すべきことであると欧州委員会では捉えている。
 
3−19−1 【褒章制度の創設等による自主規制】
 欧州委員会は、大気汚染物質の排出削減に積極的に取り組んでいるEU域内の企業あるいは管海当局に対する褒章制度を創設する意向である。大気汚染物質の軽減化に対してあらかじめ定められた基準を満たした行動を実施している企業等に対して褒章(Clean Marine Award)するものである。この褒章制度創設にあたっては、欧州船主協会(European Community Shipowners Associations)3、欧州荷主協会(European Shippers' Council)4、欧州港湾協議会(European Sea Ports Organisation)5等も含めた業界代表と協力して、欧州委員会が管理運営して行くこととなる予定である。この褒章は、応募者の中から以下の項目について独立した委員会が審査を行い、最も優れた実績をあげた実施者に授与されることとなる。
 
1. 規制されている基準よりも優れた低排出運航を実施しているEU域内の海運企業またはEU域内船籍の船舶
2. 大気汚染物質をより多く排出する輸送媒体ではなく、常に低排出な船舶を傭船しているEU域内の荷主業者
3. 港湾荷役等において、大気汚染物質の排出低減化の実施促進に努めている港湾管理当局も含めたEU域内の管海当局
 
3−19−2 【国際機関及び業界間の自主的な対策措置】
 欧州委員会は、このような大気汚染物質の削減に向けた業界間による自主的な対応努力が、費用対効果の面でも優れた環境改善対策が講じられていくものと期待している。したがって、欧州委員会は、MARPOL条約附属書VI(未発効)で規定されている硫黄酸化物排出管理区域(Sulphur Emission Control Areas)での燃料中の硫黄含有量を1.5%とする規制基準も含め、同附属書に準拠した燃料油の選択基準(Code of Practice)を公表する国際海運会議所(International Chamber of Shipping)のイニシアティブを好意的的な目で捉えている。
 
3−19−3 【低硫黄含有量の舶用燃料の供給確保】
 欧州委員会は、硫黄酸化物排出量管理区域に隣接する地域(国)において硫黄含有量1.5%の舶用燃料の供給量が十分賄えられ、また、世界中のどの港でも当該管理区域に仕向ける船舶に対してこのような低硫黄濃度の燃料供給が可能となる全世界的なネットワークの構築が実現されるためにも、国際的な船舶用燃料業界内での協力が得られることを歓迎し、期待を寄せているところである。
 
3−19−4 【船舶の運用上の措置】
 欧州委員会は、減速航行の実施や停泊中における陸上電気の使用等により燃料消費が抑えられ、その結果、大気汚染物質や温室効果ガスの排出量を減少させることができるという運用上の措置についても十分承知している。このため、欧州委員会では港湾管理当局に対し、港内での減速航行や陸上あるいは船上のクリーンエネルギーである電力の使用について、入港船舶に対して奨励、要求あるいはそのための港湾施設内のインフラ整備を進めていくことを強く求めている。
 このように電力エネルギー使用や減速航行により大気汚染物質の排出要因となる化石燃料の燃焼消費を抑えて大気汚染物質の排出量を減少させる方法以外の手段として、船底防汚塗料の使用がある。これは、船体にからむ海藻など生物付着を排除して防水性を高め、推進効率を維持・向上することにより、過剰なエネルギー消費、すなわち余分な大気汚染物質の生成、排出を抑える効果をもたらす。なお、大気汚染問題の視点からは余談となるが、防汚塗料中に含有されている有機スズ等の有害物質の海洋への緩慢な溶放出が造船所労働者の健康や海洋生態系への影響が国際的な懸案事項となっており、現在、IMOはじめ欧州委員会においても、大気汚染問題と同様、船底防汚塗料に対する各種対応策の検討が進められている。
 

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