1 WTOの概要
1.1 WTOとは
「世界貿易機関(World Trade Organization)」の略称で自由主義貿易を維持・強化することを目的とした機関である。
「GATT(General Agreement on Tariffs and Trade)」という貿易に関する国際条約のもとでの体制が1948年に発足したが、その後、世界の貿易が活発になるのに伴い貿易に関する国際紛争の数も増加、内容も複雑化し、より効率的で実効性のある紛争解決ルールが求められるようになった。
このようなガット体制強化の要請にこたえ、ウルグアイ・ラウンドで、ガットを拡大・発展する形で新たなルール(WTO協定)が作られるとともに、このルールを運営する国際機関を設立することが決定し1995年1月1日にWTOが設立された。
現在、約140ケ国、世界の約90%の国が加盟しており既に150件以上の貿易紛争が取り扱われている。
1.2 WTOの原則
次の3つの原則があると言われている。
1)最恵国待遇
一ケ国に対して認めたことはWTOのメンバー国全体に適用しなければならない。
2)内国民待遇
外国の企業や人と自国の企業や人を区別しない。但し、加盟国が自由化を約束していない分野は内国民待遇を与えなくてもよいという例外規定がある。
3)透明性の原則
貿易や投資のルールが透明かつ明確でなければならない。
1.3 中国のWTO加盟
中国のWTO加盟申請は1986年であり2001年の加盟まで15年かかっている。
・1986年 中国WTO加盟申請
・1999年7月 日本との2国間交渉妥結
・1999年11月 米国との2国間交渉妥結
・2000年10月 EUとの2国間交渉妥結
・2001年9月 多国間交渉が終了しWorking Paper Report採択
・2001年11月10日 カタールでのWTO閣僚会議で中国の加盟承認 中国もWTO協定受諾
・2001年12月11日 受託後30日を経過し発効
2 WTOのルール
中国に関するWTOのルールとしては既存の「WTO協定」と加盟時に中国が約束した「WTOプラス」と呼ばれる議定書と報告書がある。
2.1 WTO協定(本文及び付属書)
WTO協定を考えるにあたっては、対象が物かサービスかで分かれる。
1)物
国境を越えて物をやりとりするという、「物の貿易」の分野に関する取り決めとして「GATT」がある。物とは船舶や舶用工業製品などである。
歴史的にみると物の貿易に関しGATTが始まり、これが国境を越えて製造拠点を作るという投資の分野にまで広がって「貿易に関する投資措置に関する協定(TRIM)」ができた。投資に関しては、まだ小さな約束しかなされていないが、日本の企業が中国に合弁会社を作る、独資会社を作るということになるとこのTRIMが関係してくる。
2)サービス
サービスについてみると「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」がある。
これは、国境を越えてサービスをやりとりするという「サービスの貿易」と国境を越えてサービス拠点を作るときの「サービスの投資」の分野に関係する。今一番ホットな分野である。
サービスの貿易とは、船舶・舶用工業製品の販売・輸出入業務や舶用製品のアフターサービスなどであり、日本の舶用メーカーが中国に出張してアフターサービスを行う場合などはこれにあたる。
これに対し国境を越えてサービス拠点を作ろうとするとサービスの投資ということになり、船舶でいうと輸出入を取り扱う商社を設立する。アフターサービスを行うサービスセンターを設置するなどがこれにあたる。
2.2 WTOプラス
中国のWTO加盟は中国がWTO協定自体を受け入れることを意味するが、更に中国はWTOの加盟交渉で多くの約束をしている。これを中国ではWTOの協定のみでなく、それにプラスして約束したと言うことで「WTOプラス」と読んでいる。具体的には、中国加盟時の議定書(プロトコール)、中国の加盟交渉時のワーキングパーティレポートである。
2.3 知的財産権等
知的財産権についてはWTOの中の独立した分野として「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)」があり、ニセモノ対策やライセンスで関係してくる。
図1 WTO協定の構成
注1: |
General Agreement on Tariffs and Trade |
注2: |
Agreement on Trade-Related Investment Measures |
注3: |
General Agreement on Trade in Services |
注4: |
Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property
Rights,Including Trade in Counterfeit Goods |
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