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3−1−4. 国内レベルでの活動
 
3−1−4−1. UK国内法制フレームワーク
 「1981年野生生物とカントリーサイド法(Wildlife and Countryside Act 1981)」は「野鳥指令」を実施するものであるが、「クジラ類を含む特定海洋動植物保護」にも適用されている。この法令により、UK独自の自然保護区である、「海洋自然保護区(Marine Nature Reserve。MNRと略記)」と「特に科学的重要性の高い区域(Sites of Special Scientific Interest。SSSIと略記)」の設定が可能となっている。SSSIは、「生態学的に重要な沿岸生息地を保護するため」に使われている。
 
 「1994年保全(自然生息地その他)規制法(Conservation(Natural Habitats, &c.)Regulations 1994)」は、「生息地指令実施のためのUK国内法制」である。
 
3−1−4−2. UK海洋自然保護調査
 「海洋自然保護調査(Review of Marine Nature Conservation。RMNCと略記)」は1999年に当時の「環境・運輸・地方省」により開始されたプログラムである。「UKの海洋環境保全と自然保護のための既存システムの効率性を調査し、改善の提案を行うこと」を活動内容としている。
 
 「共同自然保全委員会(JNCC)」と「イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの各自然保全当局を含むワーキンググループ」により調査が実施され、その調査結果と結果に基づく勧告は、2001年3月に「中間報告書」の形でまとめられている。中間報告書の他に、「海洋自然保全・保護に関する現行の地方条例調査」など、法制面の研究報告書を含む研究報告書が作成されている。
 
 「中間報告書」の中で提唱されている主な勧告は、以下のとおり。
 
●「海洋自然保全のためには、戦略的目標の設定が必要である」
 
●「地域海スケールで海洋環境管理に生態系べースアプローチを適用した場合の効果のテストは、パイロットスキームの実施によって行うべきである」
 
●「特に沿岸水域について、規制合理化を一層推し進めるべきである」
 
●「海洋関係施策の最適解を得る活動が国内外双方において行われるべきである」
 
 これらの提案の中で特に重要なものは、「自然保全」、「漁業」、「航行」、「オフショア開発」など、海洋に関わる様々な活動のセクターを「統合管理する方法を地域海スケールで実践的にテストしていくパイロットスキーム」の提案である。「パイロットスキーム」が実施される「地域海」としてアイルランド海が選択された。MSR自体が「アイルランド海パイロット(the Irish Sea Pilot)」プロジェクト開始を政府として正式表明する文書となっている。プロジェクトの結果は2004年初めに公表される予定である。
 
3−1−4−3. UK生物多様性行動計画
 「UK生物多様性行動計画(UK Biodiversity Action Plan。UKBAPと略記)」は、生物多様性条約で定められる要求事項へ対応するために開始されたプログラムである。UK BAPは、「生物種及び生息地保全と生物多様性保全を、あらゆる政策へ統合するためのフレームワーク」を確立する手段と位置付けられる。
 
 UKBAPには、「哺乳類」、「爬虫類」、「魚類」、「軟体動物」、「イソギンチャク」、「珊瑚」、「藻類」を含む、重要な海洋及び沿岸生物種や生息地について、約40の個別行動計画が含まれている。各行動計画には「生物多様性の保全、回復、拡充の目的と目標」が設定されており、関係者による「パートナーシップ」として運営されている。
 
3−1−4−4. 非在来種政策の見直し
 海洋環境との関連も含め、UK政府は「非在来種に関する政策の見直し」を行っている。「見直し」の目的は、「非在来種の伝来・定着に対応するための現行手続きの有効性を評価し、現在の国内及び国外における最適解の例を見出すこと」である。また、「非在来種伝来・拡散の主な媒介体を特定」することも目的の一つである。
 
 見直し結果には、「非在来種による影響を制限する方法の改善提案が含まれる予定であり、調査研究範囲やモニタリング、情報交換、非在来種管理などに亘ること」が予想されている。
 
「第5回北海会議」において、OSPAR条約海域内における有害な侵略的生物種の防止、コントロール、(適切な場合には)根絶の最良方法については「OSPAR条約で検討すべきである」との合意が為された。検討においては、「国際海事機関(IMO)」や「生物多様性条約」など、他の関連組織が行っている活動の結果も考慮に入れることが予定されている。
 
3−1−4−5. UKの小型クジラ類混獲対応戦略
 2001年7月に、UK政府は「小型クジラ類混獲対応戦略(UK Small Cetacean By−Catch Response Strategy)」を策定するための「ワーキンググループ」を発足させた。2000年に「バルト海及び北海の小型クジラ類の保全に関する協定(ASCOBANS)」によって設定された1.7%混獲目標の達成に向けた具体的措置が検討されている。
 
 UKはまた、「第5回北海会議」において、ハーバーネズミイルカ(harbour porpoises)の混獲を最善推測個体数の1.7%以下に削減する事を目指すと表明しており、同時に予防的目標として海洋哺乳類の混獲を最善推測個体数の1%以下に削減することを挙げている。
 
 UKの「小型クジラ類混獲対応戦略」は、「あらゆるタイプの商業漁業による影響を考慮し、UKの排他的漁業ゾーン内の全水域をカバーするもの」である。戦略は2002年度中に作成予定である。
 
3−1−5. 今後の行動計画
 MSRでは、「UK政府の今後の活動方針及び計画」が以下の様に述べられている。
 
●「EU第6次環境アクションプログラムの、2010年までに生物多様性の減少をくい止めるという目標達成のためにEC及び加盟国と共同で活動していく。」
 
●「海洋生態系とそれに人間が及ぼす影響に対する理解の促進、特に評価指標を明確にすることは、目標達成度評価のために有効である。」
 
●「海洋自然保護調査など様々なフォーラムを通じて、保全対象とすべき生物種や生息地の特定を進め、優先度順位付けを行う。」
 
●「生息地指令及び野鳥指令に基づき、これらの指令を12海里外にまで適用していく。また、公海における海洋保護の改善についても検討していく。」
 
●「侵略的な非在来種による影響を調査し、それに対する措置を取っていく。」
 
●「政策意思決定のベースとなる、海に関する理解を深めていく。海底地図整備活動もその手段である。アイルランド海パイロットスキームにより、海洋環境管理改善についての建設的アイデアが得られることが期待されている。」







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