日本財団 図書館


3. 保安強化のための国際協力
 
 港湾及び海上保安強化における国際協力の必要性を認識した米国は、カナダ、メキシコと港湾保安について二国間協議を行うとともに、IMOに対して国際的な海上テロ対策の強化を働きかけた。なお、IMOにおける検討について第2章に詳述する。
 
3.1 二国間協力
 港湾及び海上保安を強化するための二国間協力を開拓する多くのイニシアティブが存在する。これらのうちの2つは、「スマート・ボーダー(賢い国境)」行動計画と、コンテナ保安イニシアティブ(CSI)である。
 
スマート・ボーダー
 12月に米国とカナダは、「安全で賢い国境」を作るための行動計画に合意した。ほとんどの措置は、陸上の国境管理に関するものであったが、海事保安強化を図るいくつかの措置が計画に盛込まれている。
 
国境から離れた通関―トラック/鉄道貨物(及び乗務員)について、国境から離れた場所で通関手続きを行うことにより、保安を強化し、通商を容易にする統合的アプローチの開発。これには、内陸部での事前通関/事後通関、国境における国際ゾーン及び事前処理センター、港湾通過中事前通関が含まれる。
 
港湾における通過コンテナのターゲッティング―カナダ/米国に到着する通過コンテナを、情報と分析の交換により、合同でスクリーニングする。業界と協力して、海外から到着するコンテナの電子的商業積荷目録の事前収集データベースを開発する。
 
知的運輸システム―商品及び人の安全な移動を容易にする他のイニシアティブを支援するために、トランスポンダー(自動応答機)利用や電子コンテナ封かんのような、相互運用性のある技術を配備する。
 
フェリーターミナル―国際フェリーターミナルにおける税関及び移民局職員の駐在を再検討する。
 
 スマート・ボーダー努力の一環として、米国税関検査官は、バンクーバーでカナダ税関検査官と協力して、ガンマ線造影技術を使用した米国向けハイリスク・コンテナの検査を実施している。3月末には、カナダと米国は、モントリオール、ハリファックス(以上カナダ)、シアトル/タコマ、ニューヨーク(以上米国)の各港で、北米最初の到着港となる、米又はカナダ向けのコンテナに照準を合わせた米加合同税関検査官チームを配備する。
 米国は最近メキシコともカナダと合意に達したのと同様の国境行動計画を確立するための協議を行っており、3月22日に同様のプログラム設置の合意に達した。
 
コンテナ保安イニシアティブ
 先に説明したように、税関は十大対米輸出港とパートナーシップを結ぶ計画であり、いずれ他の港湾にも拡大することを期待している。本イニシアティブの主要な構成要素は、コンテナが米国に向けて出荷される前に事前スクリーニングを行うことである。1月に、税関長はこのパートナーシップの恩恵を次のように説明した。
 
 海洋コンテナに関する新たな国際保安基準を構築するために、米国は巨大港湾(メガポート)を抱える国の政府と提携して作業を行わなければならないと考える。少なくともこれらの十大港湾に焦点を合わせることから始めれば、米国に入るコンテナの半分近くのセキュリティ確保に大きな進展がある。さらに、最大級のメガポートがこのアイデアに参加すれば、他の港湾もあとに続くと考える。そして、我々の国際貿易システム防護というだけでは参加理由として不足なら、「コンテナ保安戦略」に参加するこれらのメガポートで「事前スクリーニング」を受けたコンテナの通関処理を加速するというような、追加のインセンティブを提供することも考えている。これは、税関貿易反テロパートナーシップ(C-TPAT)参加企業に対する、恩恵として考えているものと類似している。
 同時に、このようなインセンティブを提供するにおいて、税関は貿易適合検査を実施する権利を放棄するつもりはない。米国の通関港でこの検査は実施する。しかし、コンテナが、本プログラムに参加するメガポートで対テロ保安のための検査を受け、事前承認されれば明白な恩恵を受けることは確実である。ひとつに、参加港湾を使用、通過するコンテナが増えることが考えられる。
 
 2002年4月、米国税関はロッテルダム港に米国税関職員を駐在させ、オランダ税関による米国向けコンテナのセキュリティ検査を「支援」させることでオランダ税関と合意した。実質的に「事前スクリーニング」の実施合意であり、十大港としては初の合意となる。なお、米国税関は、同様の合意締結を目指してシンガポール税関とも協議中と伝えられる。
 
五大湖協調
さらに、米国"セントローレンス水路開発公社とカナダ・セントローレンス水路管理公社は、水路のセキュリティ強化について合同勧告を発表した。先に言及したように、合同勧告では、すべての外国船舶は、水路に入る前に乗員名簿を提出し、最後に寄港した4港を報告することが義務づけられている。この情報を米国USCGが検討し、危険度が高いと判断された船舶は、ニューヨーク側のMassenaにあるSnell水門の下流側ウォールにおいて、徹底的な検査を受ける。
 
3.2 IMO
 テロ事件の2ヶ月後の2001年11月後半にロンドンで開催された第22回IMO総会の焦点となったのは海事保安問題であった。テロ事件に対応して、IMOは、「旅客および乗員の保安(セキュリティ)と、船舶の安全(セイフティ)を脅かすテロ行為防止のための措置と手順の再考」と銘打った決議を採択した。
 2002年1月15日、米国はIMOの海上安全委員会(Maritime Safety Committee:MSC)に5月のMSC会合において検討を求める提案を提出した。これらの提案は、米国が世界中の海事保安を強化すると信じる多数の具体的な行動を要求するものである。以降、2002年12月を目途に、海上保安対策に係る条約改正を行う方向で、2002年2月及び5月にそれぞれ海上テロ対策中間作業部会及び海上安全委員会における検討が進められている。
 これらの検討の内容については第2章で詳述する。
 
 IMOで海事保安についての関心が高まったことを反映して、2月に海事安全部門の「航海安全セクション」は、「航海安全及び海事保安セクション」と改名された。既存の責務に加え、新セクションは海運に対するテロ行為の防止及び抑制に関する規則問題の責任を負うことになった。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION