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2.4 税関
 税関はコンテナの保安強化について2つのイニシアティブを発表している。一つは反テロ税関貿易パートナーシップ(Customs Trade Partnership Against Terrorism:C−TPAT)であり、もう一つは、コンテナ保安イニシアティブ(CSI)である。どちらも、米国に到着する前に貨物のセキュリティをチェックするという目標に重点を置いたものである。
 
C−TPAT
 この官民協同イニシアティブには、税関、輸入業者、海運会社、ブローカー、倉庫業者、製造業者が参加し、サプライ・チェーンを通しての保安強化を図っている。C−TPATパートナーシップは、米国への商品輸送の手段はもちろんのこと、製品の原産地、外国サプライヤーの物理的保安性(セキュリティ)と保全性(インテグリティ)、取引に関与する人物の身元に目を向けるものである。本プログラムに参加する企業は、税関が作成したガイドラインを使ってサプライ・チェーン内のセキュリティについて包括的な自己評価を実施する。これらのガイドラインは、手順上の保安、物理的保安、人的保安、教育・訓練、アクセス制御、積荷目録手順、輸送保安をカバーしている。それぞれの企業は、サプライ・チェーン・セキュリティ質問表の回答を税関に提出しなければならない。参加を奨励するために、C−TPAT参加企業は、検査回数を減らす、通関の迅速化を助けるために担当官を割り当てる、等の恩恵を受ける。
 
コンテナ保安イニシアティブ
 本イニシアティブの目標は、国際貿易の効率的な流れを妨げることなく、テロリストの密入国、武器の密輸入に貨物コンテナが利用される可能性を減じることにある。本イニシアティブは、(1)危険度の高いコンテナを特定するための基準制定、(2)米国に輸出される前にコンテナを事前選別(プレ・スクリーニング)するプロセスの導入、(3)コンテナ識別を改善するための技術の開発と利用、(4)スマート&セキュア・コンテナの開発、に焦点を当てる。税関はまず、米国向けコンテナの十大積出港に焦点を当てる計画である。もちろん、これら港湾以外の港湾の協力を得ることも重要である。プログラムに参加している港湾からの貨物に対する米国到着後の税関検査が、参加していない港湾からの貨物よりもスムーズに実施されると判れば、米国向け貨物をプログラム参加港湾経由で発送する荷主が増えると期待され、同時に外国港湾の管理者もプログラム参加に関心を示すだろう、というのが税関側の思惑である。
 
新情報システム
 税関はまた、多数の旧式システムを置き換えるため、新たに自動商業環境システム(Automated Commercial Environment:ACE)と国際貿易データシステムの2つの情報システムを開発中である。これらのシステムにより、危険度の高い貨物に照準を合わせるための情報の高度集積が可能となり、貨物データに関心のある他の連邦政府機関が、適切に情報にアクセスできるようになる。
 
2.5 コンテナ・ワーキング・グループ
 12月に、運輸長官は海上貨物コンテナのインターモーダル輸送を取り巻く保安問題に対処するための省際グループを設立した。このコンテナ・ワーキング・グループ(CWG)は、USCGと税関が共同で議長を務め、国防総省、エネルギー省、商務省、法務省、農務省、保健福祉省が参加している。同ワーキング・グループは、海港または、メキシコ及びカナダ国境を横断して鉄道またはトラックで米国に入るコンテナの輸送の保安度を高めるための提言を行うものである。
 USCGの港湾保安部長は、CWGの活動と焦点について、最近、次のように説明している。
 
 コンテナ保安の各側面に対処するために、コンテナ・ワーキング・グループは情報システム、保安テクノロジー、ビジネス・プラクティス、国際問題についての4つの分科会に分れて研究を行っている。各分科会は、セキュリティを向上させると同時に、我が国のインターモーダル輸送システムにおける安全と効率を確保するための提言の起草に真剣に取り組んでいる。コンテナ・ワーキング・グループは今年2月1日に国土安全保障局に最初の報告書を提出した。
 コンテナ保安の最前線に立つのは、米国税関をはじめとする行政機関であり、コンテナ・ワーキング・グループは、税関等の官庁が、ハイリスク・コンテナが米国に入るのを防止する、また米国に危険を及ぼす前に適切に検査されることを確実にするための技術及びビジネス・プラクティスを検討している。税関は、リスクをベースとした注意深い選別手法を使用してはいるが、コンテナの武器としての使用を防止するには、さらに複雑な戦略が必要であり、非介入型検査技術の開発及び選別に使用される情報の拡充が必要である。我々は、新しい税関コンテナ保安イニシアティブ(CSI)を強く支援する。なぜならば、CSIは、我々が貿易相手国と世界のグローバル・サプライ・チェーンを通してコンテナの保安性を強化するために行ったこれまでの作業を基盤としているからである。
 同様に、運輸省は新設の運輸保安局(TSA)を通して、貨物−コンテナ貨物を含む−が、米国のインターモーダル輸送システムを移動する過程で、その保安性の確保に最善を尽くす所存である。議会により期限が定められていたために、TSAは今まで専ら航空関連の保安問題に焦点をあててきた。しかし、これから同局は水・陸上輸送関連の保安問題に相当な関心を向ける所存である。
 
(2002年3月13日、USCG・海運小委員会の公聴会における証言)
 
2.6 資格証明ダイレクト・アクション・グループ
 −(Credentialing Direct Action Group:CDAG)
 運輸長官を議長とする本グループは、米国内の運輸施設における保安区域へのアクセスを必要とする全運輸労働者及び人物に身分証明カードを発給するフィージビリティと手順を研究中である。CDAGの目標は・完全なインターモーダル対応、重複した資格証明の必要を最小化、既存技術を基盤とした個人情報の不正な流出の最小化、将来可能となる技術を利用できるような柔軟性と拡張性、を備えた資格証明システムを開発することである。
 運輸省内の諜報保安担当部長は、最近CDAGの活動を次のように概説した。
 
 CDAGは、保安(セキュリティ)及び資格証明(クリデンシャリング)の実施手法を改善するために他の政府機関において導入されている手法を検討してきた。本グループは、一般調達局スマート・カード部及び国防総省アクセス・カード部に、過去数年間にわたって両部が行ってきた広範囲の作業に基づく適切な技術基準とベスト・プラクティスについての指導を仰いでいる。我々は、運輸業界の人々に依頼して、業界内で現在行われている努力を確認し、現在利用されている、または開発中の技術の特定、評価を図っており、これらの活動をどのようにすれば我々の開発努力に最大限に組み込むことができるかを検討している。
 我々の活動は、まだシステムの開発、維持コストに関する問題を具体的に検討する段階には至っていない。総コストの査定が可能になる前に、検討しなければならない重大なインフラストラクチャーの問題が存在する。
 CDAGは、機能要件特定の最終作業を行っている。これは、運輸産業全体に敷衍するのに必要な相互運用性を達成するために、資格証明システムが保有すべき主要素を特定するものである。我々は、多くの主要運輸労組及び業界組合と相談し、この作業を進めている。CDAGは、運輸産業及び運輸労組の代表を含めたミーティングを開催している。進捗状況に関するブリーフィングと業界及び労組フィードバックのためのミーティングが1月22日に開催された。海事運輸システム全国諮問審議会(Marine Transportation System National Advisory Council)にも説明を行い,本グループの活動と提言についてフィードバックを提供する機会を提供した。我々は、海事関係者から寄せられている協力と関心の強さを喜ばしく思っている。
 
2.7 移民帰化局(INS)
 移民帰化局(出入国管理局)は、海路により到着する旅客及び乗員の入国検査を担当している。同局は国境警備要員として1,790人の増員を計画している。これには、陸、空港、港湾の入国地点における警備拡充のために1,160人の入国管理官の新規投入が含まれている。2003会計年度INS予算は、これらの増員予算として7億1,200万ドルが増額される。このうち、どの程度が海事関係に充てられるかは不明である。さらに、286名がINSの支援と事務能力を強化するために新規雇用されることになっている。同局はまた、国境の入国地点における保安維持能力を改善するために、組織改編された。
 
2.8 MarAd
 MarAdは、USCG及び運輸保安局(TSA)と共に、港湾・海上保安強化のための補助金プログラムを実施している。補助金申請は現在受付中であり、MarAdは6月に補助金給付を開始する予定である。これらの補助金は、2002年国防総省歳出予算法案で配算された9,330万ドルから賄われる。補助金申請専用ウェブサイト(www.portsecuritygrants.dottsa.net)で、申請のための情報のダウンロードが可能であり、ウェブによる申請も受け付けている。
 国土安全保障におけるMarAdの役割について、最近MarAd長官は次のような発言を行った。
 
 私の局である海事局(Maritime Administration)は、常に港湾保安において重要な役割を果たしてきた。我々の責務のひとつは、米国の商業港湾に港湾保安指導を行い、政府と商業港湾関係者の保安努力を調整することである。MarAdは、米国港湾における犯罪と保安についての大統領委員会の共同議長を、また全米港湾即応ネットワークの議長を務め、戦時体制下で港湾保安と重要インフラの防護を確保するうえで軍とともに主要な役割を果たしている。我々は、西半球港湾保安訓練トレーニング・カリキュラムを開発し、米大陸の貿易相手国から約300人の港湾職員を受け入れ、訓練している。また、キングス・ポイントの商船学校は、業界に保安訓練を提供している。我々はまた、港湾コミュニティーと協力して、港湾内及び陸上のインターモーダル・コネクションを通して、保安上の恩恵を与えるテクノロジーの先進的利用を図っている。わたしは、港湾保安改善のための我々の努力を継続する機会を歓迎する。
 
2.9 米国海軍
 海軍沿岸哨戒艇が、米国港湾に出入国する商船の随行のみならず、艦艇を対象とした対テロ/軍関連施設周辺警戒(Force Protection)を実施するために配備された。哨戒艇は海軍により人員配備、運行されるが、少人数のUSCG職員チームが各哨戒艇に同乗し、法執行のための乗船を行う。西海岸に2隻、東海岸に3隻が配備された。
 
2.10 セントローレンス水路
 水路に入る前に、上り航路のタンカーはすべてシーウェイ・トラフィック・コントロールに各乗員の氏名、職務、国籍、生年月日、出生国を記した乗員名簿の提出を義務づけられている、上り航路タンカーはまた、モントリオールまたはセント・ランバート水門で、リスク査定検査を受けることが義務づけられている。カナダ及び米国籍タンカーについて、リスク査定乗船検査は最初の上り航海のみに義務づけられ、「リスクを特定する」ような乗員の交替がない限り、その後の乗船検査は必要とされない。全ての外国籍船は、シーウェイに入る前に乗員名簿を提出し、シーウェイに入る前に寄港した最後の4港を報告しなければならない。
 
2.11 州政府及び地方自治体
 テロ対策の主なものは連邦政府機関のイニシアティブであるが、港湾保安強化のために州、地元レベルでいくつかのイニシアティブが実施されている。
 港湾の産業組合である米国港湾管理委員会協会(AAPA)によれば、アンケートに回答した58の公共港が、9月11日の同時多発テロ以来保安関連の拡充に総額約5,000万ドルを費やしたといっている。個々の港湾の出費は、最低で数千ドル、最高で1,000万ドルとなっており、港湾施設の多様性を反映している。ほとんどの出費は人件費であり、これには新規雇用や超過勤務が含まれている。専門のサービスを利用して保安要員のアップグレードを行い、訓練を強化している港湾もある。9月11日以降に発生した他の出費の大半は、フェンス設置、IDシステム、資格証明、ゲートや入口のコントロール等といったアクセス制限や探知制御システムに費やされた。
 他の地元レベルのイニシアティブとして、ロング・ビーチ港はUSCGと連携して、到着船舶に防波堤の付近に停泊し、検査を受けるように指示するプログラムを導入した。また、AAPAは保安委員会を設置し、海事保安基準のマニュアルを作成している。州レベルでは、サウスカロライナ州とジョージア州の議会が、州内港湾に港湾労働者の犯罪歴照会や資格証明要件を義務づける法案を審議中である。







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