日本財団 図書館


特別保安措置
 港湾の安全(セイフティ)と保安(セキュリティ)を確実にするために必要と判断される新たな保安措置を導入、執行する権限がCOTP(Captain of the Port:USCG港長)に与えられた。USCGの保安上の懸念に対処できない施設は、COTPにより業務停止または、罰金が課されることもありえる。すでに実施されている措置として、複数の危険貨物取り扱い施設に、警備員の増員やその他の保安強化が要請された。また、同時多発テロ後、ボルチモアのCOTPは、チェサピーク湾のコーブ・ポイントにおけるLNG輸入ターミナルの再開について公開討論会を開催した。9月11日まではターミナルの再開は確実と見られていたが、テロ活動の可能性を考えると、このような施設の安全性に対して、相当な懸念が存在する。
 
海軍艦艇保護
 USCGは、米国の航行可能水域における全ての海軍艦艇の周囲500ヤード(約450m)を海軍艦艇保護海域に指定した。これらの保護海域は、2002年6月15日まで有効とされている。
 
旅客船保安
 COTPは、旅客船及び旅客ターミナルについて、レベルIII警戒態勢を導入するように指令を受けている。レベルIII警戒態勢は、船舶またはターミナルに対する非合法の脅威が存在する蓋然性がある、または差し迫っており、諜報活動によりテロリストが特定の標的を選んだという徴候がある場合に実施される。レベルIIIの旅客船・ターミナル保安措置は、フェンスまたは壁で囲み、侵入者探知機とパトロールにより保護された立入り禁止区域を船舶周辺に設置することを義務づけている。その他の保安措置には、乗客の手荷物、貨物、店舗について、すべてをスクリーニング、乗船前の乗客のスクリーニングが含まれる。サンディエゴ湾では、湾内で係留中または航行中のクルーズ船から100ヤード(約90m)以内に船舶が近づくことを禁ずるクルーズ船保安区域が制定された。
 
シーマーシャル
 USCGは、エアマーシャル・プログラムに準拠した、武装航海士随行プログラムを開始した。シーマーシャル・プログラムはサンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ港で導入され、シーマーシャルが、米国の航行可能な水域を通過中に、船上で船長、航海士、その他のブリッジ航行担当者の安全を確保する。シーマーシャルはまた、マイアミ、ホノルル、ニューオリンズ、ハンプトンローズでクルーズ船への伴走に利用されており、アラスカ州のクック・インレットではLNG船への伴走も行っている。USCGによれば、シーマーシャルは2月初めの時点までで1,000隻以上に伴走した。本プログラムを更に拡充するかどうかは、予算に及び将来の港湾に特定した保安ニーズにかかっている。
 
海上安全保安チーム
 米国港湾及び水路における海上テロの脅威を巡視、察知、対処するために特別に訓練を受けた即応チームが3組結成された。それぞれのチームは40名の現役USCG職員からなる。9月11日以来、これらのチームはボストン、ニューヨーク、ガルベストン、ニューオリンズ、ハンプトンローズ、ピュジェット湾に展開している。3月にUSCGは、特別チーム用に18隻の小型即応艇を発注した。
 
保安機能の再編
 テロ攻撃の後、USCGは新たに港湾保安部を開設し、これまで海上安全保安環境保護局下の多くの部署にばらばらに割り当てられていた保安プログラムを同部の下に集約した。この新たな部は、従来通り海上安全保安環境保護局内に置かれているが、Anthony Regalbuto 大佐が部長として、USCGの保安イニシアティブ全ての監督にあたっている。
 
一般ワークショップ
 USCGは、港湾・海上保安強化について業界からコメント及びアイデアを聞き取るために公開ワークショップを開催している。2002年1月28〜29日にワシントンで開催されたワークショップには、350人以上の業界及び政府関係者が出席した。当該ワークショップは港湾保安、船舶保安、施設保安、資格証明システムの4つのカテゴリーに分けられた。それぞれのワークショップは以下の点を議題とした。
 
・十分な保安を提供するのに不可欠な要素
・これらの要素を達成するのに必要とされる手法、活動
・その手法が成功しているかどうかを判断するための成果基準
・状況毎に新たな基準を適用する対象者
 
 たとえば、港湾保安ワークショップでは、十分な港湾保安を提供するために不可欠な3つの主要要素を特定した。
 
人的保安―労働者は保安身元照会を通過し、効果的な照会を行うよう教育を受けなければならない。
情報保安―全ての情報は、不正アクセス、盗取、不正流出を防ぐように保護されなければならない。
物理的保安―港湾に対するアクセスは制御されなければならない。
 
 これら3要素のうち、第一の要素である人的保安を達成するために必要な手法または行動は、次のように特定された。
 
・労働者の資格について全国的な基準の設定
・身元照会の実施
・確実な(セキュア)身分証明カードの発行
・達成程度を評価するための訓練及び演習の実施
・均一な犯罪報告統計の使用
 
 しかしながら、港湾保安の達成基準及び、基準の適用対象を定義する段になって、ワークショップは、意味のある結論を出すことができなかった。身分証明バッジは全国的基準に従うべきである、とか、全ての身分証明カードは明確な顔写真付きでなければならない、とか、身元照会のデータベースはすべて全国的なものでなければならない、といった曖昧なコメントが出された。
 さらに、ワークショップの開催後も、関係者からUSCGに多くのコメントが寄せられている。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION