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1.5 2003会計年度予算決議案、歳出予算法案
 港湾及び海上保安強化を目的とする多くのイニシアティブが運輸省、国防総省等の2003会計年度予算決議案及び歳出予算法案に盛込まれようとしている。これらのイニシアティブの多くは大統領の予算要求に盛込まれている。議会審議の過程で、さらに追加されることも考えられる。本章では重要性の高いイニシアティブをいくつか概説する。
 
USCG
 USCGの国土海上安全保障への貢献のための予算として、2003会計年度USCG予算要求には、港湾保安強化のための4億ドル強が含まれている。これには、USCGが「マリタイム・ドメイン・アウェアネス」と呼んでいるものの構築予算として8,800万ドルが含まれている。この「アウェアネス(存在、状況の認識)」の目標は、危険因子が米国の領海内に入る前に、海上(マリタイム・ドメイン)で運航する船舶、貨物、人物についての情報を確保することである。さらに1,800万ドルが160人のシーマーシャル予算として、4,800万ドルがUSCGの安全保安チーム(6チーム)の支援予算として、5,100万ドルがUSCG職員の拡充に、2,900万ドルがUSCGの国内及び国際啓蒙(アウトリーチ)事業拡充予算として要求された。アウトリーチ事業の予算は、全世界の港湾保安対策のために緊急対応計画を作成する担当官110名に資金を提供するものである。
 
海軍
 海軍の2003会計年度予算要求では、国土安全保障活動に3隻の予備役フリゲート艦の現役復帰と13隻の沿岸哨戒用艦艇のための予算が要求されている。加えて、海軍はUSCGの国防ミッション用装備の拡充を行い、海軍及び海兵隊人員が国土対テロ防衛戦用に配備される。全体で、海軍は2003会計年度に、状況的アウェアネス強化予算として6億5,800万ドルを要求しており、この一部(金額は未定)が港湾・海上保安関連予算として使用される。
 
税関
 2003会計年度予算は、国境検査の実施予算として、23億ドルを税関に割り当てている。この金額は2002会計年度予算額よりも6億1,900万ドル増となっている。この予算で税関は新たに800人の検査官及び捜査官を雇用し、国境、港湾における保安活動を強化する。当該予算はまた、貨物検査を支援する先進技術の購入にも充てられる。
 
運輸保安局(TSA)
 運輸省内に設置された運輸保安局は、多岐にわたる保安関連事業を実施するために2003会計年度予算として48億ドルの予算を要求している。これには、港湾保安強化に特定されたイニシアティブも含まれている。2003会計年度予算要求額は、TSA設立初年度である2002会計年度配算額の3倍以上である。これらの予算のほとんどは空港警備強化に当てられることになっており、港湾セキュリティに用途を指定した部分があるかどうかは不明である。
 
省庁連携
 2003会計年度予算では、さらに7億2,200万ドルが、横(連邦機関の間)と縦(連邦、州、地方自治体政府間)の両方向におけるデータの共有、交換のための情報技術利用プログラムの立ち上げに充てられている。このうち、一部が港湾海上保安強化に充てられる。
 
1.6 その他の港湾海上保安法案
 9月11日以降、港湾・海上セキュリティ対策として、様々な法案が上院、下院に提出された。これらの法案は全て、S.1214またはH.R.3983のいずれかに組み込まれ、または取って替わられた。各法案について概略を次に挙げる。
 
空港・港湾テロ防止法(S.1429)
Airport and Seaport Terrorism Prevention Act
 2001年9月14日に、ジョン・エドワーズ上院議員を提案者、ベンジャミン・ネルセン議員を共同提出者として上院に提案され、通商科学運輸委員会に付託された。同法案は、1936年商船法を修正し、港湾保安インフラ拡充に補助金を給付するものである。本法案はS.1214により代替された模様である。
 
国家危機運輸調整法案(S.1462)
National Emergency Transportation Coordination Act
 2001年9月25日に、オリンピア・スノウ議員により上院に提出され、通商科学運輸委員会に付託された。本法案は、連邦緊急運輸局を運輸省内に設立し、国家危機の際に、特に海上輸送を調整するものである。本法案はS.1214に代替された模様である。
 
海上保安強化法案(S.1728)
Maritime Security Advancement Act
 2001年11月16日にオリンピア・スノウ議員により上院に提出され、通商科学運輸委員会に付託された。本法案は貨物の保安性を高め、不正開封を防止し、港湾関係テロの脅威を軽減することを趣意とした研究開発を優先するよう、運輸長官に義務づけるものである。本法案はS.1214により代替された模様である。
 
港湾脅威保安法案(S.1587)
Port Threat and Security Act
 2001年10月30日にジョン・ケリー議員を提案者、ジョン・ブロー議員、アーネスト・ホリングス議員を共同提案者として上院に提出され、通商科学運輸委員会に付託された。本法案は、米国政府に虚偽の情報を提出した経歴があり、乗船検査マトリックスで優先順位3以上であり、所有権の追跡ができないような登録をしている船舶であって、米国に入国している船舶の旗国のデータを作成し、維持することを運輸長官に義務づけるものである。本法案の内容はS.1214に組み込まれた。
 
米国保安法案(H.R.3555)
United States Security Act
 2001年12月20日に、ロバート・メネンデズ議員により、117名を共同提出者として下院に提出され、エネルギー・通商委員会に付託された。特に、本法案は運輸省が米国上位50港の脆弱性評価を実施するための予算を認め、USCG内に海上保安副長官のポジションを新設し、シーマーシャル・プログラム、国内港湾保安タスクフォース、海上保安研究所、テロ対応計画の作成予算を認めるものである。本法案はH.R.3983により代替された模様である。
 
2001年港湾海上保安法案(H.R.3013)
Port and Maritime Security Act2001
 2001年10月3日に、コリン・ブラウン議員により、13名を共同提出者として、下院に提出され、運輸・社会資本委員会と軍事委員会に付託された。本法案は、港湾の安全を高めるプログラムを調整するためのタスクフォースを設立し、運輸長官に港湾脆弱性評価を実施するための基準と手順を設定することを義務づけ、1936年の商船法を修正し、港湾保安インフラ拡充に融資保証と補助金を提供することを認めるものである。本法案はH.R.3983により代替された模様である。
 
2001年港湾海上保安法(H.R.3437)
Port and Maritime Security Act2001
 2001年12月6日に、クレイ・ショウ議員により、18名を共同提出者として、下院に提出され、運輸・社会資本委員会、司法委員会、軍事委員会に付託された。本法案は港湾保安タスクフォース、地方港湾保安委員会を設立し、海上保安専門家の訓練及び資格認証を義務づけ、港湾保安インフラ強化資金を提供するものである。本法案は、諸外国と国際協定を結び、港湾保安リスクを特定し新たな保安基準を導入する努力も要求している。本法案はH.R.3983により代替された模様である。
 
港湾保安テロ防止法案(H.R.3621)
Port Security and Terrorism Prevention Act(HR.3621)
 2002年1月24日に、デビット・ビッター議員により下院に提出され、運輸・社会資本委員会、歳入委員会、司法委員会に付託された。本法案はS.1214と同様の内容であるが、S.1214にはない海賊行為の防止と、乗船妨害、虚偽情報の提供に対する罰則についての文言が盛込まれている。また、S.1214の貨物識別、追跡に関する条項は含まれていない。本法案はH.R.3983により代替された模様である。







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