日本財団 図書館


港湾保安の財政責任
 本論題についての公聴会は2002年3月14日に開催され、MarAd長官及び海運会議所(Chamber of Shipping)、米国港湾管理委員会協会(AAPA)、ジャクソンビル港、港湾ターミナル運営者の連盟の代表が証言を行った。
 MarAd長官は、MarAdが港湾保安強化のために、港湾管理委員会及びターミナル運営者に対して提供を予定している財政援助について説明した。
 
 ご承知の通り、2002会計年度国防総省歳出予算法で、新設の運輸保安局(TSA)は、重要海港の施設及び運営上の保安強化費用の競争的補助金予算(competitive grant)として9,330万ドルの配算を受けた。2月28日にミネタ運輸長官は新たに港湾保安補助金プログラムを開設し、重要港湾における保安強化資金提供を行うことを発表した。本プログラムは我が国の重要港湾を通過する旅客及び貨物のための保安強化措置の導入を加速するものである。保安担当運輸次官、私(MarAd長官)、USCG長官、またはそれらの代表者からなる選定委員会が、国土安全保障の観点から見た緊急性の高さを考慮して、補助金の支給を決定する。
 補助金交付プロセスを加速するために、我々はインターネット上のシステムを開発した。www.portsecuritygrantsl.dottsa.netで、申請者はすべての関連情報にアクセスすることができる。加えて、申請はすべてウェブサイトから提出することができる。我々は、すぐに予備的申請を受け付けており、6月には補助金の交付を開始できると期待している。
 プログラムには2種類の補助金カテゴリーがある。(1)脆弱性を確定し、その改善戦略を特定する港湾又はターミナル保安評価に基づいた、保安評価と改善戦略、(2)施設強化とオペレーション上の保安強化、これには施設アクセス管理、物理的保安、貨物保安、旅客保安が含まれる。
 補助金評価プロセスの一部として、TSA、MarAd、USCGが、補助金が重要な港湾保安ニーズのために活用されることを確実にするために、多くの要素について検討する。申請者は、重要海港であると見なされるべき理由についての情報を提供する。保安強化カテゴリーで補助金申講を行う場合は、保安脆弱性の性質を特定する情報、それらに対処する解決策提案、そして対処を怠った場合の予測を報告しなければならない。港湾保安のニーズは広範であり、全国から多数の相応な申請があると期待しており、そこから補助金交付先を選定するのは困難な仕事である。こういった理由から、我々はまず、重要港湾に焦点を当てることとする。実際の行動を通して、すでに港湾保安強化を開始している港湾も優先される。また、この予算の一部を、初期導入(proof of concept)プロジェクトにも使用するつもりである。
 
 米国港湾管理委員会協会(AAPA)代表は、港湾保安強化にともなう港湾管理委員会の負担を算出し、コスト負担を相殺するために連邦政府の支援が必要であることを強調した。
 
 将来のニーズに関し調査したところ、公共港湾業界は将来の保安強化に少なくとも2億7,850万ドルを投資する計画であるという回答があった。42%は、職員、ゲートやエントリーのコントロール、監視システムに投資される。これらの監視システムの多くは、脅威や問題の特定を助けるために、税関及び法執行機関によって使用される。この他に、照明、X線探知機、フェンス、放射線探知器が主要な設備投資カテゴリーとなっている。
 議会またはUSCGが、さらに新たな施設強化義務を追加すれば、コストはさらに上昇する。現在の補助金は、主要施設に限られている。委員会と上院法案にはさらに厳しい保安強化義務が盛込まれている。2000年秋、米国海港の犯罪と保安に関する省際委員会は、港湾保護のために必要と考えるコストの概算を行った。この数字は9月11日よりも相当以前のものである。AAPAは、この報告書に盛込まれた強化勧告に基づいて、AAPAの米国会員が負担するコストは22億ドルにのぼると推定する。省際委員会によるコスト概算は、港湾一件あたり1,200万ドルから5,000万ドルであった。
 州・地方自治体政府の機関として、公共の港湾管理委員会は、連邦政府の支援と補助を受け、新たな要件が予算のつかない連邦政府による命令になることを避けなければならない。そのためには補助金が最適である。我々は下院運輸インフラ委員会に、米国の港湾保安を助けるための補助金プログラムの継続権限を認めることを強く促すものである。
 
ジャクソンビル港代表は、最近成立したフロリダ港湾保安法への完全適合の影響、そして、港湾保安アップグレードに必要な改善を実施するために連邦政府の援助が必要な理由についての証言を行い、関心を集めた。
 
 港湾だけが負担することになれば、ばか高い保安コストにより、多くの港湾は廃業に負い込まれるだろう。港湾がこれらのコストを、顧客である海運会社、荷主、ターミナル運営者に負担させようとすれば、彼らは国外、カナダかメキシコの港湾にビジネスを移す可能性がある。
 フロリダ海港保安法の要件に完全適合するために、ジャクソンビル港湾管理委員会は約6,500万ドルの設備投資を行わなければならない。相当な金額ではあるが、これは一回限りの設備投資コストであり、対処可能である。最も重大な問題は、年間440万ドルの経常費または運営費である。この440万ドルの内訳は、マリン・ターミナルにおける継続的警備活動の費用として約350万ドル、アクセス用バッジの点検とターミナル・ゲートの警備のために必要な保安要員のコスト90万ドルである。440万ドルの経常コストにより、当港湾の運営予算は25%増となるが、これを相殺する収入は生まれない。このような運営コスト増は、当港湾の債務返済カバー率に大幅な影響を与え、1億ドルを超える収入公債について支払不能となる。その結果、港湾保安コスト支払うために、当港は負債をカバーすることができなくなり、25,000人の地元雇用と、ジャクソンビルにおける港湾活動から直接的に発生する15億ドルの年間給与が失われることも十分有り得る。
 それゆえに、港湾産業に携わる我々は、連邦政府及び州政府からの財政支援をぜひとも必要としている。港湾保安は深刻な問題である。港湾事業の性質と、ひとつの港湾が扱う貨物は全国津々浦々からやってきて再び全国に出て行くものだという事実を考えると、港湾保安は単に地域の問題ではなく、国家的問題である。連邦政府と州政府が密接に連携し、港湾保安と国家の安全を確実にするために発生する設備投資コストと運営コストの両方について、港湾がぜひとも必要としている資金を提供することは、絶対的義務である。さもなければ、残念ながら、多くの港湾は財政的惨事にみまわれ、地域の経済に取り返しのつかない打撃を与えることになる。
 最後に、そして最も重要なことは、急迫した危機感のもとで運営されている我が国の海港は、港湾保安設備投資を行い、地元の警察機関とセキュリティ契約を結んでいる。それゆえに、我々は、今日議論の主題となっているような全国法やホリングズーグラハム(S.1214)法案に、重要な保安インフラを提供し、法執行要件を満たすために港湾が費やしている費用を補償する適切な文言を盛込むよう提言し、お願いしたい。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION