ニューヨーク/ニュージャージー港の港湾通商部長もまた、コンテナ検査により提示される難題について、考えさせられる発表を行った。
歴史的に、海上輸送は、速さ、コスト、信頼性を三種の神器とする−すなわち、貨物を目的地に、最も速く、最も安く、そして約束した時間に確実に運ぶことである。利ざやが非常に薄いこの産業において、強調されるのはセキュリティではなくコストであった。今日の環境において、セキュリティを最優先しなければならないことは承知している。経済性と国家安全保障のバランスがとれたシステムを構築するのが我々の挑戦である。我々の目的は、米国港湾に陸揚げされる前に、コンテナ一つ一つについてその内容物を正確に把握しているという確信を強化することにあるべきだ。ニューヨーク/ニュージャージー港には一日6,000個のコンテナが到着し、その中身を一つ一つ実際に検査するのは不可能である。最も重要なことは、大部分は合法的なコンテナの中から、危険度の高い貨物を選別し、その例外に対処する方法を見つけることである。USCG長官のロイ大将は、海上「ドメイン・アウェアネス」という概念を導入し、ボナー税関長は、「国境を外に押し広げる」よう挑戦している。我々が従うべきなのは、この種の考え方である。このアプローチには、世界中から我が国の流通システムにコンテナを輸送するロジスティクス・チェーンを体系的に理解することが必要である。
コンテナを輸送するために、典型的な貨物取引では、25もの関係者が関与する−買手、売り手、銀行、保険会社、海をはさんで両側の内陸輸送者(道路、鉄道)、少なくとも2つ、しばしばそれ以上の港湾、海運会社、政府、コンソリデータ、その他である。これらにより、30〜40の書類が発生し、その多くで未だに紙による書面を要求されている。これは複雑なプロセスである。コンテナの物理的流れは、システムの一つの次元にすぎない。それ以外に理解すべき3つの要素が存在する。金銭の流れ、積荷に関する情報とデータの流れ、そして最後に貨物が配達されるために発生しなければならないアカウンタビリティの流れである。
今日、メーカーまたはコンソリデータの倉庫(港湾から離れた内陸にあることが多い)に貨物を搬入する際の保安基準は存在しない。また、コンテナの封かんについても保安基準はない。貨物は、ひとつの輸送モードから別の輸送モードヘと移され、その方法や、取り扱い者が変わった際のコンテナの保全性(インテグリティ)に関して誰が責任を持つかについての基準も存在しない。外国港湾には、ある種の保安基準について責任はない。一般の荷主には、コンテナの内容物、サプライ・チェーン内の位置について、正確に把握し報告する貴任はない。積荷書類は、貨物が米国に到着するまで、完全、正確である必要もない。
我々は、米国港湾行きの船舶に積み込まれる前にコンテナの内容を確認する措置が取られるべきだと考える。このプロセスには、コンテナが保安上安全な環境で荷造りされ、不正開封を防止するよう封かんされ、責任当事者の管理下で輸送されたという証明書が含まれるべきである。貨物の保全を確実にし、船舶の到着に大きく先立って、完全かつ正確なデータの税関への提出を義務づけるような管理責任の流れを確立すべきである。
コンテナ・セキュリティの最後の砦は「狙いをつけた」コンテナが米国に到着した際の、スクリーニング、探知、検査であるべきである。ご存知のように、税関が実際に検査を行うのは米国に到着する貨物の約2%でしかない。そして、全てのコンテナを検査すべきだと論じる声もある。それは非現実的であるだけでなく、不必要であり、運輸システムを麻痺させることになる。ニューヨーク/ニュージャージー港では、コンテナ検査率を5%に引き上げれば、月間4,500個のコンテナが延滞し、400人の検査官増員が必要であり、業界負担は月に120万ドル増大すると税関は見積もっている。
サプライ・チェーン管理に関与している小売業者及び企業連盟の代表は、より厳格なコンテナ検査手順を導入することの複雑さと、そのような手順の導入には国際協調を求める必要性があることについてコメントした。
コンテナがどれも同じように危険なわけではない。コンテナへの貨物搬入と封かんを管理するための対策を講じている、有名な米国大企業の貨物が入ったコンテナによるリスクは、防護措置を講じていない企業のコンテナのそれとは異なる。中央アジアの工場を起点とするコンテナと、ヨーロッパの工場を起点とするコンテナでは、そのリスクは異なる。これらの理由で、航空機に積み込まれる荷物と同等のセキュリティをコンテナに要求する施策は不適切である。特にすべてのコンテナの検査−消極的、積極的を問わず−を義務づける提案は、不必要であるばかりではなく、実行不可能である。国際サプライ・チェーンの流れを止め、米国の小売施設、製造施設に経済的混乱を巻き起こすことなしに、このような措置を実施するだけのリソースは存在しないのだ。
例えば消極的なX線型の検査がコンテナ1個あたり500ドルかかるとすれば−現在のところ、実際に荷主が支払う金額はこの二倍以上になるのだが−検査率を2%から100%に引き上げた場合、業界負担は約3億6,000万ドル増大する。一回の検査に約30分かかるとすれば−実際のところ現在X線検査にかかる時間はこれよりも長い−これらのコンテナをすべて検査し終わるには37年かかる。もし政府が検査率の引き上げを譲らないならば、コストと必要な労働力は飛躍的に上昇する。
コンテナ・セキュリティの強化は、複雑かつバランスの取れた解決策を必要とする複雑な問題である。国際協調、外国の検査会社の質、そして輸入業者が貨物を盗難や転用から守るための措置を取ることを評価する、リスク評価に対するバランスのとれたアプローチを考慮せずに、単純に「国境を外側に押し広げる」という簡単なものではない。荷受人と経過情報を追跡する情報システムが重要であること、そして、おそらくこの情報がリスク評価にとって、貨物についての詳細な申告よりも重要な要素であることを政府は理解すべきである。最後に、当然IMRAとWCWCは、コンテナ・セキュリティに関与する関連官庁が、確実に協調し、情報をシェアするよう本委員会が取り計らうことを期待している。特に、新たな保安評価に必要な情報システムは、税関ACE及びITDSシステムを中心にして構築するよう委員会に強く勧めるものである。
米国の輸入大手であるホーム・デポ社のロジスティクス担当者は、同社の大手商品輸入者としての経験に基づいて、コンテナ・セキュリティ強化手法についての提案を行った。
卸売業者と小売業者との間の実践的知識により、安全なサプライ・チェーンの基盤となるビジネス標準とビジネス・プラクティスが創出される。管理の行き届いたサプライ・チェーンを有する輸入業者にはコンテナの事前通関を許可するべきである。サプライ・チェーン内の特定のポイントでコンテナの封かんを追跡するプロセスを加えれば、コンテナの保全性(インテグリティ)を強化することができる。政府の開発による共用システムにより提供されるサプライ・チェーン情報により、政府機関は積荷のリスク評価を行うことができる。政府機関は、外国港湾の保安性評価のための基準を制定し、米国の国境における貨物検査の基準制定に役立てるべきだと我々は考える。
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