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9−3−2. 粉体製造と実験結果
1)粉体の作製および粒径の影響
 粉体の作製は、文献の特許情報に抵触する可能性があるので、下記に示す固体反応法と噴霧分解法の2種類を考案し、作製した。(図9−7、9−8)
 
A. 固体反応法
 
図9−7 固体反応法での作製法
 
B. 噴霧熱分解法
 
図9−8 噴霧熱分解法での作製
 
 前記方法にて作製した粉末に、CO2ガスを流し、ジルコニウム酸リチウムの吸着・離脱による重量変化を、熱重量測定(TG)にて比較した結果を図9−9に示す。
 
図9−9 各種製法での熱重量測定結果
 
 吸着能力は、噴霧熱分解、固体反応、市販品の順に低くなってくる。
 噴霧熱分解法は、10%と高い吸着能力を持っている。
 
 焼成温度の影響を、噴霧熱分解法にて調べた結果を図9−10に示す。
 低温で焼成しているものは、吸着性能が良い。固体反応法で作製したものも同様である。
 
図9−10 噴霧熱分解法での焼成温度の影響
 
 次に、固体反応法により作製したサンプルを用いて粒子サイズの影響を調べた結果を図9−11に示す。
 
図9−11 固体反応法での粒子サイズの影響
 
 800℃での粉砕品は、粒径10〜20μmであるが、1000℃での粉砕品はボールミルにて行ったので、粒径1〜5μm程度である。800℃に比べて、1000℃の粉砕品の上昇率が高いことから、粒径の影響は大きい。
 市販品で粒子サイズの影響を調べた結果を図9−12に示す。
 市販品で粒子サイズを調べた結果では、粒子サイズの影響は無いが、固体反応法で作製したものでは、図9−11で示すように、粒子サイズの影響が見られている。従って、粉砕することによって、粒子サイズが減少すると共に結晶欠陥が増大している可能性が考えられる。
 
図9−12 市販品での粒子サイズの影響
 
 ボールミル粉砕品と粉砕前のサンプルの組成を、X線にて比較すると、ジルコニウム酸リチウムの結晶性に変化が見られ、ジルコニア(ZrO2)の形成が見られた。
 粒子サイズの影響を模式図的に表した結果を下図9−13に示す。
 
図9−13 粒子サイズの影響の模式図
 
 表面積と焼結性は、共に粒径の小さいほうが良い。また、前記のように、粒子サイズが減少すると共に結晶欠陥が増大していることが考えられることから、ジルコニウム酸リチウム(Li2ZrO3)は、Li2+XZrO3+σの形に変化している可能性がある。
 作製した粉末の繰り返し安定性を調べるために、熱処理を行った後に熱重量測定(TG)にて比較した結果を下図9−14に示す。試験した試料は、固体反応法−1000℃焼成−ボールミル粉砕品である。
 
図9−14 熱処理の影響
 
 熱処理を行った結果、吸着性能は減少してしまった。X線にて構造を調べると、ジルコニウム酸リチウム(Li2ZrO3)の結晶性は増加し、ジルコニア(ZrO2)分が減少していた。
 これは、熱処理によって粒子サイズが増大した可能性と、前記のようなLi2+XZrO3+σへの結晶欠陥の減少が原因として考えられる。
 
2)コーティング品の比較
 前記のように、多孔質体に接着させるために、粉体をスラリー状にしてコーティングを行う必要があるが、粉体にコーティングするとCO2吸着、離脱を損なう可能性があるので、事前に吸収、離脱性を確認することとした。
 使用するコーティング剤は、薄膜でガスを通すと言われている下記2 種類を選定した。
(1)Al2O3+SiO2系コーティング剤
(2)ZrO2 系コーティング剤
 市販品の粉末に上記2種類のコーティングしたものを熱重量測定(TG)した結果を下図9−15、16に示す。
 
図9−15 Al2O3+SiO2系コーティング剤試験結果
 
図9−16 ZrO2系コーティング剤試験結果
 
 コーティングをした結果、Al2O3+SiO2系コーティング剤では、コーティング剤の脱水による重量減少が見られるだけで、CO2の吸着、離脱による重量変化は見られない。
 ZrO2系コーティング剤は、450℃までは脱水による重量減少が見られるが、600℃以上でCO2の吸着、離脱による重量変化が見られる。
 今回の試験結果には、コーティング剤の脱水による重量変化が入っているので、現在同じサンプルにて再度、測定中である。







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