日本財団 図書館


7−2−5. 多孔質材を用いた伝熱機構の計算と従来方法の比較について
 多孔質材を、金属隔壁部に用いて、熱交換器とした場合、高温ガスと多孔質材との間では、熱伝達により熱が移動し、その熱が金属材を伝導して低温側に移動するが、熱伝達面積が極めて大きいので、通常の熱移動プロセスで見られる熱伝達率に律則される様態とは大幅に異なる。例えば、エンジンのシリンダ等では高温側の熱伝達率αgと低温側の熱伝達率αcによって決まる。熱通過率には固体の熱伝導率の大きさはほとんど問題にならず計算される。ところが上記多孔質金属材では熱伝達面積が大きいので、熱伝達に関する項が熱伝導率と等価になり、多孔質金属材の材質が問題となる。
 例えば、高温ガス側の熱伝達率が100W/m2・k、低温側の熱伝達率が100W/m2・kとすると熱通過率は
 
とし、k=50W/m2・kとなる。この値では熱伝導率は無視しても伝熱機構において余り問題にならない。しかし多孔質材では熱伝達の面積が大きいので、その補正をすると
となり金属、例えば隔壁材がニッケルクローム材の厚さ1cmのものでは
 
となる。上式でA1、A2は面積補正値である。この状態では熱伝導率が寄与する。多孔質金属材では接地面積比率がどの程度かにより伝熱機構が異なる。上式で示した熱伝導率の項については厚さが1mm、接地面積が1/10と厚さが10mmと等価である。
 この様な解析を通して伝熱機構を解析すると、多孔質材を隔壁に埋設する方式では多孔質材の足の断面積が大きい事、熱伝導率が大きい事が極めて大きな要因となる。
 次に、従来方式と、熱伝達、熱伝導率を詳細計算により求めた場合を比較する。
計算条件は次の通り。
 
・高温ガス温度   980℃
・低温ガス温度   850℃
・多孔質金属材熱伝導率   70W/m・k
・多孔質材周囲の熱伝達率   100W/m2・k
・多孔材足断面積 放熱側 0.38×10−6m2
  受熱側 0.07×10−6m2
・足の本数 放熱側 20×104
  受熱側 40×104
・放熱側足の外周   2.2×10−3m
・受、放熱足の長さ   0.003m
 
 以上により計算すると、伝熱熱量は26.12kcal/m2であり、この値より熱通過率を算出すると、K=246W/m・kとなり、熱伝達率を100W/m2・kとすると、面積修正係数は5となり、本項にて推定した値とほぼ同一となった。
 しかし、多孔質材の様に複雑な構造での熱流計算は一般式で表す事に難があるので、下記の(20)式、(21)式で示される数値を用いるべきである。
 
 
7−2−6 水蒸気発生熱交換器の検討
 水蒸気の熱伝達率の計算では、湿り蒸気の場合、ヒートパイプの計算において多くの研究がある。例えば、井村(*1)、柴山(*2)等は次式を示している。ここで熱伝達率をhe、△Tを内外温度差とすると、
 
ここで、 P1n :管内圧力(kg/m2
  qe :熱流束(W/m2
  P0 :大気圧力(kg/m2
  ρν :蒸気密度(kg/m3
  ρ1 :液体密度(kg/m3
  μ1 :粘度(Pa・s)
  λ1 :液体熱伝導率(W/m・k)
  Cp1 :比熱(kJ/kg・k)
  g :重力(m/s2
 
 水蒸気の管内圧力0.5Mpa、管外圧力0.1Mpa、ΔT=400℃として熱伝達率を求めると、he=742W/m2・kとなり、相当大きな値となる。
 
この値を用いて、水蒸気作製熱交換器の大きさを計算する。条件は以下の通りである。
 
・伝熱熱量 47kW
・排気側温度 370℃
・蒸気側温度 100℃〜320℃
・排気側熱伝達率 80W/m2・k
・排気ガス量 755kg/h
・蒸気量 100kg/h
 
 伝熱面積は、1.9m2となり、耐圧性等考慮すると、排ガス通路250mm、長さ1000mm内に40mmの水蒸気管を15本封入する。排気ガス側、水蒸気管側共、多孔質金属材を接合させ、Ni材等に熱伝導率の良いCu、Ag等をメッキし、熱伝導性を良くする。
 
文献 (*1) 井村他 二相密閉型形態サイクル内における熱伝達機論
    45−393−712−722
  (*2) 柴山他 ヒートパイプに関する研究機論
    45.389.110−117
 
7−3. 高効率熱交換器評価確認実験
7−3−1.実験台と設備装置について
 熱交換器の高効率化を図るため多孔質金属材料を採用した熱交換器の作製について下記の検討を行った。多孔質金属材料を多孔質材のエレメントの隔壁に接続し、熱伝達面積を増加させる本システムの熱流についての評価と多孔質材に移動した熱の輻射作用を利用し、更に熱交換効率を増加させる効果を正確に評価する実験装置について検討する。更にこの実験では、ガス流速を大きくし熱伝達率を大きくする対流熱伝達を促進させる新しい構造の熱交換器を試作し、多孔質金属型熱交換器の伝熱効率評価を行うための実験装置を設計し、画期的熱交換器の実現に役立てることを目的とする。
 
 新しい構造の多孔質金属型熱交換器の評価を行うにあたり、今回の実験装置は、熱伝達、熱伝導、輻射のそれぞれの効果を評価をすることを目的とするため実際の多孔質金属型熱交換器の1/10スケールモデルを用いた評価試験を行うこととした。
 表7−2には実機の多孔質金属型熱交換器の設計目標値を示し、表7−3には1/10スケールモデルの多孔質金属型熱交換器の設計目標値を示す。
 
表7−2 多孔質金属型熱交換器の設計目標値(実機)
項目 仕様
熱交換器受熱 42〜60kW
熱交換器放熱 36〜51kW
熱交換効率 80%以上
熱交換器ガス通路抵抗 30mmHg以下
熱交換機流体通路抵抗 150mmHg以下
ガス流量 0.17kg/s
ガス入口温度 350〜500℃
蒸気入口温度 200〜250℃
 
 実験に供する熱交換器は、伝熱面密度1500m2/m3、熱通過率85W/m・Kを目標とし試作し、上記数値には輻射熱効果を含まない事にする。これらの値を達成させるためには温度計測が重要なので、その測定法について十分に検討する。
 
表7−3 多孔質金属型熱交換器(1/10スケールモデル)の設計目標値
項目 仕様
熱交換器受熱 4.2〜6kW
熱交換器放熱 3.6〜5.1kW
熱交換効率 80%以上
熱交換器ガス通路抵抗 3mmHg以下
熱交換機流体通路抵抗 15mmHg以下
ガス流量 0.017kg/s
ガス入口温度 350〜500℃
蒸気入口温度 200〜250℃







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION