7. 熱交換器の検討と試作実験
7−1. 目的
平成13年度の研究では多孔質金属材料を用いた高効率熱交換器の開発を実施したがこの技術を更に発展させ燃料改質装置に応用することとし、本年度は多孔質材のエレメントの多くが隔壁に接続し、伝導面積を増加させると共に、多孔質材に移動した熱の輻射作用を利用し、更に熱交換効率を増加させガス流速を大きくし、熱交換を促進させるべく新しい構造を試作する。
この考えでは入口、出口から開けられた通路にガスが流れ多孔質材を通過、熱交換、高温化させ、其の輻射熱を低温側壁部に照射させる事により、熱交換性能を向上させる。今回試みようとしている熱交換器の高温側ガス流体の温度は450℃と比較的低いので、熱移動の距離が短い連続体である多孔質金属エレメントを熱交換器の隔壁に接合させ、熱伝導による効果と輻射熱による効果を複合させる事により熱交換効率の優れた熱交換器を試作する。低温側は水蒸気であるが気相、液相の混合ガスであるので低温側にもヒートパイプで使われるウィックと同じ効果を期待し、粗度の荒い多孔質材を隔壁に密着させた構造の熱交換器を開発する。更に作動ガスの温度が低いので、多孔質材の表面に熱伝導率の良い“銅”等のメッキをし、熱伝導量を大きくする試みをする。
7−2. 検討と計算
本システムでは燃料改質装置、蒸気発生装置として多くの熱交換器が使われる。熱交換器の熱流の計算では従来の計算で求められる方法と受熱と放熱を微分方程式から求める方法がある。この2つの方法を検討し、より精度の良い熱流計算を実施する。また、熱交換器の性能についても検討し、熱交換器のサイズの縮小を図る構造の検討を実施する。熱交換器の設計検討を実施するに当たって従来方法と今回の検討について下記の通り、比較した。
7−2−1. 従来の方法
・熱伝達する外側の面状況、流体の状況に合わせて熱伝達率を求める。
・熱伝導体はその熱伝導率があまり小さくなければ、伝熱経路中での寄与率が大きくないので殆ど無視される。
・放熱側では放熱面の形状、放熱側流体の性状によって決まる熱伝達率を求める。
・熱伝達率の関数として熱通過率を求める。
7−2−2. 今回の熱計算
・受熱側の熱伝達率は従来のレイノルズ数、ヌッセルト数を用いて計算する。
・金属多孔質材を用いる場合、熱伝達面は極めて広いので、その面に入力する熱が固体である金属繊維に伝わり、集熱して隔壁に伝熱される。
・隔壁には多孔質材の繊維が金属体として埋め込まれているのでその熱が放熱側に伝熱される。
・放熱側では隔壁から伝熱された熱が極めて大きな面積の金属繊維に放散され、低温ガス側に熱移動する。
本検討を実施した結果、金属多孔体を受、放熱体に利用した場合、熱伝導率に対する熱伝達率の寄与率が面積の増加により大きな値となり、熱伝導率と面積が問題になる。その結果、熱通過率が大幅に増加することが判った。
以上の検討結果に基づいて具体的検討を以下の通り実施した。
7−2−3. 熱交換器の設計と計算について
熱交換器は本プロジェクトの中で改質装置、水蒸気作製装置など多くの装置に適用する必要があり、極めて大切な要素である。前年度ではこの熱交換器に多孔質金属材料をエレメントとして用いることを考え、多孔質金属材料と平板の接合を中心に試験を進めた。
今年度はこの多孔質金属材料を用いた熱交換器の熱流について理論解析をし、合わせてFEMによる解析を実施し、十分な性能が得られる熱交換器の製作を行うことにした。
現在、日常的に利用されている高性能熱交換器では、その容量が極めてコンパクトな瞬間湯沸し器、レース用自動車のラジエータがあり、その構造を見るとガス側は0.3mmほどの極めて薄い平板を積層し、その板間2〜3mm程の間隙に高温ガスを通過させ、熱伝達させ、集熱した熱をフィンに接続させた水路管に移動させている。この構造の特徴は伝熱フィンが極めて薄く、熱交換面積を大きく取り、水路側媒体の通過する隔壁までの熱伝導距離が長い事である。
本システムでは熱交換の放熱側に触媒層を設け、その触媒層を金属多孔質材とし、触媒の表面積を増加させた構造としているので、放熱側にフィンを用いた熱交換装置を構成するわけにいかない。しかし、提案技術と従来技術について比較検証するため、熱交換器の材料として平板と多孔質材の特性を下表7−1にて比較してみた。
表7−1 平板フィンと多孔質材の比較
仕様 |
セル数( 板厚) |
孔径(間隔) |
接触金属部面積/cm2 |
表面積cm2/cm3 |
#3 |
20 |
1.3mm |
0.176 |
17 |
#4 |
30 |
0.8 |
0.290 |
25 |
#5 |
40 |
0.6 |
0.290 |
37 |
平板 |
(0.30) |
(1.2) |
0.200 |
13.4 |
平板 |
(0.50) |
(1.2) |
0.290 |
11.8 |
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以上の比較表で見ると多孔質材料では1インチ当たりのセル数が30、孔径0.8mm、の材料が平板板厚0.5mm材と比較し、接地面積が同等、表面積が約2倍となり、平板より高温ガス体の熱を個体に移動させる熱伝達量が多くなる。固体に伝達した熱が隔壁まで移動させる熱伝導量は接地面積が同等なのでほぼ同じと考えてよい。
従って、ここでは多孔質材を用いた熱交換器構造の熱交換性能を評価するために、熱流モデル機構を設定し、受熱、放熱の交換熱量と温度を計算した。
モデルでは受熱側の多孔質材は三次元ネット形状として中間に球形状空間があり、その稜線12本が立方体状に連結され、折り重なった形状とした。夫々の稜線の断面形状は円柱状で稜線が集積している部分はコンペイ糖形の形状をしている実物の構造をモデルとした。
フィン計算のモデルを用い、受熱と放熱の計算を行うが受熱側は金属多孔体の三次元ネット構造を構成する12本の稜線が熱伝達により受熱し、4本の稜線に熱伝導し、次の層に熱伝導する。この熱伝導を次々と繰り返し、隔壁では4本の足に熱伝導し、この足と隔壁が固体として連続しているものとし、高温ガス体が均一に流れていると仮定し、計算すると隔壁から3mmほど離れた以遠部ではほぼ均一の温度となった。そこで、この均一温度となった多孔体とこの4本の稜線の足が隔壁板と同一固体として繋がっているものとし、更に放熱側でも同様に稜線の足が隔壁に繋がって、この足は隔壁から3mm離れると三次元ネット状の12本の放熱体を構成するものとして計算した。受熱側は高温ガス体が1立方センチ当たり25cm2ほどの大きな受熱面積を持ち、1cm2当たり、0.29cm2の伝熱面積を持つ構造体として計算した。放熱側の熱放散では隔壁と連続した足部分から熱伝導で先端部に伝熱され、放射状に熱放散されるがここでは隔壁に連結された多孔質材の足部分に伝熱され、足の先端に大きな冷却板が接続されているものとして計算する。
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