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6−2. 改質装置の構造検討について
 エンジンシステムの熱流計算を実施するに当たって改質装置の性能、大きさを検討する必要がある。エンジン排気管出口の排気温度を980℃とし、改質部のガス温度を850℃とし、熱交換部の構造について検討した。
 先ず、受熱部については排気ガスの熱流が多孔質材料に接触して熱を与え、多孔質材中心部付近の温度が950℃ほどになり、この熱が徐々に隔壁に伝導され、改質反応層に移動する。
 多孔質材料の熱移動について受熱の熱伝達と熱伝導を微分方程式を用いて計算すると熱移動量が求まる。この計算について以下のような条件を設定する。
 
高温ガス多孔体温度:Tg 950℃
低温ガス触媒層の温度:TO 820℃
多孔質材料から隔壁までの距離:σ1 0.003m
多孔質材料の熱伝導率:λ 70W/m・k
放熱側繊維の足断面積:A 0.38×10−6m2
受熱側繊維の足断面積:Ax 0.07×10−6m2
放熱側の足の本数:M 20×104本
受熱側の足の本数:N 40×104本
放熱側足の外周長:S 2.2×10−3m
熱伝達率:h 100W/m2・k
 
 (熱伝達率についてはこの改質層での熱流条件をレイノルズ数、プラントル数、ヌッセルト数を用いて計算すると40W/m2・k程であるが改質層の表面では触媒による吸熱反応が発生するのでその効果を考慮すると100W/m2・kに修正しても良い。)
 
 以上の条件で隔壁温度を計算すると
 
隔壁温度 :915℃  
改質ガス温度 :820℃  
熱流量 :26.12kW/m2 となる。
 
 必要な熱通過量は76kWであるので改質ガスの隔壁面積は2.9m2以上必要となる。
 
 この計算により求めた伝熱面積を改質装置の伝熱面積と比較するとほぼ同一となるので本改質装置をこの面積により改質させるものとして開発を進める。この改質装置には以下の項目を含まないので、これらの項目は安全率として考慮する。
 
・多孔質材料を熱交換器に利用する場合、輻射熱を考慮してないのでこの効果が2〜3割あれば効率はもっと上昇する。
・改質部の多孔質材料表面には触媒が附加され、化学反応によって吸熱が行われる場合、熱伝達率は大幅に大きくなる。(計算によると300W/m2・k以上)
 
6−3. 改質装置の改質率の検討について
 熱交換部の状況を検討すると改質ガスは排気ガスの熱を吸収して820℃程の高温度となり、次々と反応が進み、平成10年度の試験結果では図6−4に示す様になり、約80%の改質率を得た。
 その改質ガスは改質の完了したガスと未完了のメタンガスが混合した状態でH2O改質装置に移行するので水蒸気改質層には高温ガスが流れ込み、改質が進行し、この改質層の多孔材部では伝熱温度まで反応が進んだ段階で熱面から吸熱して水蒸気改質が完了する。このプロセスを想定して改質率をグラフに表すと図6−5になるので、その改質率を算出すると改質率は95%となる。改質装置には排気ガスの熱エネルギーが114kW、水蒸気エネルギーが2.5kW、CNGの加熱エネルギーが10kW、CO2加熱エネルギー9kW、合計135.5kW投入され、120kW(改質104kW、燃料及び残留ガスの廃棄エネルギー16kW)が改質に費やされる。
 
 以上の改質反応により、燃料改質装置をエンジンの排気管直後に接続した場合、燃料の熱エネルギーが367kWから471kWになってエンジンに流入する。
 
 改質装置を排気タービンの後流に取り付けた場合、排気ガス温度750℃、受熱側多孔質コア部温度720℃、改質ガス温度620℃、CO2改質量50%、残部の50%のCNGガスが水蒸気と改質される。
 水蒸気とメタンガスの改質では反応温度が250℃低く、平均ガス温度が450℃として従来の実験資料から作成した図6−4、図6−5を用いて計算すると改質率は65%となり、合計改質率は82%となる。
 改質装置には排気ガスの熱エネルギーが81kW、水蒸気エネルギー2.5kW、CNG加熱エネルギー10kW、CO2熱エネルギーが5kW、合計98.5kWが投入され、改質ガスとして74kWがエンジンに投入される。
 
6−4. 排気タービンの仕事量についての検討
 エンジンの排気ガスからエネルギーを回収するため、排気タービンを何処へ取り付けるかについ高圧の入口圧力が必要で出口圧力との熱膨張がタービン仕事になる。そのため、入口圧力を大きくするとエンジンではこの圧力で排気する時に生ずる仕事量が増加するので熱効率が悪くなる。
 又、タービンでは排気ガスのI−S線図で性能を予測することが簡単である。I−S線図を見ると排気ガスが低温の場合、等圧力線が寝ていて、圧力膨張しても断熱落差が小さいが、高温になると立ってくるのでその断熱落差が大きく、仕事量が大きくなる。
 燃焼ガスのI−S線図では0.35MPa、980℃でのエンタルピーは248.3kcal/kg、出口圧力0.12MPaに設定するとこの時のエンタルピーが169kcal/kgで、その断熱落差が79.3kcal/kgとなる。
 ガスタービンには流体摩擦損失,後縁損失、二次流損失、があり、それらの損失を除いた有効効率を78%とするとタービン軸出力は54kWとなる。この時損失は15kWである。
 タービン入口温度を500℃とすると0.35MPaのエンタルピーは125kcal/kg、出口圧力0.12MPaではエンタルピー75.8kcal/kgとなり、断熱熱落差48.2kcal/kgとなる。有効効率78%とするとタービン軸出力は34kWとなる。
 
図6−4 CO2改質率と温度
 
図6−5 H2O改質率と温度
 
 以上の検討から排気タービンをエンジンの直後に取り付けると排気ガス温度が高いので、タービン仕事が増加し、54kWの軸出力が得られ、改質装置の後に取り付けると排気温度が500℃まで下降し、タービン仕事が34kWまで減少する。ここで有効効率について考えてみると通常のガスタービンではその効率が82%程度でこの値は相当精度良くマッチングされた値である。そこで、従来の試験結果から勘案して78%の有効効率として計算した。排気ガス温度が低い場合、損失量は高温度の場合より大きいので、この効果を考えると500℃の入口圧力の場合、タービン仕様は29kW程になる。
 
6−5. 蒸気タービンの仕事量の計算について
 蒸気タービンは効率が余り良くないのでこのようなシステムの中で使用する例はあまり無い。
 又、装置が大変複雑で蒸気発生装置と復水器がどうしても必要になる。そのため、これらの熱交換器装置が極めて小型に作る事が出来れば蒸気タービンを使う可能性が出てくる。本技術開発では金属多孔質を用いたコンパクト熱交換器を多用するため、熱交換器のサイズが極めて小さくなる。
 そのため蒸気タービンを利用出来る可能性が大きくなったので、その開発を計画した。
 蒸気タービンの設計では蒸気タービンの入口圧力が重要であるのでその検討を実施した。先ず、改質装置出口の温度が350〜375℃に低下する。従って、排気ガスが熱交換器を通過する間に約100〜120℃まで温度降下したとして吸収可能なエネルギーは55kW、エンジンオイルの持っている熱エネルギーが50kWであるとするとこの熱量を吸収して乾き蒸気が作られなければならない。この熱量を用いて蒸気タービンを作動させるとエンタルピーは700kcal/kgほどが必要である。すると蒸気量は約100kgが適当である。100kg、圧力1MPaの飽和水を作動させるとエンジンオイルの熱を向流熱交換器にて吸収し、加熱され、温度100℃まで上昇し、徐々に気化し、排気ガス熱交換器に入って行く。排気ガス熱交換器の出口温度を120℃、入口温度375℃とし、計算すると320℃、1MPaの乾き蒸気が出来る。この蒸気を蒸気タービンに送り膨張仕事させた後、復水器を用いて蒸気圧0.0004MPaの圧力まで圧力降下させるとエンタルピーは740kcal/kgから525kcal/kgまで降下し、蒸気タービン効率85%とし、計算するとその出力は14.9kWとなる。
 エンジンの直後に燃料改質装置を取り付けると改質に消費される熱量が増加するので排気タービン後流の排気温度が350℃まで低下し、熱交換器から出た蒸気温度は280℃になる。すると飽和蒸気のエンタルピーは720kcal/kg、圧力0.0004MPaでは515kcal/kgで、蒸気タービンの軸出力は12kWとなる。







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