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6.エンジンシステムの熱流検討と仕事量について
 遮熱型天然ガス改質エンジンの開発では、全体システムのシステムを構成する個々の性能が十分発揮される事が重要であるが、それぞれのコンポーネントをどの様に組み合わせるのかが重要な開発ポイントである。そこで、エンジンシステムを構成する改質装置、遮熱エンジン、排気タービン、蒸気タービン、熱交換器についてそれぞれの効率、条件について検討した。
 検討項目は以下の様である。
 
1)改質装置の作動温度、効率と置き場所
2)排気タービンと蒸気タービンの作動温度、圧力効率と配置場所について
3)熱交換器の持性と温度条件について
4)CNG遮熱エンジンの作動条件について
 
6−1. エンジンシステムの熱流と効率算定
 改質装置では、CO2の吸着、CO2とメタンの触媒反応、H2Oとメタンの触媒反応が行われる。CO2の吸着では、その吸着材としてジルコニウム酸リチウムを用いた場合、約350〜500℃で吸着反応を起こし、700℃程で離脱する。
 CO2 とメタンの触媒反応では、900〜700℃で改質率90%、700〜550℃で60%の改質率が得られる。H2O(水蒸気)とメタンでは、600〜500℃で90%、500〜400℃で60%の改質率となる。
 以上の仮定により検討を行った。
 この改質装置の置き場所について改質装置を遮熱エンジンの直後に取り付ける場合、改質装置入口の排気ガス温度が980℃、熱交換器を通してCO2改質部温度930〜650℃となり改質率80%、H2O改質部温度650〜600℃で改質率15%、合計して95%の改質率となる。その結果、改質装置に入って来るCNGの重量25.6kg、発熱量367.2kWのガスが改質によって1.26倍に増加し、副室供給分と合わせて527kWに増加する。この状態では、改質に必要な熱エネルギーは豊富に存在する。
 しかし、改質温度が高めで改質器にコーキング等が多量に発生する恐れがある。
 改質器を出た排気ガスは、排気タービンに送られるが排気タービン部では入口圧力、0.35MPa、排気ガス温度500℃で、この条件でのエンタルピー128Kcal/kg、出口圧力0.12MPa でのエンタルピー75.8Kcal/kg、タービン効率24〜27%とすると、タービン仕事34kWとなり、排気ガス温度は350℃まで低下する。この排気ガスは、蒸気との熱交換器入口で350℃、出口部で120℃以下となる。
 蒸気100kgは、エンジンオイル熱50kWにより飽和水が42kWの熱を吸収して湿り蒸気に変換され、排気ガスとの熱交換器にて加熱気化され、300℃の乾き蒸気になる。蒸気の一部30kgは改質装置に送られ、蒸気タービンには70kgが送られ、蒸気タービン入口圧力1Mpa、出口圧力0.0004MPaで吐出され、復水器に流入する。300℃、1MPaの蒸気は、エンタルピー730Kcal/kgから530Kcal/kgまで膨張し、約14%の効率で出力12kWを得る。
 復水器には、未だ多量の熱量を持った湿り空気が送られるが、この熱を奪い、水に戻す為には、水道水又は海水で冷却するのが効果的である。
 このシステムでエンジンには28.4kgのCNGが送られ、コンプレッサーでは0.2MPa、663kgの空気とEGR混合ガスが圧縮されエンジンに送られる。このコンプレッサー仕事は80%の効率を持つブレードで14kWの仕事を要す。
 エンジンは改質器へ送られた90%の燃料25.6kgが95%の改質率で改質された燃料として供給され、10%のCNGはそのまま副室に供給され合計熱量が527kWとなり、その熱エネルギーが燃焼室に送付される。エンジンの効率は熱効率38%、排気損46%、冷却損失6%、フリクション10%として軸出力は200kWとなるが、排気タービン入口圧0.35MPaを得る排気仕事分17kWは熱として消費されるので排気損に含まれる。以上を総合するとエンジン軸端の出力は230kWとなり、供給したCNGの熱量に対して56%の性能となる。結果を図6−1に示す。
 一方、エンジンの排気管に排気タービンを取付けその下流に改質装置を配置した場合の熱効率を計算する。改質装置入口の排気温度は750℃と推定されるので775kg、750℃の排気ガスが改質装置上流でCO2改質に熱を与え、その熱落差が280℃であるのでCO2改質器出口温度は470℃、この間の改質率は50%となる。改質器の受熱、吸熱側の温度差50℃とすると、H2O改質器の排気ガス側が470℃に対し、改質側では420℃となり、残りの燃料をこの温度帯で改質すると改質率は65%となり、合計改質率は82.5%となる。排気ガス出口温度は375℃となり、水蒸気作成の熱交換器に流入する。改質装置に送られた燃料25.56kg のCNGはCO2 との改質率50%、H2Oとの改質率65%で改質すると燃料のエネルギーは増加し、副室供給量40.8kWとの合計496kWとなり、エンジンの軸出力38%、排気損46%、冷却損6%、フリクション10%とすると、軸出力188kWとなる。排気管出口の排気ガス温度970℃と計算されるので、燃焼ガスのエンタルピーが248.3Kcal/kg、出口圧力0.12MPaまで膨張仕事すると、エンタルピーは169Kcal/kgとなる。タービン効率を24%とすると排気ガス量755kgがタービンに対し、54kWの仕事をする。
 改質装置を出た排気ガスは、蒸気作成熱交換器に送られる。入口部370℃の排気ガスは出口部で120℃になり、1MPa、100℃、100kgの水を320℃の乾き蒸気に変換する。この蒸気は改質装置に30kg、蒸気タービンに70kg送られ、蒸気タービン入口部ではエンタルピー740Kcal/kg、出口圧力0.0004MPaで525Kcal/kgまで膨張仕事する。蒸気タービン効率16%としてその仕事量は15kWとなり、排気タービンと蒸気タービン軸での仕事量の総計は69kWとなる。蒸気タービンから出た水蒸気は多量の熱量を有し、冷却水と熱交換し50℃の飽和水になる。
 エンジンシステムでは、エンジンに0.2MPaのEGRと空気の663kg混合体を送り、排気タービンでは0.35MPaの排気圧を与えるので、ブーストポンプ仕事14kW(コンプレッサー効率80%)が消費される。
 又、蒸気タービンの水圧1MPaを与える仕事量が5kWであるので、これらを総計すると出力235kW、効率57.5%を得る事が出来る。検討結果を図6−2に示す。
 図6−3には改質装置におけるCO2 とH2O改質の温度範囲を改質器の前付け、後付けで比較した結果を示す。
 
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図6−1 エンジン直後に改質装置を置く場合
 
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図6−2 エンジン直後にタービンを置く場合
 
図6−3 複合メタン改質装置による改質率







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