5−7. CNGエンジンの始動性とEGRによる吸気温度の上昇について
天然ガスを用いてNA(ナチュラル・アスピレート)エンジンを始動させる事は極めて難しい。即ち、電動装置により駆動できるターボチャージャ付きエンジンではコンプレッサーの圧縮圧力を上昇させ、その圧縮比を3程度にすれば吸気温度を430Kほどにすることは容易に出来る。ところがNAエンジンでは吸気温度を上昇させる手段が無く、CNGの着火温度が1100Kとすると吸気温度を430Kまで上昇させないとエンジンを着火できない。そこで、吸気管にヒーターを取り付け、吸気を加熱させる事にした。
吸気管に取付けるヒーターは金属多孔質材を用い、3相交流を通電させると吸気温度が上昇する。現在開発中の2気筒エンジンに5.5kW/800RPMの発電機を取付けると400RPMでは約3kWの出力を得ることが出来る。この発電機を用いて吸気温度を上昇させると吸気温度は480K以上になり、エンジンの始動が出来るようになる。
図5−22にはエンジンの回転変化と発電電力によって昇温出来る吸気温度のグラフを示した。この様な方法を用いる以外中々良いエンジンの始動方法が見当たらない。ところがエンジンの始動が完了してアイドリング状態になると吸気温度が常温となり、そのまま常温空気が圧縮されても圧縮端の温度が870Kほどにしかならず、失火する。
この時、EGRを実施し、吸気温度の上昇を図る必要がある。EGRを実施すれば吸気温度は徐々に上昇し、CNGの自着火温度である430Kに到達する。計算では冷却水の温度の低い状態では圧縮時の熱が冷却系に移動し、排気に移動する熱量が小さく、その熱量が10%程度であるのでその状態を考慮して計算した。
又、EGRのガス温度が上昇すると排気通路、配管系からの放熱量が増加するので次第にEGR温度がサチュレートし、吸気温度が一定になる。図5−23ではEGR率を30%、15%実施した場合、吸気温度の上昇割合を示した。EGR30%実施すると60秒後にほぼ170℃に到達し、始動に必要な条件をつくる事が出来る。
図5−22 ヒーターを用いて吸気加熱した場合の吸気温度の上昇 |
図5−23 EGRによる吸気温度の上昇効果
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