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海上での武装強盗
 他の問題としては、海上での武装強盗の問題がある。特に、インドネシア西側のカリマタ海峡、シンガポール海峡や南シナ海での武装強盗問題は深刻である。武装強盗問題は次の状況と関係している。(1)インドネシアの監視当局の能力(2)武装強盗を排除するための近隣諸国間の協力関係の効果(3)利用国と国際コミュニティの協力とサポート。一般的に、インドネシアの経済状況が厳しくなり、警備にまわす予算が充分に確保できなくなると、武装強盗は増加する。利用国の協力と支援が重要なのはこの分野である。
 
海洋環境破壊
 海洋環境の破壊も、群島水域における安全保障問題の1つである。海洋環境の破壊には次の要因が含まれる。(1)船舶による汚染(2)陸上からの汚染(3)海底からの石油や天然ガスを採掘する際の汚染(4)違法な鉱物資源の採掘や埋め立てによる沿岸地域の破壊(5)不法漁業による珊瑚礁、マングローブ、漁業資源の産卵場の破壊。これらの資源や環境破壊の問題もまた、監視当局の摘発能力と非常に関係がある。インドネシア経済が悪化すると、監視当局の能力も低下し、海洋環境も悪化していく。この問題は、異なる管理当局が別々の法律に基づいて活動していることでさらに顕著になっているし、それぞれの管理当局が対立していることもある。
 
安全保障問題のその他の原因
 その他にも次のような安全保障問題がある。(1)国家の経済状況の悪化(2)近隣諸国間との関係悪化や問題の増加(3)インドネシアの海洋管理当局間同士の対抗意識(4)武器密輸、不法入国、国際テロ、麻薬取り引き、人身売買などの犯罪行為の国際化。これらの問題は、以下の状況が原因で、東南アジアの群島水域で顕著になっていくことが予想されている。(1)イント洋と太平洋間、アジアとオーストラリア本土間の戦略的位置付け(2)長く入り込んだ海岸線をもつ群島の自然(3)民主化が進み、より開放的で透明になった現在の政治状況と地方分権化の傾向(4)現在の経済的衰退(5)国家テロ、地域テロ、国際テロの増加(6)予算や財源不足による法執行機関の能力低下。
 
国防と安全保障
 インドネシアの群島水域における安全保障問題は他にもある。例えば、インドネシアの群島水域の中心部(航路帯およびその上空を含む)を通過する外国の軍艦や航空機の脅威がある。これらの危険性は常に監視する必要があるが、国際機関を通して群島航路帯を設定したり、冷戦の終結によってある程度は管理されたりしている。安全保障の問題は、国家の防衛とも関連しているが、シーレーンおよびその上空の安全の問題は多くの点で法執行機関とも関連している。
 
結論
 インドネシアの群島水域では、多くの安全保障問題や環境問題がある。これらは、インドネシアの主権と管轄権の問題であるが、インドネシア群島水域における他国の利益の保護にも関連していて、特に無害通航や群島航路帯通航でイントネシア水域を通過する船舶の安全と関連している。インドネシア政府はその能力と様々な手段で安全を保護・促進しているが、インドネシア群島水域を利用する他国、特に日本は、自国の利益を守るためにも、インドネシアの法執行機関と協力・支援して、同水域での安全や環境を維持改善する必要がある。
 
 今までのところ、インドネシア、マレーシア、シンガポールは、日本と協力してマラッカ海峡、シンガポール海峡の航行の安全対策を促進している。よりよい航行支援装置や航行分離方式の採用、共同の海洋調査による正確な海図の作成、海峡を航行中の船舶の状況を報告する手続きの確立、船舶による海洋汚染に対処するための「回転ファンド」の設立などである。
 
 また、上記3国はそれぞれが協力して、海峡内での武装強盗行為を防止するためにパトロールを行っている。しかし、海洋環境の保護について、日本を含む4カ国の協力はあまり多くは行われていない。他の利用国も、UNCLOSの第43条に従って、海の安全を守り、海洋環境を保護するために、沿岸国家と協力しようとはしていない。日本を含む他の利用国が頻繁に通航している他のインドネシア群島水域においては、船舶による海洋汚染からの環境保護や安全通航を促進することを目的とした、日本を含む利用国からの援助は皆無に等しい。
 
備考:
 元カナダ大使、元ドイツ大使であり、海事関連法の博士であるProf. Dr. Hasjim Djalalは、現在はインドネシア海洋評議会(Indonesian Maritime Council)のメンバーであり、海洋漁業大臣(Minister for Maritime Affaires and Fisheries)および海軍幕僚長(Naval Chief of Staff)の上級顧問である。同氏はバンドン(Bandung)のパジャジャラン大学(Pajajaran University)で国際関係法を教えている。この論文に示されている意見は個人的なものであり、インドネシア政府の意見を反映しているもの、および反映していないものがある。
 
PETA ILUSTRATIF
LAMPIRAN UNDANG - UNDANG RI No.6 TAHUN 1996
Tentang
PERAIRAN INDONESIA
PETA KEPULAUAN INDONESIA
 
LAMPIRAN VII
PERATURAN PEMERINTAH REPUBLIK INDONESI
NOMOR: 37 TAHUN 2002
TANGGAL: 28 JUNI 2002
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