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情報誌「さぁ、言おう」 2003年3月号

 事業名 高齢者のためのボランティア普及啓発活動
 団体名 さわやか福祉財団 注目度注目度5


グループホームの窓辺で
終のすみかで迎える死
長屋は駆け込み寺
 前号で紹介した「なんもさ長屋」。1棟借りした木造アパートに24人が暮らしている。自らの意思で入居した人ばかりでなく、病院を退院しても行く先のない人、民間アパートを借りたくても高齢を理由に借りられない人など、いわば居場所のない高齢者の駆け込み寺でもある。
 「徘徊していて警察に保護された痴呆のお年寄りを、行く先が決まるまでお預かりすることもありますよ。役所に頼まれてホームレスの人を泊めることもね。今晩寝る所がないのだから、断るわけにいかないじゃないですか」と経営者のKさん。
 頼まれればイヤと言わない。即断即決で、必要としていることに速やかに応える。それを知っている役所や保健所が、行き場のないお年寄りに「Kさんのところに連絡してみなさい」と、そっと耳うちすることもあるそうだ。
 「世の中には、保証人もいない、年金もろくにないというお年寄りもいるんですよ。そういう人たちへのサポートは本来は役所がやるべきことなんだが、お役所仕事は即断即決とはいかないからね。身寄りのない人、金のない人へのサポートはうちの独壇場なんです」
 お金のない人には生活保護を申請してやり、部屋を探している人にはKさんが常時借り上げているアパートやマンションの部屋を提供する。「サテライト」と呼ぶこれらの部屋には、合わせて16人の高齢者が住んでいて、「なんもさ長屋」から近いサテライトには弁当も届けているそうだ。
 心身に障害があれば本人の介護認定や障害者手帳の申請もサポートする。Kさんはケアマネジャーの資格は持っていないが、どのケアマネジャーより上手に介護サービスを発注することができるという自負がある。その人にとって何が必要かがよく見えているからだろう。
 話を聞いている間にも、ひっきりなしに電話がかかってくる。思わず「大変ですね」と感想をもらすと、Kさんは「なんもさ(なんでもないよ)」と笑った。
犬も一緒に入居
 サテライトに入居した一人にCさん(74歳)がいる。痴呆が進んで一人暮らしができなくなったが、大型犬を室内で飼っていたため、施設に入所することも病院に入院することも難しく、区役所からの紹介でKさんのところへやってきた。
 アパートに引っ越してきた晩のこと、Cさんは犬の散歩に出て行方不明になり、今まで住んでいた家の近くの交番に保護された。そして翌日も翌々日も、行方不明になっては警察のお世話になる繰り返し。そこで、外出にはヘルパーが付き添い、アパートではスタッフが24時間の見守りを続けてきた。
 身寄りがなく、犬をわが子のように可愛がっていたが、愛犬が老衰で亡くなったとたんにCさんの痴呆は急速に進み、肺ガンも見つかった。スタッフはいよいよ目が離せなくなった。以下はスタッフが書きつづった日誌の一部だ。
1月1日 21時20分、30分、50分とセンサーが鳴り、出て見ると、道路で転んでいる。部屋に入れて横にする。22時30分、再度センサー。出て見ると、また同じ、転んでいる。眠剤が効いてきて、夢遊病者状態。新年早々悩まされる。23時15分、センサー鳴る。同じ。床に入れるがダメのよう・・・。
5月31日 昼食後、「タバコください」と言われ、1本吸わす。「ありがとう。これあげる」と、悲しいくらい細い指から指輪を抜いて、私の指に入れてくれる。眠ったあと、指に戻しておく。タオルを掛けてあげると「ありがとう」。きょうは正常に戻ったよう・・・。
 この数日後、容態が急変してCさんは入院。1週間後に病院で亡くなった。
花いっぱいの祭壇
 Kさんが「なんもさ長屋」を始めて7年余り。この間に10人のお年寄りが亡くなった。自室で亡くなった人は4人、救急入院した病院でそのまま亡くなった人が6人。10人のうち6人が入居後1年以内の死で、入居前から患っていた病気が原因だった。
 入居後1か月足らずで、自室で亡くなった人もいる。入院中の病院から帰るところがなく入居してきた人だった。
 「こんな人を無理に退院させるなんて、と病院を罵ったものですよ。でも、その時、家族の方が『あのまま病院で亡くなっていたら可哀想だったけれど、1か月でも退院できて喜んでいたんだからよかった』と言ってくれたんです。それ以来、1年でも1か月でも人生の最期をここで過ごしていただいたことに感謝するようになりました」
 最高齢のMさん(93歳)が亡くなったときのことも忘れられない。数日前から風邪気味で痰をからませていたが、点滴をすると元気になり、夕食も食べていつものように休んだ。朝になって当直のスタッフが見ると虫の息で、救急車を呼んだが間に合わなかったという。
 家族は施設に暮らす奥さんだけ。Mさんの部屋に花でいっぱいにした祭壇をつくり、奥さんと入居者全員、それに地域の民生委員やボランティアが次々に線香を手向けたという。
 「簡素だけれど、さわやかなお別れでしたね。最期まで看取るというのは大変なエネルギーが要るけれど、お見送りできたことを誇りに思っています」
 「なんもさ長屋」は終のすみか。Kさんは「なんもさ」と言いながら、入居者の生も死も丸ごと受け止めている。
運営に関して注意することは?
 グループホームは高齢者が人生の最終ステージを過ごす場所。それだけに生活やケアの質が良好に保たれ、入居者の家族や地域の納得も得られるよう開かれた組織運営であることが大事だ。そうすることによって経営の密室化を防ぎ、入居者の気持ちに沿った運営が可能になる。
 開かれた組織運営のポイントの一つは、財務はもちろんのこと入居者の個人的な欲求も公開すること。運営の基本は事業の利益に寄与することであるから、より少ない人員でより高い生活の質を確保することができるよう、運営者ばかりでなく入居者も知恵や意見、思いを出し合うことが大事だ。運営者と利用者がそれぞれ違った視点から事業を支えるという意味においても個人的欲求の公開は大切で、定期的なミーティングなどが役割を果たす。
 事業を責任を持って継続するためには、財政面の適正なマネジメントが必要だ。入居者に負担してもらう入居一時金や月額利用料は、いわば事業の品質の対価であるから、契約書などで定められたそれらの金額に見合う事業の質を保っているかどうか、常に見直す視点は欠かせない。
 入居者に負担してもらう費用は、原則的に受益者負担で、たとえば食費、光熱水費、人件費、車両やサービスに関する費用、土地や建物などの維持管理に関する費用などだ。
 費用負担も含め入居時には下記のような事項について入居者と契約を結ぶ。
 
★契約の特性(総則)についての説明
★提供するサービスの範囲と内容についての説明
★費用負担と徴収方法に関する事項の確認
★施設使用上の注意事項(ホームの約定)
★契約終了時に派生する問題に関する事項
★その他の特別事項の説明
 
 これらの契約にあたって、まず押さえなければならない点は、ホームの事業が社会的にどのような使命を持つのかを説明すること。その上でサービスの範囲や内容、費用負担などについて具体的に説明する。施設使用上の約束事なども具体的に示すこと。契約終了時に派生する問題、たとえば残留物の撤去、居室の原状回復、それらの期日などについても日数を明示する。また、ホームそれぞれの事情もあるだろうから、最後に特別事項を設けること。契約についてのポイントは概ね以上の内容である。







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