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われら地域市民
最大の報酬は地域の人が喜ぶこと
コミュニティービジネスの展開
NPO法人環境ネット21
 
 かつては養蚕の中心地、現在は人口約13万人の県内有数の工業都市へ変貌を遂げた群馬県伊勢崎市。より良い環境を伊勢崎の子どもたちへ残そうと願いながら、コミュニティービジネスを柱に幅広い事業を行うNPO法人がある。「環境ネット21」の理事長六本木信幸さんと専務理事の石原一夫さんに活動状況など話を伺った。
NPO法人の設立に際し「一番乗り」にこだわったそうですね、その理由は?
 1995年に伊勢崎市商工会議所の青年部とOBが中核となった任意団体としてスタートし、地球環境問題などに取り組んでいましたが何か物足りない。もっと地域に密着し地に足の着いたことをやろうじゃないかということになり、生ゴミを自治体に返さない、アイドリングを止めようなどの運動を始めました。
 本格的に取り組んだのが伊勢崎に名産品をつくろうということから地元の米を使った地酒造り。情操教育も兼ねて子どもたちに田植えや稲刈りを手伝ってもらいました。この酒造りがきっかけとなり、20人程度の青年部仲良しグループが発足。売り上げもそこそこいくようになり、組織や納税などの問題が出てきました。協同組合だ、株式会社にしたら? などと話しているうちNPOという仕組みを知り、それならNPO活動の先導的役割を果たす団体、日本一のNPOになろうという心意気でNPO「一番乗り」を目指しました。グループ内にいる人材、人脈をフルに活用した結果、98年に法人格を取得、99年4月1日「日本で最初に登記した法人」になりました。社会的に認知された団体となったことから、主催事業や活動に安心して参加してもらえるようになりました。
NPO法人となり、会のあり方、会員の意識など変わりましたか?
 現在会員は21名います。入会したら活動に参加してほしいし参加する義務があります。入会金1万円、年会費6万円という高額なハードルをつくったのもそのためです。自分が活動に参加していないととても高い、付き合いや義理では入っていられなくなる。仲良しグループとNPO法人の違いです。活動にきちんと参加している人は高いとは言いません。
 初期には「社長、仕事もしてくださいよ」などと社員から文句? も出ましたが。中小企業でも各社が少しずつ経営資源を出し合うと大きな力になり、立派な社会貢献活動ができる良い会社になれるということを行動で社員に示すことができました。社員も今では誇りに思っていると思います。
 
六本木信幸理事長(右)と石原一夫専務理事(左)
地域に眠っている優れた資源を活用し、地域で困っている問題を住民とともに解決していこうという「コミュニティービジネス」を運営の柱にして成果を上げていると聞いています。
 NPOが自立を目指そうとしたら、自分たちで収益を上げていかないと自立できません。地域で困っている問題の解決、住民に対して今までに無い、または今まで以上の良いサービスの提供を行政に代わってやることにより、地域が元気になる、雇用を創出するなどの効果が得られるのがコミュニティービジネスです。収益性はあまり高くありませんが、公益を第一とする行政事業のパートナーにはNPOという組織が最適、という考え方からいろいろな事業に取り組みました。
 幸い早期に法人格を取得したことで、行政が発行するNPO法人一覧表などの資料には必ず一番上に掲載され人目につきやすく、情報がとても多く来るようになりました。従来は公序金、助成金、委託事業などの情報はほとんど得られず、欲しければ役所へ行って自分で見つけてきて申請していた。
 今は、「環境保全活動を中心に子どもの健全育成、まちづくり・まちおこしを柱としたNPOで、事業のアイデアや企画はこんなに持っています」と行政に登録し企画案を出しておけば、事業の依頼や委託の情報はかなり入ってきます。現在、市から4つもの緊急雇用対策事業(生ごみの資源化、廃家電の撤収とクリーンパトロール、まちかどステーション広瀬に於ける情報発信、「いせさき時代祭り」の準備・啓発)を受託し、28名の雇用を生み、約7000万円の活動資金を得ています。いずれも「環境ネット21」が市へ提案して採用されたもので提案型事業の成果だと思います。
 今後は全国のコミュニティービジネスを行うNPO法人をサポートするため、全国をネットワークしたNPO法人を設立してコンサルタント的な活動を目指したいと思っています。
 
生ごみを肥料にして野菜作り
市民とともに環境や健康の大切さを考える各種の行事は毎年好評のようですね。「サラダパーティー」もその一つ。
 毎年1回年末に子どもからお年寄りまで300〜400人が市内のホテルに集まり、家庭ごみを堆肥にして育てた野菜と、生ごみを肥料にして育てたタマネギや地元で採れた無農薬のニンジンを原材料にして作ったドレッシングを味わい、楽しみながら環境や健康の大切さを考えるパーティーを開催しています。昨年12月の第6回パーティーでは、「環境ネット21」のメンバー総出演のスキット(笑劇)「地球温暖化防止漫遊記」を上演し会場は興奮のるつぼとなりました。ドレッシング「伸びゆく大地」は「環境ネット21」が販売しており、売り上げは活動費や環境保護活動に充てています。
(取材・文/三上 彬)
コラム
 六本木理事長は、環境ネット21の活動状況を正しくタイムリーに地域に伝えるために「ウィークリーリポート」を作成し、メンバーはもちろん行政・県議会・マスコミなどに送っている。新聞はじめマスコミへの情報提供も積極的だ。会の活動に協力してくれたボランティアや地域の人たちが、活動で満足したあともう一度新聞で見るともっとうれしくなるのでは、という細やかな配慮からだ。







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