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喜・涙・笑 ふれあい活動奮戦記
NPO法人ケアサービスくまもと サンアンドムーン(熊本県)
あくまでも「家庭の延長」という自然なスタイルで利用者のニーズに応えていきたい
NPO法人ケアサービスくまもと サンアンドムーン
 「うちのメンバーの中に、“あの人にぜひ、来てもらいたい”と、どの利用者にもとても評判の良いヘルパーさんがいましてね。彼女は今65歳なんですが、たとえば老夫婦の家に伺うと、奥さんの身体介護をしながら、ご主人には温かいおしぼりを持って行くとか、お茶を入れるといったことが自然とできる人なんです。年を重ねるごとに人の気持ちがわかるという面もあるかもしれませんが、介護者だけでなく、その家族にまで気を配り、何事にもまごころを尽くした対応ができるからこそ、信頼関係も生まれるんでしょうね。ヘルパーと利用者さんの関係というのはとてもつながりが深いものです。だからこそ、研修などを通じて、彼女のような心あるヘルパーを一人でも多く育てていきたいと思っているんですよ」
 
 こう語るのは、「サンアンドムーン」の発起人であり、理事長を務める木下眞理子さん。穏やかなその話しぶりから、温かな人柄が伝わってくる。
 
サンアンドムーン事務所
気軽に助け合える場が欲しいと、NPOを設立
 6年前、脳梗塞で倒れた父。その介護がきっかけとなって、木下さんは専業主婦からNPO法人の理事長へと転身を遂げた。「それまでは、“ホームヘルパー”という言葉すらも知らないくらい、福祉に関してはズブの素人でした。でも父の介護にかかわる中でホームヘルパーの存在を知り、援助をお願いしたことで本当に助かりました。と同時に、こういう家庭の延長のような仕事なら自分にもできるかもしれない・・・。そんな思いが頭をよぎったんです」
 ちょうど子育ても終わり、これからの人生をどうするか模索している時期だった。さっそく、ヘルパーの養成講座に申し込み、資格取得と同時に、地元の福祉の事業所に登録して活動を開始したという。
 「ところが実際に仕事を始めると、どうして? と疑問に思うようなことも多くて。たとえば家事援助で伺ったお宅で、利用者の方から買い物に行きたいと頼まれれば、それならば仕事が終わったあとにマイカーで連れて行ってあげると、引き受けてしまうのが私の性格。でもそういうことをすると、事業所からは“決められた仕事以外はするな”と怒られてしまうんです」
 自分にできる範囲の手助けを、なぜしてはいけないのか。もっと気軽に助け合い、一歩踏み込んだ心のケアまでできるような活動がしたいのにと、木下さんは悩んだ。そんなときにたまたま耳にしたのが、NPOという存在。
 「私なりにいろいろ調べて、さわやか福祉財団主催の研修会にも参加して情報を集める中で、非営利で社会的な活動ということなら、自分のやりたいことそのものだと感じました。それで、友人・知人でヘルパー資格を持っている人たちに声をかけて、ボランティア活動をしながら、NPO法人の立ち上げに向けて走り始めたんです」
 1999年10月に認証を受け、同年12月にNPO法人を設立。太陽と月のように、利用者にエネルギーとやすらぎを与え、24時間ケアできるようなシステムをつくりたいとの思いを込めて、会の名を「サンアンドムーン」とした。
なごやかでゆったりとした時間が流れる







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