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「みんなのひろば」で異世代交流 練馬
 NPO法人が地域で親子のひろばを開いたり預かり支援をするケースも増えている。NPO法人の子育て支援については昨年9月、日本子どもNPOセンターが設立され、「子育ては社会のみんなの手で」「子どもの育ちを喜びあえる地域社会づくり」を目指して支援の仕組みづくりが始まったところだ。今後、子育て支援にかかわる各地のNPOが連携して、点が線となり、線が面となるような活動の広がりが期待されているが、東京都練馬区の「手をつなご」(理事長・千葉勝惠さん)もそんなNPO法人の一つだ。
 
経験豊かなシニアボランティアが遊び相手
 
おもちゃドクターの伊藤さん(写真奥)
 
 「手をつなご」は保育士として25年働き、保育園長の経験を持つ千葉さんが、「地域で人の役に立つことをボランティアでやりたい」と、6年前に区のボランティアコーナーを会場に月2回のひろば活動を開始、昨年4月にはNPO法人格を取得し、民間アパートを借りて週3回の「みんなのひろば」をオープンした。一時保育や障害児の通学介助なども行っている。「みんなのひろば」は、親子で自由に遊びながら友達づくりをする場を提供し、育児経験のあるシニアボランティアが子どもたちの遊び相手になり、母親の相談相手にもなる。対象は0歳〜3歳児とその保護者。開催日は毎週月曜、火曜、金曜の午前10時〜午後4時で、参加費は1家庭につき300円。お弁当持参でやって来て、子どもが遊び疲れて眠くなるまでいる親子が多いという。
 「お母さんたちにとっては、ただ集うことが喜びなんですね」と千葉さん。以前、初めて子どもを持った参加者に、「子どもが生まれて大変だったことは?」とアンケートをとったところ、「自分の時間がとれないこと」「何もかも不安で落ち込むことがよくあった」「毎日の生活に疲れて、夫にあたる日々が続いた」という回答が返ってきた。だから、「子どもを見ていてあげるから、たまにはゆっくりコーヒーでも飲んで」と、ふだん育児に孤軍奮闘している母親のためにコーヒーコーナーも設けている。
 子どもたちが「じいじ」と呼んで慕っているのが伊藤忠文さん(70歳)だ。おもちゃを修理するおもちゃ病院連絡協議会会員でもある伊藤さんは、「手をつなご」のおもちゃドクターであり、核家族で暮らす子どもたちのよきおじいちゃん役だ。音が出なくなったパトカーのサイレンも伊藤さんのおかげでまた鳴るようになった。
 「みんなのひろば」の魅力を、出産間際まで仕事をしていて近所に知り合いが1人もいなかったという母親は、「同年代の子どもを持つ方たちとの会話はうなずける点が多々あるし、ボランティアの方たちは栄養や育児のアドバイスをしてくださるので、帰る頃には今まで心の中にあったモヤモヤがスーっとなくなっていくよう」と語る。
 現在、「みんなのひろば」は子ども未来財団の「子どものよろこびひろば事業」の助成を受けて運営しているが、将来にわたって事業を継続していくために区の委託事業とするよう働きかけていきたいという。
共働き家庭の育児をお手伝い さいたま
 共働きの母親には専業主婦の母親が感じるほどの閉塞感はないものの、限られた時間で育児をしなければならないという負担感はある。帰宅してから子どもを寝かしつけるまでの忙しい時間帯に手助けが欲しい、というのは正直な気持ちだろう。
 
岡本さん宅で長男と遊ぶ会員(写真左)
 
 埼玉県蕨市保健センターに勤務する保健師の岡本浩代さんは、4歳の長男と間もなく2歳になる双子の男の子の3人の子どもがいる。夫は家事と育児に協力してくれるが、3人を保育園に迎えに行き、ご飯を食べさせ、お風呂に入れ、寝かせる時間帯には帰宅できない。そこで岡本さんは、職場に復帰する2か月前から、この時間帯に子どもの世話を手助けしてくれる団体を探し始めた。
 居住地のさいたま市役所や社協に問い合わせて紹介されたのが、さいたま市のNPO法人ケア・ハンズ(代表・中村清子さん)だった。ケア・ハンズは8年前から在宅の高齢者やその家族への生活援助を行ってきた相互扶助団体で、ちょうど子育て家庭への家事・育児援助を始めたところだった。
 岡本さんのリクエストは、夕方保育園から戻った3人の子どもをマンションの駐車場から家に連れて行くところから手を貸してほしいというもの。何しろ双子を車から降ろしてベビーカーに乗せ、3人分の保育園の荷物を持ってエレベーターで家の玄関に着くまでが大変なのだ。家では、3人の子どもの食事と入浴の手伝いをしてほしいということだった。
 ケア・ハンズの賛助会員(ヘルパー会員)が岡本さん宅に子育て援助に出向くのは月曜〜木曜の午後6時〜7時半で、4人の会員が日替わりで通っている。岡本さんが負担する利用料は1時間あたり1000円、1か月では約3万円になるが、「育児を助けてくれるおばあちゃんみたいな存在で、いてもらうだけでいい。自分自身がいい状態でいられるので、下の2人が3歳になるまではお手伝いをお願いしたい」と話す。
 ケア・ハンズの中村さんは「子育て家庭への援助の基本は、お母さんが困っていることをサポートすること」と言い、家庭の事情に合わせて、できるだけ母親の要望に応えていきたいという。







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