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生き方・自分流
盲導犬ボランティアとして20年
人間のために尽くしてきたわが子の頑張りに報いてやりたい
(取材・文/城石 眞紀子)
 
関西盲導犬協会ボランティア
仁井 勇さん(67歳) 三都子さん(64歳)
 
 
 京都府在住の仁井勇・三都子さん夫妻が、盲導犬ボランティアになってから約20年。この間には、6頭の盲導犬と1頭の繁殖犬(盲導犬の父親になる犬)を育て、現在は引退した盲導犬を引き取り、老後の世話を行っている。昨年10月には障害者の自立や社会参加の促進のために「身体障害者補助犬法」も施行されたが、盲導犬をはじめとする補助犬への理解は、まだまだ薄い。夫妻の取り組みを通して、その一端を紹介したい。
 
 仁井家のリビングと庭の間にある日当たりのいいサンルーム。そこは、かつてジョナが1日の大半を過ごした場所だった。
 「ジョナは私たちが預かった2頭めの子でした。盲導犬を引退後、16歳でわが家に戻ってきたときにはすでに目が見えず、耳も聞こえないし、オシッコやウンチも漏らしてしまう。それまで何度も発作で倒れていたようで、1週間も持てばという状態でしたが、それでも子犬時代のことをちゃんと覚えていて、もう、気も狂わんばかりに喜びましたね」
 そんなジョナのために、2人はできる限りのことをしようと決めた。1日中そばにいて話しかけ、食事は消化のいいものを工夫。小屋は段差をなくすためにダンボールで手作り。冬でも寒くないようにと中にはムートンを敷き、内側にはエアキャップを貼り、周囲にはいつどこでお漏らしをしてもいいようにと、ベッドシーツとバスタオルを敷き詰めた。
 「お漏らしをしたときは困ったような顔をしましたね。でも決して叱らず、“おしっこしたんか、グッドやなぁ”と誉めてやり、きれいなシーツに替えてやると、また安心して眠ったものです」
 こうした献身的な介護の甲斐あってか、ジョナは少しずつ食欲も元気も出てきて、穏やかな日々を半年以上も過ごすことができた。そして2001年4月22日。人間でいえば90歳を超える、16歳と8か月の天寿をまっとうし、永遠の眠りについた。
 「ジョナ、お疲れさま。そしてたくさんの思い出をありがとう。ゆっくりとお休み・・・」
 育てた7頭のうち、すでに6頭が天国に召されたが、そのうちの3頭は最期を看取ったという。残った1頭のネネが、現在夫妻とともに暮らしている。







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