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情報誌「さぁ、言おう」 2003年2月号

 事業名 高齢者のためのボランティア普及啓発活動
 団体名 さわやか福祉財団 注目度注目度5


ありがとうを循環する 地域通貨 23
国内のタイムダラーの取り組み
(取材・文/奈良 環)
 
 昨年10月19日に行われた「時間通貨フォーラム」本誌ではタイムダラー創始者のエドガー・カーン博士と堀田理事長との対談を特集しているが、ここでは当日行われた事例発表のうち、国内におけるタイムダラーの取り組みについて、NPO法人タイムダラー・ネットワーク・ジャパン代表理事のヘロン久保田雅子さん(=写真)の報告をご紹介する。
 
タイムダラーとは?
 「この世の中に役に立たない人はいない」というコンセプトのもとに、誰もが平等に持つ時間を単位として、相互扶助の精神に基づくコミュニティーの再構築を図るための地域通貨の一種。
日本版タイムダラー誕生と経緯
 私が18年半ほどアメリカに住んでいた時に、カーン博士と故前夫人との取り組みをテレビで見たことはありましたが、タイムダラーに深く関与することになったのは日本に戻ってからのことです。
 1991年12月にNHK松山がタイムダラー事務局長アナ・ミヤレスさんをお呼びした時にお手伝いを、その後93年には、さわやか福祉推進センター(さわやか福祉財団の前身)による米国視察があってカーン博士の事務所を訪問したりしていくうちにタイムダラーにのめり込んだという経緯があります。そして、94年に、私が当時主宰していた「長寿社会を考える研究会」でカーン博士とアナさんを日本に招聘したことが直接のきっかけです。
 なぜタイムダラーか。それは、私の住む愛媛県には過疎の地域がたくさんあり、「自分達がどんなに頑張ってもこの世の中は変わらない。いつかは一人ぼっちになって、いずれ、都市に吸い込まれていってしまう」という諦めの境地の人々がたくさんいるのに気づいたからです。タイムダラーは、当初、貧しい地域の人々の自立支援プログラムとして始まったのですが、拡大家族づくりを目指していますから、こうしたシステムを日本の土壌の中で生かしていきたいと思って、瀬戸内海の関前村に、カーン博士やアナさんをお呼びしたのです。
 関前村の「だんだん」とは方言で「重ね重ねありがとう」という意味です。」ここでは30分に対しておもちゃのチップ1枚をやり取りするのですが、年会費500円を払うと20枚のチップが渡され、運用の期間は1年間で、次の年にはまたゼロから再スタートします。タイムダラーが循環していくためにはメニューもたくさん必要ですし、互いに知り合い、安心して老後を暮らせる地域をつくっていく、その土台をつくることを意図しています。
 その後、99年には愛媛県補助事業で、さわやか福祉財団の協力を得て、地域通貨検討委員会を設け、国内外の地域通貨の研究をしたり報告書をつくりながら、また翌年度より2年間、地域通貨を一つのツール(道具)とした県のモデル事業の中から、「いまづ」「わくわく」「となりぐみ」「ゆうゆうヘルプ波方」などといった10の地域通貨が生まれ、その中の9つがタイムダラーシステムを取り入れています。
 また、静岡では「EGG」(エッグ)があります。担当の野口さんは「商店街はコミュニティーとして楽しくなければ活性化しない。だから、まずは関前村のようにタイムダラーで」ということで、立ち上げなどのご相談に再々伺いました。さらに静岡には天竜で「ベアーズ」という地域通貨をはじめとして5か所くらいが準備中です。私が直接お手伝いをしているのは18か所ですが、「ニッポン・アクティブライフ・クラブ」(略称ナルク)や神戸の「かもん」や「らく」など、それぞれ、タイムダラーのシステムを取り入れつつ“自分流”をつくっておられると思います。
 
タイムダラーや地域通貨の啓発普及、立ち上げ支援で全国を飛び回る久保田さん
失敗・成功例を通じて考える地域通貨
 タイムダラーを日本で始めてみて、うまく機能しているところとそうでないところとがあります。機能しない理由は、第一に、リーダーが自分の名誉職のために使おうとしたからです。タイムダラーを売りにしただけで、人々の理解が得られなかった。第二に、タイムダラーに限らず、地域通貨では、お互いに知り合う工夫と発展させる知恵がない場合。つまり、交流会などを通じて仲間がそれぞれの悩みをさらけ出しながら課題を見つけだし、様々なニーズを考え出しつつ、この道具をどう使おうかというクリエイティブな発想がない場合。第三に、「日本では助け合いの精神などないからダメ」といったように、頭の中だけで考えていて行動に移せない人々の場合。この3点をクリアできれば、誰にでも簡単にタイムダラーは始められます。
 最後に、2つの例をご紹介します。新居浜市大島の「わくわく」では、1時間100点としているのですが、男性が多く、なかなか助け合いが循環せずに貯める一方であった結果、貯まった点数を「わくわく」に寄付するという構図ができました。寄付された「わくわく」は基金でプールして、1時間を100円相当に換金して島のために苗木を買い環境美化に役立てています。
 もう一つ、愛媛県津島町の「くじら印お助けカード」では、子ども達がお年寄りの自分史づくりのお手伝いをしてタイムダラーを得る中から、子ども達がそれまで知らなかった地域を深く愛するようになり、またお年寄りは誇りをもって子ども達に文化を伝えることができるようになっています。
 こうした小さな積み上げの中から、思いやりややさしさの心が育まれているのです。ぜひ、皆さんも、ご自分達の地域の課題・目的のために地域通貨を活用してください。
 
貯め込ませない工夫について
 地域通貨では「プラス長者」「マイナス長者」という呼び方をすることがある。つまり、地域通貨を貯め込んだ人をプラス長者と呼び、その反対の人をマイナス長者と呼んでいる。マイナス長者の人はそれだけ助けられ上手ということなので本人に気がねをさせないことも重要であるが、誰しも、誰かの役に立つ何かを持っているため、コーディネーターや事務局は、その人の埋もれた才能を引き出してあげる工夫がまず必要である。また、プラス長者の人には、寄付をしてもらったり、あるいは半年間でゼロにするといったように、運用期間を定めたりするのも方法である。
 
愛媛県関前村「だんだん」
 入会の際に20枚のチップが渡され、マイナスになれば追加してもらえる。そして、1年後には、どんなに貯めていたとしても、また最初の20枚から始まるという方法をとっている。これは自分のために時間を貯めるのが目的ではなく、互酬関係の下でサービスが循環し、「安心して楽しく暮らせる島」づくりを目的としているからである。
 
千葉市「ピーナッツ」
 減価の考え方を採り入れ、3か月ごとに通帳を回収してプラスのポイントからは月1%の率で減額させることによって取引を促している。
 
世界各地「タイムダラー」
 自分が使える以上に点数が貯まったときは、事務局や地域の高齢者に寄付することを勧めている。また、特に学生達には寄付することを勧めている団体もある。
 
愛知県大府市「さわやか愛知」
 元気な時に貯めておき、いずれ自分が動けなくなったときに使いたいとして、時間預託をしている人が多いが、最近では「今」の時点でお互いに使い合うことも奨励している。また、貯めた時間分を寄付して、被災地への寄付や、障害者施設などで使ってもらう工夫もしている。
 
 一方的にボランティアをして助けるだけでなく、自分も誰かから助けられる。それぞれの人が地域で自分の「必要性」に気づき、お互いの持つ「可能性」や「能力」を引き出し合うことによって地域支え合いが実現していく。







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