われら地域市民
定年前から地域や社会を意識した活動を
日立キャピタル株式会社
日立グループの金融サービス会社・日立キャピタルには『Square』(スクエア)という社内報がある。2002年9月号の特集は座談会「ボランティア活動から得られるもの」、5名の社員が社長を囲んでその活動について話し合っている。東京都港区の同社を訪ね、CI・広報部担当部長長嶋口司さんに話を伺った。
社内報で毎月10年間にわたりその活動を招介されていますね。社員のボランティアや社会賃献活動への意職が高い会社だと感じました。
1992年から社内報に「私のささやかな社会貢献活動」、96年からは「みぢかな社会貢献」というコーナーを設け、地域やグループなどの活動に参加している社員を紹介しています。忙しい仕事をこなしながら地域社会でも活躍している社員を紹介することで、ボランティア活動や社会参加活動への理解促進や自らが始めるきっかけになればというのがコンセプトです。社員の関心が思ったより高いので驚きました。
今までに紹介した活動はどんなものがありますか?
まさにいろいろですが、なかでもPTAや少年野球の役員をやっている社員が多いですね。コミュニティー関連から教育、福祉、環境、国際交流、文化・芸能・スポーツまで、多種多様です。
きっかけもいろいろと。
たとえば、お子さんがボーイスカウトに入っていて奥様の勧めでボーイスカウト団の指導者(副長)に。あるいは、習い始めた踊りの発表会の一つがたまたまチャリティー公演でボランティア活動につながっていった、市の施策である障害を持つ人の送迎ボランティア募集に応募したなど、身近なことから気軽に背伸びしないで始めた人が多いようです。
社長もボランティア活動を推奨されていると聞きました。社会貢献活動に対する会社の強い姿勢を感じます。
当社の経営理念「人間尊重」や“Quality First”が、その意味するところの一つに「常に、お客様や社会の立場で考え、行動する」ということが掲げられています。企業の永続的な存続・発展は社会の支持があってこそ可能です。
「社員の一人ひとりが仕事もきちっとやり、地域にも貢献できる立派な人間になってほしい。そういう人間が集まった会社こそ世の中から信頼される立派な会社である」と考えています。
地域社会にも貢献できる社員が多く育ってほしいという思いから、その面ですでに活動している社員を社内報で紹介しきっかけづくりもしてきましたが、環境や福祉に対する関心が高まりつつあった社会状況の変化も影響していると思います。
具体的な活動支援としては、年間4日のボランティア休暇制度やボランティアにかかわる費用(交通費、食事代など)を支援する福祉制度があります。また、ボランティア活動情報は、イントラネット上の「エコボラネット」で随時流しています。
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「日立キャピタルの森林」で社員の環境保全体験キャンプ |
会社としても、障害者への支援活動として「アートビリティ(旧称・障害者アートバンク)大賞」への協賛をされているとか。
91年に障害を持つ作家エム・ナマエさんの絵画を購入したことから始まっています。アートビリティは社会福祉法人東京コロニーが運営する機関で、障害を持つ作家の絵画作品を印刷物に貸し出すことで、障害を持つ作家に発表の場を提供したり経済的な支援を行っています。当社では社内外への広報・宣伝物・ノベルティなどに幅広く作品を使用しています。また95年からは年1回その年最も活躍した作家を表彰する「アートビリティ大賞」に協賛し、98年からは「日立キャピタル特別賞を設け、支援の幅を広げています。
環境保護のシンボルとして所有する「日立キャピタルの森林」、今後は地域や市民のために活用していく計画と聞きました。
92年の創立35周年記念事業として林野庁の「法人の森林」制度に第1号で参画、静岡県中伊豆町にある森林のオーナーになりました。会社も支援している社員有志で結成された環境ボランティアクラブが、主に社員の環境保全体験キャンプ(キャンピング・森林浴・散策、植林・育林、清掃活動など)を行ってきましたが、今後はこの森をより有効に活用していこうと思います。「父親代わりになった社員ボランティアが子どもたちと自然体験を楽しむ」「母親たちの体験を話し合う場として利用してもらう」など、環境ボランティアクラブではいろいろな夢や計画をしているようです。会社はそういった夢や計画をバックアップしていきたいと思います。
(取材・文/三上彬)
コラム
社内報で社員にボランティア活動の効用を説く村田嘉一社長。自身50歳くらいの時、定年になった先輩達がどうやって生活していいかわからないという状況を見て、これはまずいと思い立って地域の中に溶け込んで活動してきたという。「私は土日の方が忙しいほどです」と笑う。「リタイアしてから地域の中に溶け込むのは難しいから、地域活動は現役の間に始めることが大事」。社長自ら地域を意識した活動を今から始めることを推奨している。
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