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ふれあい助け合い 東西南北
さわやかインストラクターから
 
 全国でふれあい・助け合い活動についてアドバイスを行うさわやかインストラクター。そんな皆さんから活動の状況や個別の課題、心温まるふれあいエピソードなどを寄せてもらいます。
 
農的フィールドに癒しのステージを求めて
市民互助型在宅サービスかたくりの会(山形県)
佐藤 敬子
 
 私には実は、秘かに温めていることがあります。「できたらいいなあ」というくらいの可愛い夢ですが、それは、畳の上でもふとんの上でもなく、もちろん病院のベッドでもなく、土の上で死にたいということです。本当に動けなくなるまで土とかかわりあって生きていけたらと思うのです。そしてそのこだわりを、高齢者の生活の中、介護の中に取り入れて行きたいのです。
 さわやか福祉財団でインストラクターの研修をさせていただいたことで、私の思いはだんだん形を成してきています。百人百色の介護の中の一つとして、“農的介護”、軽い農作業を通して、リハビリやデイサービス、ケアハウス等ができたらいいなあと夢みている訳です。しかし、今、私が代表をさせていただいているかたくりの会は、運営費を捻出するのに四苦八苦、本来事業の在宅サービスに加え、町の委託事業の配食サービス、町施設の管理清掃と多角、複雑経営でようやくしのいでいるNPO団体です。それは確かに夢なのです。
 インストラクターとしての私は、卵からかえったばかりのひよこ、先輩方の後にくっついてお世話になっています。こんなひよこが皆さんにお伝えできることは、ニーズがない、ボランティアする人もなかなかいない、そんな、ないない尽くしの小さな町の中の小さな会を、どんな風に維持しているかという体験に外なりません。
 たった一人の困った家族を支えられたらいいという助け合い、そこに生まれる心の癒しは、受ける側もさることながら受け取ってもらえた方が、もっと癒されるという双方向ボランティアなのだということです。ですから、私はサービスを提供するというより、会員同士の癒しのステージを用意するとイメージしています。
 今、原稿を書いている一つこたつの上で、痴呆のおばあさんが豆の選別をしています。豆ガラをどっちの入れ物に入れたらいいか迷ったあげく、反対に入れてしまいました。そして私の顔を見てにこっと微笑むのです。「こいづこっち、あいづこっちだべした」「んだな」といってるうちに、また、手にたまった豆ガラを、きれいにした豆の中に入れてしまいました。そうなのです。こういう風に、頭で考えた通りに実際は進まないということを、日々突きつけられながら、こうしたまどろみの中の癒しのステージがたまらなく好きなのです。
 
介護保険とボランティアが地域を変えた
(大阪府)
芦原 久子
 
 私が初めて在宅支援ボランティアで出会ったのが、末期がんで一人住まいの男性の家事援助でした。また、リュウマチで寝たきりになった方のシャワー介助と話し相手でした。このお2人からいただいた笑顔が、私に「地域たすけあい団体」設立を決心させました。残念ながら、熱い思いで立ち上げた団体を3年で去ることになりました。しかし、この地域のどこかで、毎日「お互いさま」と活動している組織があることをうれしく思っています。
 大東市では、NPO・草の根の「街角デイハウス」3団体が立ち上がり、いま4つ目の立ち上げが検討されています。私は、その中の1つ、設立3か月目の「街角デイハウスほのぼの」でボランティアをしています。昼間独居で、笑顔や会話のなかった方が、1か月間で笑顔と会話、製作意欲を復活されたり、参加される高齢者が、スタッフや他の高齢者に、編み物や手芸を楽しんで教えています。「引きこもり」による孤独をなくす「ふれあいの場」の大切さを実感しています。
 生協は「たすけあい」を設立し、在宅支援活動をしていますが、介護保険事業はほとんど医療機関、従来の介護事業者、小さな有限会社によって行われています。利用の争奪戦を呈しているようです。社協もボランティア団体を持ちながら、介護保険による支援も行っています。地域協同を働きかけ「介護保険の枠外を地域でどうして支えて行くか」を考える研修会の実施を考えています。「時間通貨」による「近隣たすけあい」、地域で気安く行ける「サロン」「デイハウス」を広める手伝いをし、何よりも、助けを必要としたとき「たすけて」と言えることの大切さを伝えていきたいです。
 隣接する各市も、福祉のあり方が変わってきました。
 寝屋川市が市民活動支援センターをつくり、NPO・草の根団体の活動を支援するようになりました。NPO法人寝屋川あいの会が地域たすけあい支援センターとして講演会を開催し、多くの市民に「地域での支え合い」を訴えておられました。
 枚方市でも、北河内ボランティアが活動されています。生協も助け合い団体の活動を支援しています。また、各市でNALC(ナルク)も活動をしています。有償ボランティア・無償ボランティアと形態が異なっても、活動する人が増え、地域は確実に変化しています。
 
「おひさまくらぶ」はノーマライゼーション
NPO法人おひさまくらぶ(宮城県)
近藤 明美
 
 「おひさまくらぶのようなところは、ないわね」「居心地もいいし、スタッフも皆気がついて」と、お年寄りにほめていただいた。「お日さまはどんな人にも、平らに陽を照らしてくれるから」と友が名づけてくれた「おひさまくらぶ」という名前が私はとても気に入っています。名前そのものがノーマライゼーションを表しているからです。
 “たとえ年を取って障害(痴呆)を持っても、地域の中で自分らしく暮らしたい”そのような地域社会でありたいと、1999年5月に立ち上げました。2000年4月に介護保険事業を始めたことにより、人とお金のやりくりに追われ気持ちに余裕がなく、無我夢中の2年間だっただけに、「よく頑張ったね」「これからも続けてね」とご褒美をもらった心境です。
 今のおひさまくらぶの雰囲気は、大きな空間が合わないお年寄りに日中の居場所を提供し共に過ごしているのですが、お年寄りもスタッフもボランティアも、皆が自分らしくかかわる中で創り上げてきたものです。そして介護している家族も自分らしく生活していけるように支援していきたいと思っています。
 そんな中、「おひさまくらぶで働きたい」「働かせてください」と続けて3人も訪ねてきました。1年前には想像できなかったことです。
 「給料は安いけど、スタッフとしての能力は、めちゃくちゃ要求しますよ」「努力します!」と力強い言葉が返ってきました。仙台にも、NPOの時代がやって来たのでしょうか。
 また、現在もう一つの家「あがらぁ in」(仮称)の準備中です。ボランティアで始めたデイホームも、今は介護保険の小規模デイサービスとして認知され、片方の輪はどうにか回るようになってきました。「自立だけど、おひさまくらぶを利用したい」「まだまだ元気だから何か手伝いたい」「ご飯を作ってあげたい」「ボランティアしたい」そんな多くの要望に応えてオープンさせるものです。
 「あがらぁいん」とは「家に上がってゆっくりしてください」「上がってお茶っこ飲んでいってください」という意味の方言です。誰でも気軽に上がってもらえるように、工夫しなければなりません。来てくれる人はいるのかしら?運営していけるのかしら?と、少々不安ではありますが、しばらく楽しい時間が持てそうです。そして、1日も早く車の両輪で回る日が来るように、歩んで行きたいと思っています。







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