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喜・涙・笑 ふれあい活動奮戦記
それぞれの人が自分を大切にしながらふれあい、そして助け合う。
そんな地域社会をつくり出したい
NPO法人福祉サポートセンター さわやか岐阜みのじ(岐阜県
 
NPO法人福祉サポートセンター さわやか岐阜みのじ
 「活動を始めて間もない頃、ある利用者さんからこんなことを言われましてね。“あなたは少し話し下手だけど、とても聞き上手ね。おかげで何でも話せたし、心が安らいだわ。病人にとっては聞き上手な人が一番なのよ”と。この言葉によって、私は自分と言う人間を認めてもらうことの喜びを知るとともに、活動の姿勢がどうあるべきかを教わったように思います。こんなふうにして、出会いの中からさまざまなことが学べるのがこの活動に携わる醍醐味ではないでしょうか。ただ、利用者も協力者も十人十色です。だからこそできる限り、個々の興味や能力、考え方を把握して、コーディネートしていきたい。それが皆さんが生き生きと活動するためには、欠かせないことだと思っています」
 
 こう語るのは、「さわやか岐阜みのじ」の理事長を務める加藤たき江さん。好きな言葉は「誠実」。趣味のカメラで「皆さんの笑顔をいっぱい撮りたい」というその温かな人柄で、今日の同会を築き上げてきた。
 
事務所前風景
地域に恩返しをしたいと活動を開始
 加藤さんがNPO活動に取り組むことになったのは、1994年4月、岐阜県で行われたさわやか福祉財団の堀田理事長の講演を聞いたことがきっかけだという。
 「私は22歳の時に母を病気で亡くしたのですが、その際に地域の人たちに、いろいろ助けてもらいましてね。だから、いつかは何らかの形でこのお返しを地域にしなければ、と思いながら長い間、暮らしてきました。そして、ようやく子育ても終え、自分の時間が持てるようになったのが50代半ば。その時に堀田理事長の講演を聞く機会を得て、“これからの高齢化社会では、高齢者自身が地域の中で支え合わなければならない”というお話に共感し、行動に移そうと決めたんです」
 さっそく、当時、岐阜市内で在宅福祉活動を展開していた「さわやか福祉ネットワーク岐阜」に入会。2年ほどボランティア活動に携わる中で、「自分が住む柳津町でも、こうした助け合いの会をつくりたい」との思いを強めた加藤さんは、友人・知人に声をかけ、97年5月に「さわやか岐阜みのじ」を立ち上げた。
 「美濃地方の“みの”と“みんなで一緒にノーマライゼーションを実践しましょう”という意味をかけて、会の名前を“みのじ”としました」
地域に開かれた会へふれあい交流を重視
 以来5年余りにわたって、「心のふれあいを大切に、暮らしの手伝いをする」をモットーに助け合い活動を実践。スタート時点では50名ほどだった会員も約200名まで増え、現在は、家事援助・移送サービスなどの有償ボランティア、老人施設の訪問や児童館での子育て支援などの無償ボランティア、そしてプロによる介護サービス(介護保険の訪問介護事業)の提供という3本柱で活動を展開している。
 「介護保険事業に参入した当初は依頼件数も少なかったのですが、口コミで徐々に利用者の数も増え、今では51名となりました。これによって運営面が安定しただけでなく、介護保険だけでは在宅介護を支えきれないということが皆さんに理解され、助け合い活動の重要性も再認識されたように思います。ですから最近は、枠内と枠外をドッキングさせて利用される方も多く、助け合いそのものの活動時間数も増えています。車の両輪としての役割が果たせるというのは、やはりNPO団体の強みですね」
 こうした発展を遂げた陰には、たとえば移送サービスひとつをとっても、病院を退院して自宅に戻る利用者が脊椎に問題があると知ると、25キロの道のりを3時間かけてゆっくり、ゆっくりと走るなど、一人ひとりのニーズを大切にしながら、誠心誠意のサポートを心がけてきた努力の積み重ねがあることは言うまでもない。
 「またみのじでは、地域に開かれた会でありたいとの思いから、事務所の一部を開放して“ふれあいサロン”を常時開設し、生きがいづくりのために、さをり織りやパソコン、俳句教室を開いたり、裏の畑で花づくりもしています。学校が休みの時期になると子どもたちもやって来て、お年寄りと一緒にさをり織りを楽しんだりする姿も見受けられるんですが、こうした形で、自然に世代間交流ができるのはとても素敵なこと。おかげで事務所はいつも賑やかで、笑顔にあふれているんですよ」とうれしそうに話す加藤さん。
 このほか、学校や県とのタイアップで、介護福祉士の卵である学生たちを受け入れて在宅介護の体験実習を行ったり、小中学生にふれあい活動の体験ボランティアを経験してもらう機会をつくるなど、若い世代への働きかけを積極的に行っているのも、同会の特徴のひとつと言えよう。
 「若い人たちが、みのじで感じたことを心の片隅にでも憶えていてくれたらうれしい。そんな思いが根底にあります。実際、実習期間修了後に、ボランティアとして手伝ってくれた学生さんもいるんですが、会の継続や発展を考えると、20代から70代までの各年齢層が参加しないと、これから先の大変な時期を乗り越えていけません。ですから、担い手づくりというのは、最重要課題のひとつと考えているんですよ」
 
事務局員の皆さん。左が加藤たき江さん
 
岐阜県知事からの活動表彰状
 
木のぬくもり漂う木造平屋建てのグループホーム「ガーデン柳津」。ただ今建築中
 
岐阜県立三光園を訪問







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