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情報誌「さぁ、言おう」 2002年10月号

 事業名 高齢者のためのボランティア普及啓発活動
 団体名 さわやか福祉財団 注目度注目度5


グループホームの窓辺で
9人9色のプロフィール
 
元気老人の下宿屋
 前号で紹介したT子さん(80歳)が暮らすグループホームは、元はタイル会社の事務所兼社員寮だった建物を改築したものだ。幹線道路に面した3階建てで、最寄りのJRの駅までバスで5〜6分、電車で2駅行けばデパートがいくつもある商業地という都市型のグループホームである。
 売りに出ていたタイル会社の物件をグループホームにしようと買い取った経営者のOさんは、ここからほど近い自宅で、すでに13年前からグループホームを始めている。いわゆる「ふれあい型」グループホームの草分けである。Oさんに「10年以上も前になぜグループホームを?」と尋ねると、「これからは元気老人をつくっていかなくてはと思ったの。それでね、高齢者といえども元気なうちはみんなで助け合つて暮らす老人のための下宿屋をやろうと思い立ったのよ」と、歯切れのよい返事が返ってきた。
 Oさんをそう決心させたのは実母がトイレで倒れて寝たきりになり、何年も病床にあったからで、「母の姿を見るにつけ、人間生まれてくるときは選べないのだから、死ぬときくらい自分の意思で準備しておきたいと考えるようになりました。いつ、どこで、誰と暮らすのか、終のすみかの一つとしてこういう下宿屋があってもいいと思ったのです」と話す。
介護する人、される人
 改築したグループホームの間取りは、夫婦で入居する人、単身で住む人それぞれの事情で選んでもらえるよう3DKから1DKまで用意した。新たに各階を結ぶエレベーターを設置し、各室に床暖房とシャワートイレを付けた。入居者は夫婦2組、親子1組、単身者3人の計9人で、年齢は90歳から55歳まで。これは親子で暮らす母と娘の年齢だ。
 「入居者の中には介護する人、介護される人いろいろいらっしゃいますよ。9人9色ね」とOさん。単身者の一人はヘルパーとして働いているし、最高齢の90歳の母は要介護4で、毎日1時間ヘルパーに来てもらっている。夫婦で暮らすSさんのご主人は84歳で要介護2、奥さんは80歳で要介護3。こちらには週3日家事援助のヘルパーが通ってくる。
 夫婦ともに要介護の身であっても、Sさん夫妻の日常は穏やかだ。奥さんは週3日これもOさんが運営するデイサービスに通い、ご主人は奥さんが留守の間、机に向かって原稿を書く。Sさんはかつて菊池寛賞を受賞した作家で、84歳の今も執筆意欲は旺盛だ。
小さな親切、大きなお節介?
 9人が初めて顔を合わせたのは、入居に先だっての体験合宿会。去年の年末から今年のお正月にかけて全員で赤倉温泉に出かけた。車イスの人もみんな一緒に道中の雪景色を楽しみ、数日間、温泉で裸の付き合いをし寝食を共にした。
 「お互い見知ったつもりでも、いざ一緒に暮らし始めると、余計なところにまで気をつかったりして、慣れるまではちょっと時間がかかりました」とT子さん。「たとえばね・・・」と話してくれたのが、郵便物の手渡し。1階の郵便受けに手紙を取りに行ったついでに、同じ階の人の分も取って来て届けてあげていた。お互いに高齢の身、郵便物を取りに1階まで下りるのは億劫だから、と同居人を気遣ってのことだった。
 「でも、やめにしました」。相手の立場に立てば、昼寝中かもしれないし、電話中ですぐには出られないかもしれない。見られたくない手紙もあるだろう。「小さな親切、大きなお節介というやつですね」。
 元気な人が病身の同居入を気遣い、自分ができることはやってあげたいと思う気持ちは、高齢者がひとつ屋根の下で暮らすグループホームでは大事なことだ。要は相手の負担にならず、親切の押しつけにならない距離の取り方なのだろう。入居して半年余りが経ち、T子さんはその辺の距離感がようやくつかめてきたそうだ。
「どっちでもいい」はナシ
 「決め事はどんな些細なことでも、全員の了解の上で決めます。これがグループホームの鉄則ね」と経営者でありコーディネーターでもあるOさん。こんなことがあった。食堂のテーブルにつくと、座る場所によってテレビがよく見えるところ、テレビを背にしてしまい、全く見えないところがある。これでは不公平だと、みんなで決めたルールが、1か月ごとに座る場所を回していくこと。なるほど、こうすれば全員がまんべんなくテレビの画面に向き合える。こうした日常生活のルールを決めるのが、月2回開かれる全員参加のミーティングだ。
 「みんなが意見を言うこともミーティングの鉄則。でも、『どっちでもいい』はナシよ、と釘を刺します」。たとえば、みんなで外食しようという相談をしているとき、意見を求められて「どっちでもいい」はナシ、というわけだ。「行きたいか、行きたくないか、ハッキリ意思表示をしてね」とOさんは迫る。食べたいのか、食べたくないか。見たいのか、見たくないのか。日常生活はそんな小さな選択の連続だ。
 「年を取ると考えることや自分で決めることが億劫になって、つい『どっちでもいい』になりがち。でも、本当はどうしたいの?と、ちょっと背中を押してあげる。これがコーディネーターの役割だと思っています」と話すOさんの携帯電話には、入居者から「ねえ、どうしよう」という相談がしょっちゅうかかってくるそうだ。
 
日常生活に規則はあるの?
 生活上の規則は特にないところがほとんど。ただし、共に暮らす上でのルールはその都度、全員で話し合って決めている。たとえばゴミ出しの当番、欠食の連絡、夜間のテレビやステレオなどの騒音、行事の予定などだ。決まり事は少ないほうが生活は快適だが、グループホームは集団生活であり、個人の自由な欲求と集団のルールとの間で葛藤が生じることがあるかもしれない。ミーティングはそうした不都合や苦情も含めて互いに感じていることを率直に話し合う場であり、ここでみんなの意見や思いを建設的にまとめていくのがコーディネーターである。
 以下に、生活面でよく聞かれる質問に答えるかたちで、グループホームの生活の一端を紹介しよう。
 
Q
部屋の掃除や洗濯は自分でするのですか?
A
自分でできるうちは自分でするほうが生活リハビリという観点からも望ましい。ただし、掃除や洗濯などのサービスの範囲は入居時の契約事項で定められている場合がほとんどで、ホーム側が毎月ハウスキーパー料を徴収して家事を行うケースと、普段は自分でやり、必要が生じた場合に有料でサービスを受けるケースがある。要介護状態になって家事援助のヘルパーを利用するなどのケースがそれだ。
Q
食事はいつも入居者全員で食べるのですか?
A
原則として食事はホーム側から提供されるが、3食全部のところもあれば、朝食は各自で食べるというところもある。自室にキッチンがついていれば、自分で食べたいものを作って食べることもできる。食事は普通は食堂で食べるが、家族や友人が訪ねてきたときは、家族や友人の分もホームに作ってもらい、自室で食べることもできる。食費は喫食数によって徴収されるので、欠食するときや家族の分も作ってもらうときなどは、前もってホームに連絡しておくことがルールだ。
Q
ペットを連れて入居できますか?
A
各ホームによって対応は異なるが、一般に小鳥や金魚などはよいが、犬や猫はいけないというケースが多い。共に暮らす入居者全員がペットを好むとは限らないためだが、ホームによっては全員がペットを受け入れられる状況にあって、結果的にペットセラピー(ペットによる癒し)の効果を上げているところもある。







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