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あくまでも枠外サービスにこだわりたい
 そんな同会の特徴は大きく分けて2つある。まず1つめとしては、自分のできる範囲で、時間と労力を使い、少しずつでも支え合うという、双方向性の助け合い活動が実践されていることが挙げられる。
 「自分が病院に行くときは送迎サービスを利用し、他の日には一人暮らしのお年寄りの話し相手に行く人。会員におばあちゃんをみてもらい、その間に白分は他のサービス活動をする人。時間預託で貯めた点数を使って留守にするときは植木の水やりを頼む人など、利用の仕方はさまざまです」
 もう1つは、介護保険の枠外サービスだけを提供する草の根団体のスタンスを貫いている点。
 「もちろん、利用者の方から“介護保険サービスにも対応してほしい”との要望は上がりました。でも、自然体で助け合いに取り組んできた私たちに、型にはまったサービスを提供する介護保険はそぐわない。何より、介護保険事業に参入すれば競争社会。それをマネジメントしていくには能力も体力も必要。主婦として家庭も大切にしたいと思っている私には、そこまでできる自信も余裕もありませんでした」と中田さん。
 それゆえ、介護保険事業に関しては「たすけあい」と切り離そうと、事務局でコーディネートを担当していた人が中心となって、「ヒューマンリンク」という別会社を設立。これまで同会でサービスを受けてきた高齢者が介護保険を利用したいと申し出た場合は、ここを紹介することとした。
 「助け合いサービスは収益を度外視していますから、運営的には慢性的な赤字でいつもお金のことで頭を悩ませてきた。でも、この会社が運営経費の一部を援助してくれるので最近はだいぶ助かっています。今のところ、両者はまったく別組織なので、枠内サービスと枠外サービスを連携させて在宅での生活をサポートしていくことまではできていませんが、これからはそういう課題にも取り組んでいきたいと思っています」
 
 大阪府河内長野市に本拠地を置く「河内長野たすけあい」は、誰もが心豊かに暮らしていける地域社会を目指し、助け合いの精神に基づき、全会員が平等な立場を保ちつつ相互扶助を行い、地域社会の福祉増進に寄与することを目的として設立された会員制の住民互助型団体。主なサービス内容は、(1)選択、掃除、買い物代行、留守番、簡単な介護及び介助。話し相手などの在宅サービス、(2)通院や外出の際の送迎・移送サービスなど。会員になるには登録費用5000円が必要。
 在宅サービスの利用はチケット制(1冊6500円・10点)で、1時間につき1点を支払うシステム(交通費は別途)。送迎・移送サービス料は会の規定により決定。活動に対する謝礼は1時間500円で、時間預託制度も採用している。事務局の受付時間は月曜から金曜日の9時から16時。(→連絡先は最終頁)
 
移送サービスの合間にパシャリ!
 
地域のお年寄りを支える“信頼の足”として需要は高い
中高年のための生きがいづくりの場を
 介護保険制度が施行されて2年余り。介護の現場は大きな変化を遂げ、「NPO団体に求めるニーズは確実に変わってきている」という中田さん。
 「たとえば支援内容は、最近は圧倒的に送迎・移送サービスが多く、サービス活動全体の約8割を占めています。この辺りは交通手段が不便ですし、“タクシーを使うよりもずっと親切だし、安心できる”という声も多い。中には、介助付きの旅行などを望まれる方もいらっしゃるんですよ。逆に減ったのは家事援助や介護・介助などの在宅サービス。今までサービスを受けていたお年寄りの約8割が介護保険に移行したのがその理由です」
 これに伴ってヘルパー資格を持つ会員の介護保険事業所への移行も目立ち、その結果、需要と供給のバランスが崩れ、会員が望むサービスに、担い手不足で応えきれないケースもでてきている。それが今、いちばん頭を悩ませていることだとも。
 「心の交流を大切にした活動をしたいと思っていても、介護や介助に対するニーズが減っている現状では、せっかく身に付けた能力を生かす場がない。それならば、確実に活動できる介護保険対応のサービスに携わりたい。そう思う気持ちもよくわかるんです」
 こうした現状を考えると、今後は自分たちの活動の方向性を見直さなければならないだろうと、中田さんは考えている。
 「今までは“困ったときはお互いさま”の精神でやってきた。もちろんそれは会にとって大切なことですが、これからはさらに、中高年がイキイキと生きていくための場づくりという視点も必要なのかなと。たとえば、料理教室やダンスパーティー、旅行会などを通して、楽しみながら参加できるような環境を整えたり、単に楽しむだけじゃなく、それぞれが持つ能力を生かして自己実現ができるような活動も模索したい。そして、こうした仲間づくり、生きがいづくりを通して、助け合い活動に参加してくれる人を増やしていければいいと思ってるんですよ」
 自分たちの求める暮らしを、自分たちの手でつくり出せるのがNPOの利点。時代の流れに沿った活動をうまく取り込みながら、今後とも地域を豊かに耕していってほしい。
 
1993年9月 地域で勉強会を始める
  さわやか福祉財団主催のリーダー研修会に参加
1994年4月 「河内長野たすけあい」を設立
1995年5月 送迎・移送サービスを開始
1997年8月 田中尚輝氏の講演会を開催
1998年11月
1999年4月 介護保険サービス専門の会社「ヒューマンリンク」を設立
  出資金制度を改め、登録金制度とする
 
「ヘルパーさんのおかげです」・・・
 
依頼を受けて草取りに







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