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学校、家庭、地域が連携する、またとないチャンス
見城 ボランティアに関する話を家ですると盛り上がるんです。そのまま学校や地域につながっているからでしょうね。一方で気持ちはあるけれど、どうすればいいかわからないという現状もあります。大人の力を、徹底して裏方に回ることによって示していくと、うまくいくのではないでしょうか。資金調達や物資の提供など、大人が加勢することはたくさんあります。特に男性の参加は底力になります。
堀田 確かに父親の力は大きいですね。いい子に育てようと思えば父親がボランティア活動するのが一番手っ取り早いんです(笑)。それと先生方の影響力も大きく、先生が率先してボランティア活動しているクラスは、全体に活気がみなぎって、生き生きしてきますね。
北城 さらに言えば、親や先生だけでなく、地域社会や企業人など外部の人も大いに利用すればいいと思います。経営者の話を聞きたいということであれば、頼まれれば私どもも協力します。経済同友会では昨年は100社くらいの経営者が授業に行っています。もちろんボランティアです。社会の人たちを教室に呼ぶのは子どもたちにはいい刺激になります。
堀田 先生方自身も、学ばれることが多いでしょうしね。父母の中にも「○○の名人」「○○の達人」がおられるでしょうから、交流を進めて、子どもたちを地域に出ていかせられるように。
見城 子どもたちが自分の地域社会に興味を持ってかかわるのは、本当に大事なことだと思うんです。かつて日本では祭りがありましたよね。今、各地で祭りを復興させる動きがありますが、これもまちづくりに参加する、楽しいボランティアです。
堀田 会話があり、付き合いがあり、ふれあいがあるのがいいですね。祭りはボランティアであって、動員ではダメです(笑)。生活の中の助け合いがなければ。私たちは、“山形方式”と呼んでいますが、山形で行われている地域の助け合いがあって、これが始まってから、地域に残る若者が増えているんです。これも祭りに共通する流れの結果であろうと思います。
 
見城 美枝子(けんじょう みえこ)
元TBSアナウンサーだった見城さん。現在は早稲田大学理工学部大学院博士課程に在籍し、日本建築の研究を進める一方、青森大学社会学部教授として講義を行っている。またエッセイストとしても活躍、最新刊は『リフォーム奮闘記』(税込定価1500円・ニューハウス)。バリアフリーとリフォームなど高齢社会における住まいづくりヒント等も盛り込まれ好評発売中。
 
多様な機会を提供することで特性を伸ばす
堀田 さて、こうした交流体験はいいことと理解されつつも、一方では、ゆとり教育は学力低下をもたらさないか、ということがいわれて、文部科学省も揺らいでいます。
北城 平均点へのこだわりを捨てるべきです。基礎的な最低限のことができれば、あとは好きなこと得意なことを伸ばして子どもの特性を生かすようにした方がいい。ゆとり教育という言葉が適当かどうかわかりませんが、もし、それが個性を伸ばせる教育であれば、本来素晴らしいことであるはずです。
見城 文部科学省には、これで行こう、と方向を打ち出したからには、揺るがず方針を変えないで、とお願いしたい。親は目の前の子どもの将来を考えるわけですから。豊かな世の中に育ってきてハングリー精神のない子どもたちだからこそ、興味を持てることを探す場があれば、力を発揮していける、それがゆとりにつながるんですね。
堀田 それが本当のゆとり教育です
北城 ですから最低限とはどのくらいか、ということは決めておかなければなりません。好き勝手では困ります。善悪の判断ができず倫理観もなしに、技術だけ身に付けてもだめですから。
堀田 私はゆとり教育を打ち出した教育審議会に入っていたものですから、いろいろな批判に心が痛むのですが、人間教育が大事、それにはゆとりがなければできない、ゆとりを持って、まず人間教育を、と確信しています。知識教育も最低限必要、そしてしたいことを存分にやらせる環境、仕組みを作らなくては。ゆとり教育が学力低下を招くというのは逆で、自分で考えて行動できる力を身に付けさせるために、無駄なことはさせない、ということなのです。得意なことを伸ばせる子どもは幸せです。子どもの幸せにつながるのが教育だろうと思うんです。
学校を地域のボランティア活動の核に
堀田 昔は地域共同体がしっかりしていて子どもたちの奉仕活動は当たり前だったけれど、これをこれからどうしますか、という質問が会場から来ています。
北城 私はやはり学校が地域共同体の核になっていくのが良いと思っています。妻の交友範囲を見ていますと、子どもの学校友だちの親御さんとの付き合いがそのまま地域での交流に広がっているんですね。学校行事への参加が地域につながるのですから、ボランティア体験学習などは地域の共同体づくりに役立つと思います。
見城 ボランティアというと少し堅苦しいですが、何か地域でも楽しいことをしよう、で集まるので構わないのではないでしょうか。
北城 私どもの会社でも、休暇をとってボランティア活動に参加する人はいますし、会社も制度を整えて支援しています。企業としても活性化しますし、結局はいい仕事につながるんですね。
堀田 こんな質問もあります。「もし中学生か高校生だったら、総合学習の時間に何をしたいですか?」
北城 コンピュータを触っていたいです。推理小説の謎解きをするみたいに、ソフトウェアの欠陥に挑みます。私の中高生時代にはまだコンピユータがここまで普及していませんでしたから、家ではできませんでした。もっと早くからソフトを作っていたかったなあ、と思います。
見城 私は赤ちゃんを預かってお世話したい。働く母親として苦労したものですから。やっぱり赤ちゃんが好きなんですね。
堀田 仲間を集めて地域出身の議員が汚職をしていないか監視をしたい、と思います(笑)。ということは、ここにいる3人は、やっぱり好きなことをボランティア活動で体験し、現在に至るということでしょうか。今日は、遠いところから先生方にお集まりいただきました。皆さんの後ろには多くの子どもたちが学ぶクラスがある、という思いでお話しさせていただきました。子どもたちが楽しく幸せに暮らせる社会をつくるのは私たち大人の責任です。力を合わせて息長くやっていきましょう。(会場拍手)
 
(本稿は、2002年8月22日に行われたシンポジウム「第8回スクールボランティアサミット」の内容を編集したものです)







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