日本財団 図書館


喜・涙・笑 ふれあい活動奮戦記
活動は淡々と、想いは熱く。
自然に恵まれたこの街を、心の温もりにもあふれたユートピアにしたい
NPO法人ウィラブ北茨城(茨城県)
NPO法人ウィラブ北茨城
 「ここ北茨城は、海に恵まれ山の幸に恵まれ、川では夏になると鮎が躍り、秋には鮭が遡上産卵する、実に自然環境に恵まれた街なんです。でも、唯一ないのは福祉であり、互いに助け合って生きていこうという互助の精神。私は、人類がその発生以来、生きていく術として身に付けたものは相互協力と教育だと思うんです。ところが近年は、誤った個人主義や金銭、物欲に狂奔する中で、その尊さが忘れ去られている。荒廃する教育現場や信頼を失いつつある親子関係、少子化に伴う過保護や道徳教育の欠如による自由のはき違えなど、倫理観や価値観の変移もその悪影響といえるのではないでしょうか。そんな今だからこそ、社会奉仕や相互扶助を通して、人々の心に欠けてしまったものを取り戻したい。それがこの会の理念であり、究極の目標でもあるんです」
 
 活動に対する熱い想いをこう吐露するのは、「ウィラブ北茨城」の代表を務める高松志津夫さん。同会の名称は、故郷をこよなく愛する彼の「アイ ラブ 北茨城」に由来するものだという。
 
緑豊かな北茨城市の浄蓮寺渓谷
ミイラ取りがミイラに!?
 高松さんは現役のサラリーマンから、NPO団体の代表に転身した異色の経歴の持ち主である。そこでまずは、福祉の世界に飛び込んだ経緯からうかがった。
 「4年ほど前の1998年当時、ご多分にもれず、勤務先の会社でもリストラの噂が飛び交っていました。労働組合と社員互助会の委員をやっていた私は、経営者から人員整理案を切り出されたとき、雇用確保の面から、これからの社会のニーズとして介護保険事業に進出してはどうかと提案したんです。この話に興味を持った経営者から“ならば、まずはお前が勉強してこい”との下命があり、福祉関連の事業所に研修視察に行くとともに市内のヘルパー講座にも通い始めた。それが最初でした」
 この時点では、あくまでも会社の仲間達の救済という視点でしか福祉事業を捉えてはいなかった。だが講座を受講し、公共の福祉サービスの著しい不足を目の当たりにする中で、「人間が人間らしく生きていくには、住民同士が互いに支え合う社会の実現が不可欠」であることを痛感。その結果2000年3月、「この街に足りないものをつくろう」と、受講生仲間12名で任意団体「ウィラブ北茨城」を旗揚げし、介護保険制度では補い切れないサービスの提供を開始したという。
 「誰かがこうした活動を始めないと、この街で安心して年を取ることもできない。ならばあれこれ文句を言う前に、自分で動こうと。まあ、ミイラ取りがミイラになったようなものです(笑)」
 言葉にしてしまえば簡単なことだが、一家を支える働き盛りのサラリーマンが、会社を退職してボランティア団体の代表になるなどは、並大抵の決意ではできまい。
 「確かに定年退職まであと10年。サラリーマン生活を全うしてから、第二の人生でボランティア活動に励む、という生き方もあるでしょう。でも、そんな悠長なことを言ってはいられない状況でしたし、体力も気力もある今だからこそ新たな道にも挑戦できる。そして何よりも、こうした活動を生業にしても食っていける。NPO団体をそういう魅力あるポストとして育てていかなければ、後の世代に引き継いでいくこともできないし、真に成熟した社会も創り出せない。そうした想いが勝りました」
 
2001年度総会風景
 
総会にて。社協、保健センター、市高齢福祉課の皆さんも参加して討論会







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION