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きっかけは「人にやさしい町づくり」
 仙台ながまちモビリティのそもそもの始まりは、その2年前に完成した長町地区のバリアフリー化工事。仙台の副都心としてバリアフリーの集合住宅、ショップモビリティ付きの大型商業施設などが続々と建設されていく中で人の流れは変化し、旧来の地元商店街は活気をなくし、同時に長町に昔から住んでいるお年寄りも姿を見せなくなった。
 「何とかしなくては、と思案していたときに、ふと目にしたのが98年度の『建設白書』に載っていたタウンモビリティの記事。これだ、と思いましたね。こうしたサービスがあれば、家に閉じこもりがちな人にも気軽に町に出て来てもらえる。郊外に立派な大型店ができても、高齢者は自分でそこまでは行けないんですから」ときっかけを話すのは、長町1丁目商店街振興組合理事長の日下均さんだ。CILたすけっとの杉山さんとともに仙台にタウンモビリティを導入した立役者である。
 
用事を済ませた大平さんをスタッフが家まで送る(長町)
 
 2000年4月にはタウンモビリティを考えるシンポジウム「みんなにやさしい街づくり」を開催、先進事例を同じ東北の青森市新町商店街に学びながら本格導入の準備を進めてきた。
 タウンモビリティの導入に先立って時間をかけて準備してきた点では、広島のらくらくえんオフィスは他のどこよりも勝っている。「サービス開始までに2年半かかりました。でも、この準備期間があったから、地域の理解も地元住民主導の運営も得ることができた。貸しボート屋ではないんだから、ポリシーをもって取り組むことが大事だと思います」と、らくらくえんオフィス協議会の熊谷さんは言う。らくらくえんオフィスのポリシーは「人にやさしい町づくり」。ひろでんストアの増床計画とともにショッピングセンター内外のバリアフリー化を、そしてタウンモビリティオフィスの設置をと活動してきた過程で、熊谷さんら住民は「人にやさしい町づくり」をテーマに講演会やヒヤリマップの作成、電動スクーターによる町点検などのワークショップを行ってきた。「まず電動スクーターが地域で市民権を得ることがポイント」(熊谷さん)と、電動スクーターによるデモンストレーションも実施した。
 タウンモビリティに期待される効果の一つに、町のバリアフリー化を促進するということがある。電動スクーターや車イスで町を移動するためには、道路の段差を解消する、歩道を平らにする、歩道に自転車を放置しないなどの対策が不可欠であり、また商店街が利用者を顧客として獲得しようとするならば、広い間口や低い目線でのレイアウトなども必要になってくるだろう。
 奇しくも「人にやさしい町づくり」を目指して始まった広島市佐伯区楽々園と仙台市長町の2地域の取り組みは、タウンモビリティの開始と日々の実践を通して地域のバリアフリー化に貢献し、いっそう人にやさしい町に近づいているように見える。全国40か所余りで実践、あるいは実験が行われているタウンモビリティの現状については、白石さんが電子メールで「タウンモビリティ通信」を発信しているので関心のある方は連絡してみるとよいだろう。(ishi-jpn@tka.att.ne.jp)







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