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広島市 らくらくえんオフィス
 らくらくえんオフィスがある佐伯区楽々園は広島市西郊の住宅地。広島電鉄の楽々園駅から歩いて2分、ひろでんショッピングセンターの正面入り口に「らくらくえんオフィス」はあった。一見するとショッピングセンターの総合案内所のようなたたずまいだ。
 建坪10坪の事務所の中は、半分がオフィスで、もう半分がガレージになっている。オフィス中央の事務机で、ここを運営するらくらくえんオフィス協議会・会長の熊谷憲二さんは、「この事務所も机もひろでんストアさんの無償提供なんです。週4日、スタッフが交代で出て、利用の受け付けや貸し出しをしています」とにこやかに話し始めた。
 
ショッピングセンターの入り口にあるオフィス。ここで受け付け、貸し出しを行っている
 
 電動スクーターが5台、他に手押し車イスが2台。オフィスを開くのは月曜、水曜、木曜、金曜の午前10時から午後2時、貸し出し時間は原則として2時間。熊谷さんをはじめスタッフは地元に住むシニア世代で、1日当たり平均7人が午前と午後で交代しながら事務所に詰めている。みんな徒歩圏に住んでいるので、交通費ゼロのボランティアだ。
 
代表の熊谷憲二さん。利用者には「心付け」を募金してもらう
 
 「ぼくたちは使命感でやっているわけではなくて、将来の自分たちのために活動しているんです。年をとって足が弱くなっても、ここに来れば昔と同じように買い物ができる、少し足を延ばして花見にも行ける、仲間にも会える、そういう場にしておきたいんです。みんなこの町で年老いて死ぬわけだから、ここに住んどってよかったと思えるようにね」と熊谷さん。
 
週1回定期的に利用している田中成子さん
 
 99年10月のオフィス開設から現在まで、400日を超えるサービスを提供してきた。1日当たりの利用回数は平均4・6回、30分以上利用した人は460人余りにのぼる。利用者にはあらかじめ会員登録をしてもらうが、現在の会員は51歳から92歳までの28人。65歳以上が80%を占める。
 
サービスを開始するにあたって対象地区のヒヤリマップを作成
 
 らくらくえんオフィスのタウンモビリティは周辺住民利用型といわれる。楽々園とその両隣の町に住む住民が対象で、スタッフが徒歩でドアツードアの送迎サービスもする。利用先で一番多いのは町の散策、2番目が買い物、3番目が公共施設。近くのデイサービスのお年寄りたちも定期的に利用して、ショッピングセンターの散歩を楽しんでいる。
 
オフィス内の車庫にスクーター5台、車いす2台を収納
 
 「ぼくたちが目指しているのは単なる貸し出しサービスではないんです。ここで町のお年寄りが誰かとしゃべり楽しんでいく。そんなサロンにしたいんですわ」。熊谷さんのその思いはスタッフ共通のものだ。オフィスの一角にはソファを置き、いつでもお茶とお菓子を用意して、利用者が訪れるのを待っている。







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