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情報誌「さぁ、言おう」 2002年7月号

 事業名 高齢者のためのボランティア普及啓発活動
 団体名 さわやか福祉財団 注目度注目度5


ありがとうを循環する地域通貨 16
どんな人にも役割があり、居場所がある
ゴジカラ村の時間銀行
(取材・文/猪瀬 泰志)
 
 愛知県長久手町の住宅街から少し離れた雑木林に時間がゆっくり流れる村かある。「愛知たいようの杜」。ここは特別養護老人ホムやケアハウス、幼稚園などを併設した総合施設で、通祢を「ゴジカラ村」(五じから村)という。ここでは子どもからお年寄りまでさまざまな人が「時間券」という時間通貨を利用している。「もりのようちえん」に勤務する濱田美亜さんに話をうかがった。
いつでも5時からの世界「ゴジカラ村」
 「ゴジカラ村」という名前の由来は、「5時になると仕事ができる人もできない人も平等になれる。5時以降はどんな人でも楽しむ時間である」というもの。そんな想いを託して、「愛知たいようの杜」施設長の吉田一平さんが付けたという。実際にどの施設でもみんな楽しそうに活動している。特に「もりのようちえん」では園舎はログハウス、庭には池、山の中には秘密基地まであって、見ている私までワクワクする。小学校になったら嫌でも教室にいなくてはならないのだから、幼稚園での3年間ぐらいは太陽の下で自由に遊ばせたいという思いがあり、晴れた日には一日中外で自由に遊んでいるという。
 「小学校の訓練のために幼稚園があるわけではない。今の時間を楽しんでもらいたいから」と濱田さんはいう。
 
「これがボクらの時間券・・・」
 
濱田さん著のかわいらしい絵本
介護保険のスキマを埋めたい
 たいようの社施設長の吉田さんは介護保険の隙間を埋めるシステムづくりが必要と考え、住民の手でまちづくりをしようと日本生命財団の助成を受けて、誰もが「やぁ、おはよう」と言えるまちづくりを企画した。みんながのんびりできて、ゆっくりしかできない人が認められるような方法を皆で考えたところ、「時間というのは全てにおいて平等なんだ」と気づき、地域通貨の「時間券」を思いついたという。まさに、時間通貨そのものだ。
 してあげられる人がしてほしい人に、早くできる人は早く、ゆっくりやる人はゆっくりと、どんな人にも役割があり、居場所がある。そして、地域や隣人のことを考えるゆとりが生まれた時、介護保険の隙間も埋まっていくと考えた。
 楽しく遊び感覚でやりたいため、最初は「もりのようちえん」で2000年11月に時間銀行をスタートさせた。濱田さんが「時間銀行」の事務局を担っている。入会は登録カードに「してもらいたいこと」「してあげること」を記入し、提出すると「時間券」10枚、記録帳、登録リストがもらえる。登録リストにはその人の人柄がわかるように、その人が書いたままの表現で掲載される。交渉は登録リストを見ながら直接行うことが基本だが、顔がわからないこともあるため濱田さんがコーディネートすることもあるという。「時間券」はあくまでも1時間で1枚の目安だが、15分で終わっても半日で終わってもお互いがよければ1枚でいいし、複数の人数に頼むときも1枚でいい。1枚はそのうちの一人に渡し、その他の人たちは時間銀行から1枚もらえるシステムだ。記録帳は利用するたびに記入しておいて定期的に事務局に持っていく。
 依頼を受けたときに用事があったり気分がのらないときには、断る合言葉も決まっている点が面白い。そんなときは「ゴジカラ村に行くのでごめんなさい」と言えばいいのである。気を使わないで気楽に使える工夫がユニークだ。また「時間銀行」は基本的なルールしか決められていない。最初から問題を考えて対応しておいてもいいが、問題になることを怖がっていない。その時点で立ち止まってのんびり考えていくようにしている。登録リストには、「面白い顔して笑わせてあげる」「虫を捕まえてあげる」「頭をなでてあげる」など、ほのぼのとしたメニューが登録されている。
 幼稚園からスタートした時間銀行だが、2001年11月からはゴジカラ村全体で始め、82歳のおばあさんが折り紙を教えたり、75歳のおじいさんが麻雀の相手をしたりとサービスのバリエーションも広がった。登録人数は現在350名ほど。
 濱田さんが「時間券」を広めていく上で注意した点は、このシステムが皆に難しいことではなく、気楽にできるということをわかってもらうために時間をかけて丁寧に説明会を開催したことである。また「時間券」を皆さんに広めようと絵本も出版した。濱田さんの子どもの頃のエピソードや時間銀行の趣旨・想いをわかりやすく説いている。登録人数が増えたのもこの絵本の影響が大きい。
 
「面白い顔して笑わせてあげるヨ!」
「時間券」よりも「考え方」が大切
 「時間券の利用者が増えるよりも、どんな人でも役割があり、居場所があるという考え方が広まって当たり前になったらいい。子どもたちが成長し、そして50年後、100年後に寝たきりの人が“ありがとう”と言われるような雰囲気ができたら時間券が成功なのかなと思う」と濱田さんは語る。
 絵本の中にはこんなことも書かれている。
 「時間銀行はね みんなにやさしいんだ みんなに同じなんだ すごいよね とてもとってもすごいよね お金とかちからとか勉強とか みんなちがうでしょう みんなが一緒ってことはないんだよね でもね時間はみんなして同じなんだ」
 
事前調査によって課題を探る
 地域での課題を探るための、また協力者を探すための有効な方法の一つがアンケート調査だ。アンケート調査は質問を記入した書面を送るだけの場合もあり、面接による聞き取り、あるいは電話によるヒ アリング、またこれらの手法を併用する場合もある。工夫すればインターネットによる調査も可能である。
 この調査に先立って重要なことは、どのような理由で、どんな項目を、どの範囲の人々に聞くかというアンケート内容についてよく検討しておくことだ。調査する対象が偏っていると、導き出される結果が地域の実態を反映しない。また調査する相手が多過ぎると、コストもかかるし、整理に時間と労力もかかることになる。またこうしたアンケート調査は事実上やり直しもできない。
 たとえば神戸市鴨子ヶ原地区で始まった地域通貨「かもん」の場合は、地域通貨を始める以前に、自治会長、民生委員、友愛訪問を行っているボランティアの人々の協力を得ながら、聞き取り調査をNPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸の支援を得て行った。アンケートをした項目としては、(1)健康状況(2)外出の状況(3)生活の状況(4)サービスの要望など。
 なおその際、アンケート項目には、してほしいことを聞くと同時に、「今度は立場を代えてあなたにできることをお尋ねします」という項目を設けていた。
 とかく、ニーズ調査の場合は、当事者ニーズを聞くことに終始しがちだが、地域で互いに支え合う仕組みをつくるためには、サービスを受ける人であっても協力する側に回れるという視点は重要だろう。事前の調査はアンケートだけに限らない。また地元の町内会や自治会などの会合に出席することにより、地域のニーズや地域通貨による新しいグループづくりを模索する方法も考えられる。そのためには、やはり普段からの地域との親しい付き合いが前提となるであろう。
 また、地域通貨、時間通貨を運営している先輩の団体を訪問し、説明を聞くことも良い刺激になる。そうした情報は、さわやか福祉財団の組織づくり支援グループに聞いていただいても紹介できるし、インターネット上のホームページからの検索も可能だ。







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