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グループホームの窓辺で
献立も当番も話し合い
グループホームの暮らしってどんなもの?
 
献立はみんなが食べたいものを
 ふれあい型グループホームの生活空間は、入居者のプライベートな個室と食堂、リビング、浴室などの共用部分に分かれている。ひとつ屋根の下で、それぞれが自室で過ごす時間と、みんなが三々五々集まって一緒に過ごす時間がうまく溶け合って、入居者は孤独や不安を感じることなく、一方で自分のぺースも守りながら生活することができる。高齢者が仲間と共に暮らすふれあい型グループホームのメリットはこの点にある。
 南関東の新興住宅地に建つふれあい型グループホームの食堂。大きなガラス窓から新緑の光が差し込むこの場所は、入居者全員が日に2度は顔を揃えるふれあいの場だ。テーブルの上には今月の昼食と夕食のメニュー表。お邪魔した日の夕食はサバの味噌煮とマカロニサラダ、青菜のお浸しだった。
 ご飯と味噌汁は元気な入居者が用意し、主菜、副菜は外部の配食サービス事業者から取り寄せているという。一口にふれあい型グループホームといっても運営方法はさまざまで、食事を3度3度調理しているところもあれば、ここのように配食サービスを利用しているところもある。
 「でも、メニューは業者のお仕着せではないんですよ。たくさんのメニューの中から、これは何回も食べているからしばらくいいね、とか、季節の材料を使った料理が食べたいね、とかみんなで話し合って決めるんです。とにかく食事が楽しみだからね」と男性入居者。食事がおいしいと話も弾むそうだ。
 残った惣菜やご飯はラップで包んで冷蔵庫へ。朝食は各人まちまち。冷蔵庫の残りものをレンジで温め直して食べる人もいれば、自室でインスタントコーヒーとパンで済ませる人もいる。寝坊して朝食は抜きという人もいる。そんな自由さもうれしい。
風呂掃除とゴミ出しは当番制
 食事と並んで楽しみなのがお風呂の時間。浴室は2〜3人なら一緒に入れる広さだが、入浴の時間も各人まちまちだ。
 「ほら、一番風呂が好きな人もいれば、寝る前に入るのが好きという人もいるでしょ。だから、入る順番なんか決めなくても自然と決まってきちゃうのよ」と女性入居者。なるほど、普通の家庭だって入浴の順番を決めてはいないだろう。ここは入居者にとっては家庭そのものなのだ。
 「ただしね、お風呂掃除の当番は決めてるの。掃除といっても、しまい湯に入ってザッと後始末する程度。きちんとした掃除は家事サービスの人がやってくれますからね」。このホームでは浴室に限らず共用部分の掃除は外部の家事サービスを利用しており、頼めば自室の掃除もしてくれるという。
 「そうそう、ゴミ出しも当番を決めてるの。だから、当番の日は朝寝坊できないんです」
 こうした順番を決めるのは、全て話し合いだという。決め事はみんなで話し合って合意のうえで、が鉄則だ。
 「ミーティングの場で、何でも言い合おうというのがウチのモットー。みんな対等、みんな平等というグループホームの理念を実現する基本は全員による話し合いだと思います」と、ここを運営する事業体のIさんは話してくれた。
 個々の意思を尊重しながら共生するふれあい型のグループホーム。逆に言えば、自分の意思をしっかりと伝えられる、あるいは自分と違う人の意見も受け容れられる度量が、やはり必要ということだろう。
 
英国の高齢者小規模グループハウス
「アビィフィールドハウス」の実践から
 さわやか福祉財団が提唱するふれあい型グループホームは、一人暮らしの高齢者が家庭的な雰囲気の中で生活支援を得ながら仲間と暮らす共生型住まい。これと共通する理念を持つものに英国のアビィフィールドハウスがある。先ごろ、アビィフィールド・インターナショナル事務局長のピーター・ニューベリー氏を招いての講演会が、NPOアビィフィールド日本協会の主催、さわやか福祉財団、英国協会などの後援で開かれた(下写真)。以下に、講演とニューベリー氏へのインタビューからハイライトをお伝えしよう。
 
 アビィフィールドハウスは今から45年前にロンドンのアビィフィールド通りに誕生した高齢者のための小規模グループハウス。英国は日本に先行する高齢社会で、半世紀にわたって孤独な高齢者の暮らしを支え安心な住環境を提供する活動をNPO組織が中心になって行っている。アビィフィールド協会はそのひとつで、現在は英国を中核にオーストラリア、カナダ、ニュージーランドなど13か国が加盟、我が国でもNPOアビィフィールド日本協会が活動を推進している。
 
地域社会にあるハウス
 早くからこの分野で実績を積み重ねてこられた「アビィフィールド方式」の特徴はどのようなものでしょうか。
 高齢者が孤独と不安にさいなまれることのないように仲間と一緒に暮らす「普通の家」がアビィフィールドハウスです。建設に先立って、まず地域にアビィフィールド地域協会を設立し、協会のメンバーとハウスの運営を支援してくれるボランティアを募ります。基本理念は居住者を個人として尊重すること。そのためにもできるだけ小さい規模にして、住み込みのハウスマザーが家事全般に目を配り援助します。ハウスが地域社会の一部として形づくられている点が大きな特徴で、現在、加盟13か国の中に650の地域協会、950のハウスがあります。そして、この運営をサポートするボランティアは1万2500人に上ります。
入居を決めるのは本人自身
 日本ではこれまで伝統的に家族が老親をケアしてきましたが、高齢化の急速な進展と子ども世帯との同居率の低下によって単身高齢者世帯が増え、介護の社会化が進んでいます。こうした現状にアビィフィールド方式はどのような点で有効ですか。
 親世代の多くは年老いたら子どもと一緒に暮らしたいと思っているかもしれません。しかし、それが叶わなくても、住み慣れた地域のハウスで仲間と共に暮らすことができれば子どもへの期待や関心は確実に薄れます。
 また、子どものほうも、親が適切な援助を受けながら仲間といることで、自分が面倒をみないという後ろめたさを感じなくて済みます。だからと言って、家族が入居を強要するのはいけません。入居を決めるのはあくまで親自身の意思であって、子どもに強要されて入居する人は一番不幸です。
痴呆症は介護型ハウスで対応
 年を重ねてやがて介護を必要とする状態になった場合は、どのように対応しますか。
 アビィフィールドハウスは「一生お世話します」とは言いません。ハウスには支援型と介護型の2通りがありますが、数の上では居住者の社会生活上の援助を行う支援型が圧倒的多数を占めています。支援型に入居していて自分の身の回りのことができなくなった場合は、外から入浴介助や食事介助などを行うヘルパーに来てもらい、プロの介護を受けながら居住者の約9割がここで生涯を終えます。
 一方の介護型は24時間体制でスタッフがケアを行うものですが、アビィフィールドは病院とは提携していないため医療的ケアは行いません。介護型に入居する人の多くは痴呆症で、支援型の居住者が痴呆症になった場合は介護型へ移動することもありますが、移動の適否は地域協会で組織する委員会が決めます。
 
information
さわやか福祉財団
年度スケジュールのご紹介
研修会・イベント等のお知らせ
 
 さわやか福祉財団では、新しいふれあい社会づくりを目指して、多方面から様々な事業を行っています。年度中に行う研修会・諸イベント等をご紹介します。詳細が未定のものは、決定次第順次ご紹介していきます。多くの皆様のご参加をお待ちしています!
 
組織づくり支援グループ
地域たすけあい研修会(リーダー研修会)
7月18日(木) 千葉県鴨川市
 上記を皮切りに、全国8ブロック(北海道、東北、関東甲信越、東海、北陸、近畿・中国、四国、九州・沖縄)の23か所で開催予定。
「ふれあい活動実践研修会」(団体設立に向けた研修会)
 全国で50回の開催予定。
「インストラクター養成研修会」
 全国200名の配置を目指し、在宅福祉サービス団体の設立・運営についてのインストラクター養成に向けた研修を行っています。(参加要件あり)
 
地域協同推進プロジェクト
「地域協同推進シンポジウム」
7月11日(木) 島根県松江市
9月26日(木) 静岡県静岡市
 
社会参加システム推進グループ
「スクールボランティア・サミット」
8月22日(木) 東京都港区
「サッカーさわやか広場」
6月29日(土) 大阪府茨木市
7月28日(日) 茨城県潮来市
9月〜10月 福井県福井市
「ワークショップ」(勤労者マルチライフ支援事業)
 東京都、愛知県、兵庫県で中高年勤労者(退職者を含む)を対象にワークショップを開催。(各場所20名予定。日時等は未定)
 
ふれあい社会づくりグループ
「介護相談員養成研修会」
 全国3か所で6回予定。利用者の立場に立って、問題発見・提案解決するボランティア介護相談員の研修。(参加要件あり)
 
グループホーム推進グループ
「映画とフォーラムから考える! 自立と共生の新しい『すまい方』」
6月20日(木) 兵庫県神戸市 神戸朝日ホール
9月11日(水) 埼玉県 川越市民ホール
 
広報・企画グループ
「さわやか福祉財団交流総会」
2003年2月
 
*なお、内容は変更となる場合があります。具体的お問い合わせは各見出しのグループ・プロジェクト担当までお願いします。→TEL:03(5470)7751







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