日本財団 図書館


地域の人たちがふれあえる場づくりが目標
 そして気がつけば早4年。行きがかり上、引き受けたとはいえ、この間三科さんは代表として、事業計画の策定に、行政とのパイプづくりに、そして運営資金の捻出にと、八面六臂の活躍を見せた。
 「組織を運営することが、こんなに大変だとは知らなかった。特に金銭面のやりくりには頭を痛めましたね。事務局の運営体制を見直したり、介護保険収入が入るようになったことで、今ではようやく給料をもらえる身分になりましたが、当初の2年間はヘルパーさんに謝礼を差し上げ、事務所経費を支払ったら、手元には一銭も残りませんでした」
 資金づくりのために行政などから受託したホームヘルパー養成研修では、マイカーで片道100キロも離れた町まで出かけたりもしたが、そのガソリン代すら持ち出し。4年間で10万キロ以上走ったマイカーはボロボロになった。
 
事務所で月1回行うヘルパー会議
 
 「それでもさしたる使命感もなくNPO活動に飛び込んだ私がここまでやってこられたのは、いい仲間と出会いがあり、みんなで力を合わせて苦労を乗り越えて、新たな事に挑戦する楽しさを知ったおかげ。そして組織運営に行き詰まったときには、全国にいる先輩NPO団体の方々が、ソフト面からもハード面からも支えてくれた。これらは決してお金には代えられない心の財産ですね」
 同会のモットーは「学ぶ輪」「働く輪」「楽しむ輪」の3つの輪を通して、地域に根ざした活動を行っていくことだというが、ようやくここに来て、それが現実のものにもなりつつある。とはいえ、まだまだ課題も尽きない。
 
 「組織づくりに主眼を置いてきたこれまでが活動の第1段階だとしたら、これからは第2段階としてサービスそのものの中身の充実に励む時期だと考えています。そのためにもまずは活動の拠点となる事務所を、今のへんぴな場所から、賑やかな町の中心部に移したい。そうすれば人の出入りも活発になって、いろんな仕掛けができると思いますからね」
 たとえば生きがいづくりのために、お年寄りが学んだり、クラブ活動を楽しむ老人大学をつくりたいというのも目標のひとつ。また現在は訪問介護のみ行っている介護保険事業も、ケアマネジャーを擁してケアプランの計画策定の段階からフォローできるようになりたいとも。これまでに培ってきた福祉ネットワークを生かせば、利用者本人の希望を取り入れながら、人間的な生活ができるようなケアプランを提案できると考えるからだ。
 「そして最終的には、子どもや学生、定年退職者なども巻き込んで、地域の人たちがさまざまな形でふれあえるような場づくりをしたい。そうすれば助けたり、助けられたりすることも自然な形でできるようになるのではないでしょうか」
 得手とする福祉の面からまちづくりにも取り組み、活動の幅を広げていこうとする「クローバー・サービス」。今後も果敢に挑戦を続け、そして明るく、楽しいふれあいのコミュニティーづくりに寄与していってほしい。
 
1998年2月
「WACクローバー・サービス」設立
 
ホームヘルパー養成研修を実施。以降、毎年開催
1999年12月
NPO法人格を取得
2000年1月
NPO法人クローバー・サービスとなる
4月
新事務所の移転に伴い、ミニ・デイサービスを開始
7月
介護保険「訪問介護」京都府指定事務所となる
 
料理講習会。“地元の漁師さんから魚のさばき方を習いました”
 
ヘルパー内部研修「介護」編
 
2001年12月に行ったクローバー・マーケットの様子
 
 京都府船井郡丹波町に本拠地を置く「クローバー・サービス」は、在宅で援助が必要な高齢者やその家族、その他手助けを必要とする人々に対して、住民参加と助け合い精神のもとに、地域に根ざした介護サービスを提供。すべての人々が健やかに暮らせる地域社会をつくり、社会全体の福祉を増進することを目的として設立されたNPO法人。主な事業内容は(1)ホームヘルパー派遣、(2)ミニ・デイサービス、(3)ホームヘルパー養成研修、(4)送迎サービスなど。会員になるには年会費5000円が必要。ヘルパー派遣のサービス利用料は1時間1300円(日曜・祝日と時間外は同1560円・交通費別途)。サービスを提供した会員は1時間850円〜900円を謝礼金として受け取ることができる。介護保険の「訪問介護」にも対応している(→連絡先は最終頁)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION