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喜・涙・笑 ふれあい活動奮戦記
会の活動は「老いを学び、育てる」生涯学習の場。
福祉から切り込む地域づくりに貢献したい
NPO法人ふれあい天童(山形県)
 
NPO法人 ふれあい天童
 「私どもの会では奉仕した時間の一部を積み立て、いざというときにはサービスとして引き出せる時間預託制を取り入れていますが、会員の中には単に自分や家族のために使用するだけでなく、貯めた時間を社会的な活動に提供したいと申し出てくださる方も少なくない。実際、三宅島噴火の際には貯めた時間を現金化して災害義援金を送付したり、またアフリカ・東南アジアの学校建設へ援助金の送付もしました。あるいは事務所経費や設備にと会への寄付をしてくださる方もいる。これは活動を通して、互いに助け・助けられる“お互いさま”の気持ちが育まれ、“自分のできることをできる範囲でしよう”という意識の表れ。この思いを生かすためにも、今後は環境団体など、市内の異分野のNPO団体とも連携しながら、地域通貨へと進展させていく試みも模索してみたいと考えています」
 
 こう語るのは、山形県天童市内で在宅福祉サービス活動を展開している「ふれあい天童」の代表を務める加藤由紀子さん。さわやか福祉財団の委嘱を受けたインストラクターとして、県内外での新しい組織作りの支援にも飛び回るなど、精力的な活動とは裏腹に、ご本人は至って謙虚で、周りの人を自然に包み込むような温かなお人柄である。
 
ベッドから車イスで通院診療の送り迎えまで、生活全般をサポート
個人の課題は社会の課題
 「困ったときに気兼ねなく、買い物や留守番などを頼める人がいたらどんなに助かることだろう・・・」加藤さんが「ふれあい天童」設立したのは、12年間にわたり、夫の両親ら同居4人を介護したその経験が原点にある。
 「3人目の子を妊娠中の1980年の暮れ、舅が心筋梗塞で倒れたのを機に、残る3人も次々と病気やケガに見舞われ、私の生活は天と地ほども変わりました」
 在宅で看たいと、15年間勤めた中学校の体育教師も辞して介護に専念。だが1人での複数介護は想像を絶する大変さだった。一日中気の休まる時間などない。いつまで続くのかもわからない。しかも寝ずに介護をしても、誰かが評価してくれることもない。蓄積する疲労と孤独感・・・。自分の価値がないような気がして、ストレスから食事がのどを通らなくなった時期もあったという。「そんな日々の中で、仕事をしながら家族介護に苦労している人がたくさんいることも知りました。私自身の介護の課題とも重なり、この経験を生かして、何とか在宅介護を応援する市民互助型の助け合いの組織をつくれないものか。いつしか、そう考えるようになったんです」
 82年、85年と2人を看取っても介護は休みなく続いたが、助け合いの組織づくりの土台、参考になるようにと介護を学習の場と捉えた。自宅を改修して介護室をつくり、トイレや風呂なども「当時は建築家ですらその言葉すら知らなかった」というバリアフリー仕様に。残された能力を保持し、自立を支援するための介護を試みた。そして残る2人を見送ったのち、地元の社会福祉協議会のボランティア講座に入り、心の中でずっと温めてきた会の構想を説明。仲間を募って93年6月、活動を開始したのである。







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