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介護保険事業にはネットワークを組んで対応
 こうした取り組みからも見てとれるように、同会の活動姿勢はあくまでも地域に根ざした助け合いを通しての、暮らしやすい町づくり。だから活動範囲も町内に限定し、「それ以上手を広げるつもりはない」と福沢さんはきっぱりと言う。現在は利用会員68名、活動会員28名という規模である。
 「活動範囲を広げて会の規模を大きくしたり、NPO法人化すると、いや応なしにそれなりの体制を整え、事業化せざるを得なくなる。でも私たちがやりたいのは、もっと身近な顔の見える助け合い。たとえば、生活面でのゴミ出しや買い物などのちょっとした用足し、雪かきや草むしり。そして入院中のペットの散歩やエサやり等々。昔だったらご近所の人にお願いしたようなことも、人間関係が希薄な今日では、なかなか気兼ねがあって頼めない。そこをフォローする存在が必要だと思うのです」
 とはいえ、会員の中には要介護認定者が少なからずいるので、そうした人たちのニーズにも応えてあげたいのが心情だ。そのため同会では助け合いサービスとしてのび・すけっとの他に、介護保険サービスを提供するNPO法人ポケット北部支部という顔も併せ持っている。この“ポケット”は飯田市に本部を置く団体で、そもそもは情報交換を目的に飯田・伊那地区で福祉に関わる団体や地元企業でネットワークされた組織。同会もその一員として立ち上げにかかわり、参画したが、ここがNPO法人格を取得して介護保険事業に参入したのを機に、北部支部となり、高森町内での介護保険サービス事業に対応しているのだという。
 「ネットワークを組んだことで、煩雑な事務作業は本部に任せて介護保険事業が行えるのがありがたい。私たちのような小さな会にとっては、単独で事業に参入するよりもこういうやり方のほうがよかったと思っています。また協力会員の中には、ボランティアに重点を置いて楽しみながら活動したい人もいれば、雇用の場として介護保険サービスにかかわり、自立を果たしたい人もいる。そういう様々なスタンスに、会として応えられるのもメリットです」
 
「それでは行ってきます!」
 
中学校の総合的な学習の時間の体験学習受け入れ。
心を込めて作る生徒たち
 
 そんな同会だけに、今後も助け合い活動と介護保険事業をバランスよく行いながら、いつまでも住み慣れたところで暮らしていけるための地域づくりに励んでいたいとのこと。
 「少子化や女性の社会進出に伴って、今後はお年寄りだけでなく子育て支援にも力を入れていきたい。そのためにも、できれば宅老所と託児所をミックスしたような小規模なケア施設を開設できれば、と考えています」
 これまでも、そしてこれからも身の丈にあった、自分たちらしい活動を模索する「び・すけっと」。高森町にとってなくてはならぬ存在に育ってほしい。
 
障害者の送迎
 
拠点「かわせみの家」 建物の前には天竜川がゆったりと流れている
 
 長野県下伊那郡高森町に本拠地を置く「たかもり助け合いの会 び・すけっと」は、助け合いの精神に基づいて在宅における日常生活支援サービス活動を行い、誰もが安心して暮らしていくことのできるまちづくり、地域づくりに寄与することを目的に設立された非営利の会員制組織。主な活動内容は、(1)高齢者・障害者等の家事援助、介助、介護援助、(2)産前産後の支援、子守、(3)配食サービス、(4)介護予防を目的としたサロンの運営など。会員になるには入会金1000円、年会費2000円が必要。ホームヘルプサービスの利用料は1時間860円(日曜・祭日、時間外は1時間1100円)で、交通費は別途。サービスを提供した会員は1時間650円(210円は事務手数料)の謝礼を受け取ることができる。介護保険対応の訪問介護にも対応している。(→連絡先は最終頁)







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