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ふれあい活動奮戦記
 
人と人とのふれあいを大切にしたいから
地域に根ざした活動にこだわって
町づくりに寄与したい
たかもり助け合いの会 び♥すけっと(長野県)
 
たかもり助け合いの会 び♥すけっと
 「私が福祉の世界に足を踏み入れたのは、子育てがひと段落した40歳を過ぎてから。それまでは専業主婦でしたが、このままただ無為に老いていくのではなく、地域の中で何か自分自身が生きがいを持てるような活動がしたい。そんな思いを抱く中で、たまたま出会ったのがこの助け合い活動でした。それから10年。自分たちの会を立ち上げ、いい仲間に囲まれて、地域に根ざした活動を楽しみながら続ける中で、昨年ついに主人の扶養から外れて、税金を納める身となりました。まさに50歳にしての自立です。そういうことを鑑みると、こうした活動は単に福祉という側面だけではなく、女性の社会参画、そして自己実現にもつながるものだと感じるし、会としてもそれをバックアップしていきたい。そんなふうに考えているんですよ」
 
 明るい口調でこう語るのは、長野県下の農村地帯、人口約1万2600人という下伊那郡高森町で活動を展開している「たかもり助け合いの会 び♥すけっと」の代表を務める福沢千恵子さん。
 
みんなそろってハイ、ポーズ!
かわせみサロンの手作り運動会
大好きな自分たちの町で地域の役に立ちたい
 「び♥すけっと」は、高森町が20代〜50代までの若い世代を対象に開講した「人づくり塾」の卒業生が中心になって設立した会で、1998年7月より活動を開始。
 「人づくり塾では、高森町が大好きな人たちが集まって、自分達の町を再発見するためのさまざな講演会や研修会が催されました。そうした中で、せっかく学んだことを無駄にしたくない。自分たちでも何かできることをやろういう機運が高まりましてね。当時私が隣接する飯田市にある有償在宅福祉サービス団体の活動に多少かかわっていたことから、“高森町でも助け合い活動を始めよう”ということになったんです」
 当初は福沢さんの自宅の一部を事務所とし、専用電話1本を引いての活動だったが、翌年、同町が所有するカヌーハウス「かわせみの家」の改修工事の話を聞きつけるや否や、役所に要望を提出。
 「せっかく改修しても、管理する人がいなければ建物は傷んでしまう。私たちが管理を引き受けるから、その代わりに一部分を借り受けたい」。そう訴えたのである。
 「家事援助サービスだけでなく、町で採れる農産物を使って、ひとり暮らしのお年寄りなどに温かいお弁当を届けるサービスを提供したい。そう思っていたので、どうしても厨房のある大きな事務所に移りたかった。でも資金がないでしょ。だからこの機会を逃すものかって(笑)。何度か足を運ぶうちに、役所のほうでも私たちの思いを理解してくださり、最終的には2団体から助成金をもらい、事務所と厨房スペースを改築することができました」
 お金がなくても、知恵と熱意と行動力でカバーする。これこそ、草の根団体の真骨頂といえよう。
 「現在、配食サービスは月曜から土曜まで週6日行っていますが、この辺りは農家を営んでいる方も多いので、利用者やその家族から四季折々の農作物の“差し入れ”が届く。“たくさん採れたからよかったら使って”と。だから私たちもその好意に応えて、“これは○○さんがくれたカボチャのサラダなのよ”などと言いながらお弁当を届ける。それが利用者にとっても“人の役に立っている”という励みになるし、地域の人同士のふれあいにもつながる。単にお弁当を作って届ける以上の楽しみが、ここからは生まれているんです」
 また一昨年には空きスペースを利用して、お年寄りが自由に過ごす「かわせみサロン」も始めた。一人暮らしで家に閉じこもりがちなお年寄りに気軽に立ち寄ってもらい、要介護状態の予防につなげようとの試みだ。週に1回、午前10時から午後3時までの開所で、配食サービスの料理を利用したバイキング形式の昼食を囲んだ後は、談笑したり、人形づくりをしたりと皆、思い思いの時間を過ごす。
 
1998年7月 「たかもり助け合いの会び♥すけっと」設立
11月 飯伊(はんい)福祉ネットワーク「ポケット」設立、一員として参画
1999年4月 カヌーハウス「かわせみの家」に事務所を持つ
5月 「ポケット」がNPO法人格を取得したのに伴い、北部支部として介護保険事業に参入。配食サービスを開始。
2000年3月 「かわせみサロン」開所
 
ただ今調理中。今日の献立は何かな?
 
外出時のつきそい
 
 できることは自分たちで、がモットーで、利用者が昼食づくりを手伝うこともあるという。そんな自由な雰囲気が好まれてか、20人の定員枠は常に満杯。嬉しい悲鳴を上げている。
 「かわせみの家は天竜川の堤防沿いにあるので、日当たりがよく、せせらぎも聞こえる。せっかくの好環境をもっと、町のみんなと共有して、ふれあいの機会を増やしたいと思いましてね。『一日中、誰とも話さずテレビばかりを見ていると、ボケてしまいそう。でも、ここへ来れば友達もいる。みんなで食べるお昼ご飯が何よりも楽しみ』。そんな利用者の方々の声が私たち自身の励みにもなっています」
 
みんなで食べるとおいしいネ
 
お花見。桜の木の下で







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