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増加する地方自治体同士の交流
 地方自治体職員の民間への研修派遣は、いわば官から民への人事交流。それでは、民から官へ、また地方自治体と中央省庁間の人事交流の実態はどのようなものだろうか。この場合は、研修派遣というより出向の実績である。
 日経産業消費研究所がまとめた2001年度の「都道府県・政令市の人事交流調査」(次頁表を参照)によれば、都道府県・政令市から民間企業等へは300名、民間企業等から都道府県・政令市へは125名が出向しており、官から民への人事交流が民から官への2倍強であった。
 また、都道府県・政令市から中央省庁へは708名、中央省庁から都道府県・政令市へは563名が出向しており、この数字は前年度とそれほど変わらない。大幅な増加となったのは都道府県から他の都道府県への出向で、同研究所では「地方分権を踏まえて地方自治体同士の交流を強化している実態が浮き彫りになった」と指摘している。ことに隣接都道府県の人事交流が強まる傾向にあるという。
 中央省庁から民間企業等への出向はごくわずかだが、民間から中央省庁へは年間345名が非常勤職員として採用されている。これは民間の知恵を借りる必要から総務省が窓口となって民間人を中途採用しているものだ。
 また、民間のビジネス感覚を学ぶことを目的に、各省ごとにおおむね30代の若手を対象に民間派遣研修を行うことを人事院規則で定めている。
 
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2001年度 全国調査 都道府県・政令市の人事交流
導入された官民人事交流法
 2000年3月には「国と民間企業との間の人事交流に関する法律」(官民人事交流法)が施行された。この官民交流は、国家公務員一般職の職員を民間企業に派遣する「交流派遣」と、民間企業の社員を一般職の常勤職員として採用する「交流採用」の双方向の人事交流からなる。この場合、「交流派遣」の一般職の職員はその身分を保有したまま派遣され、「交流採用」の社員は出身企業をいったん退職したのち採用される(次頁表を参照)。
 官から民への「交流派遣」の実績は、2000年度はゼロ、2001年度が9名、一方、民から官への「交流採用」の実績は2000年度10名、2001年度28名だった。交流採用の交流元企業(出身企業)は鉄道会社、航空会社、銀行、ガス会社、シンクタンクなどいずれも大手企業で、ここをいったん退職して省庁に採用された職員はほぼ2年間の任期で職務にあたる。
 新しく始まったこの制度が、官民の人事交流を促進することになるのかどうか。この点について人事院で人事交流を担当する人材局参事官の阿久澤徹さんは次のように話す。
 「民間からの非常勤職員の採用というかたちの交流は従来より行われていたが、それを官民の双方向の人事交流制度として、透明性と公開性を確保した公正な手続きと運営を制度化したものが官民人事交流法です。この制度を実のあるものにしていくには、各省庁と民間企業にその気になって取り組んでもらう必要があり、今後、経済団体を通じてPRを行っていこうと考えています。多くの民間企業にこの制度に参加していただくことにより、人事交流の輪をよりいっそう広げ、官民が共に発展するきっかけになればと思います」
 まだまだ知名度の低い人事交流制度だが、今後どのように定着していくか、期待をもって見守っていきたい。
 
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官民人事交流の手続きの流れ
 
国と民間企業との間の人事交流については、交流派遣交流採用という2つの仕組みがあるが、それぞれ次のような流れとなる。







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