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さわやか座談会
地域の皆さんとの出会いが大きな財産です
さわやか福祉財団研修生7名を囲んで
 
 職場の人材育成の一つに「他流試合」がある。
 まったく違う職場に出て、より広い、柔軟な視野を身につけ、さらに外部人脈のネットワークをつくりながら、いずれ本業に生かしてもらうことが狙いだ。
 さわやか福祉財団にも、1997年4月以来、毎年、自治体などから長期派遣研修生がやってきている。
 元の職場とは分野も組織の運営方法も違う異質な団体に飛び込んで彼らは何を見、何を得てきたのか?
 この3月に財団を「卒業」となった7人の研修生に、研修の間に感じたこと、今後に向けた思いなどを語ってもらった。
外に出て改めて知ったこと
堀田 今日は、これまでの研修について、思いの丈をしゃべってもらうという鬼編集長の企画なので、包み隠さず話してください(笑)。とはいえ、やっぱりぼくが一番知りたいのは、皆さんが今までいた職場で考えていた市民の心、あるいは助け合いの現場と、それを実際に目の当たりにしてみてどうだったか。違いがあったら、それを今後にどう生かしていきたいのかということ。まずはどんな課題や期待をもって研修に来たのか、どなたからでも構いませんが、どうですか?
世古口 私の場合は、3月の初めにいきなりこの研修の話があったんです。NPOに行きたいという希望は持っていたんですが、さわやか福祉財団と聞いてもあまりピンとこなくて、福祉の現場での活動のように思ったので、あれっという感じで(笑)。
堀田 それはそれは(笑)。で、どう思い直してくれたんでしょう?
世古口 財団は現場の活動というより、仕組みづくり、中間支援ということを聞いて、すごく興味が持てました。最初の職場が生涯学習関係で、そこで地域のいろいろな人たちを知って刺激を受けていましたし、だから、行政とNPOがどう連携していけばいいのか、実際の活動に触れながら知りたいと思っていました。
松本 私は生協からですが、まったくの外部に研修などで出たのは初めてなんです。ちょうどデイサービスの立ち上げが一段落したところで、一度外から生協を見てみたかった。私は以前からさわやかを知っていましたし、全国レベルの活動をしているので、広い情報も得られるだろうと。
 
堀田 力(ほった つとむ)
さわやか福祉財団理事長、弁護士
 
堀田 で、どうでした?
松本 外から生協を眺めてみると、やっぱり閉鎖的だとも感じたし、生協といっても様々なんですが、ひとくくりにされていて、知られていない部分がまだまだあるなと思いました。
悪原 ぼくの場合は、もともと障害児の余暇活動研修をやっていて、そこにさわやか福祉財団の話が来ました。障害児の地域参加を支える仕組みを考えるためという、まさに自分で勉強をしたい分野でいいチャンスだと。そもそも養護学校は皆さんどんなところかほとんど知らないし、まさに閉鎖的というか。特にうちは丘の上にあるから、なんかバスが行くなあという程度で(笑)。
堀田 実際に自分の考え方に変化はありましたか?
悪原 そうですね。これまで学校から地域に働きかけるという発想はあまりなかったんですが、財団に来たことで地域との敷居がすごく低くなりました。学校がもっと外に出て行くためには、学校協力勝手連の逆バージョン、“地域協力勝手連”みたいな発想があってもいい、何で今まで自分たちから地域に出て行かなかったのかなあ、と改めて思うようになりました。
自ら地域に目を向けよう
地域とともにある学校に
 
門脇 私も教師という立場から、学校が家庭、地域、行政とどう連携していくか、そこから世代を超えたつながりをどう築いていくか、そのヒントを得たいと思っていました。
堀田 新しい発見はありましたか?
門脇 何よりもまず、「学校と一緒に考えたい」という人がこんなにも多かったのかと。それ自体が驚きで。
川尻 私も最初、財団で学校協力勝手連というのを聞いて「何だ、それ?」って(笑)。そんな人いるのかなと。でも、実際にいたんですねえ(笑)。発掘すればまだかなりいるんじゃないかと今では思っています。
悪原 ぼくは社協さんとか地域のNPOとか、外のいろいろな機関にコンタクトをとってやっていく、そのことが大きな刺激になりました。それに学校の名前を名乗ればどこでも対応してくれることが改めてわかったというか。「さわやか福祉財団です」と名乗って行くよりむしろやりやすいかもしれない(笑)。
 
悪原 義範(あくはら よしのり)
神奈川県立養護学校教諭
 
堀田 どうぞ大いに自信を持ってください(笑)。学校でいえば、外の協力を受け入れようという空気も出てきてはいるけれども、皆さんは実際にどう感じてますか?
川尻 現実には多くの学校でまだ壁がありますね。校長の考え方によるところがすごく大きい。研修を通じて、直にお話を聞いたりして確信しました。校長先生が率先して社会体験するともっといいんじゃないでしょうか(笑)。
堀田 いいことを言ってくれましたね。
門脇 思うに、学校側もまったく無関心であるわけではないんです。学校が何かあったときの地域の避難場所になっていることを考えても、何らかの役割はいざとなれば担うつもりはあるだろうと。問題はそんな学校側の背中を押す人がまだまだ足りないということかな。
 
門脇 伸也(かどわき しんや)
東京都公立中学校教諭







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